登場人物たちの愛らしく刹那を宿した人生を描いてきた、ウェス・アンダーソンの集大成『フレンチ・ディスパッチ』:映画レビュー

オーウェン・ウィルソン、ビル・マーレイ、フランシス・マクドーマンド、エイドリアン・ブロディ、ティルダ・スウィントン、シアーシャ・ローナン、ジェイソン・シュワルツマンといったお馴染みの顔ぶれに加え、ティモシー・シャラメ、ベニチオ・デル・トロ、ジェフリー・ライト等が初参加。レア・セドゥやシアーシャ・ローナンも出演と、ウェス・アンダーソンの長編10作目を祝福するような豪華なメンツが集結した『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング別冊』。

舞台は20世紀のフランスの架空の町にある「フレンチ・ディスパッチ」誌の編集部。ビル・マーレイ演じるアメリカ生まれの名物編集長が集めた一癖も二癖もある記者たちの才能によって、世界中から購買されている人気雑誌だが、編集長が急死し、遺言により「フレンチ・ディスパッチ」誌は廃刊に。その追悼&最終号には敏腕記者たちによるひとつのレポートと3つのストーリーが掲載されることになる。

ウェス・アンダーソンは本作について「『ニューヨーカー』と出版界で著名な記者たちにインスパイアされた映画だ」と語っている。本作で描かれるひとつのレポートと3つのストーリーからは、信念を持った記者が手掛けるからこそ、メディアが伝える物語は多くの読者を惹きつけるのだというジャーナリズムへのリスペクトを強く感じる。尚且つそれぞれのストーリーには、ウェス・アンダーソンがこれまでに影響を受けた映画、文学、演劇、コミック、音楽……膨大なカルチャーに対するオマージュが詰まっている。

セリフ量は非常に多く、しかもスピーディー。わかりやすい起承転結のないそれぞれが独立した短編集といった趣で、これまでのウェス作品の中でも随一の情報量の多さだ。一回観ただけでは、魅惑的な登場人物たちが織りなす細分化された物語とメッセージをすべて堪能できないかもしれない。自分は二度観たが、観る度に作品の味わいが増す感覚が強くあった。どこを切り取っても惚れ惚れするウェスならではの絵画的な画面作りは完璧なので、それだけでも何度でも観たくなる作品でもある。

『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』、『ライフ・アクアティック』、『ダージリン急行』、『グランド・ブダベスト・ホテル』等、魅力的な登場人物たちの愛らしく刹那を宿した人生を描いてきたウェス・アンダーソンの集大成であり、格段の進化を遂げた作品とも言える。この唯一無二の才能は一体どこまで突き進むのだろうか?

【書いた人】小松香里
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『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング別冊』2022年1月28日公開

■監督・脚本:ウェス・アンダーソン 『グランド・ブダペスト・ホテル』(14)、『犬ヶ島』(18)
■キャスト:ベニチオ・デル・トロ、エイドリアン・ブロディ、ティルダ・スウィントン、
レア・セドゥ、フランシス・マクドーマンド、ティモシー・シャラメ、リナ・クードリ、
ジェフリー・ライト、マチュー・アマルリック、スティーブ・パーク、ビル・マーレイ、
オーウェン・ウィルソン、クリストフ・ヴァルツ、エドワード・ノートン、
ジェイソン・シュワルツマン、アンジェリカ・ヒューストンほか
■全米公開:10月22日 
■配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン 
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