実話映画『暁に祈れ』のイイ話 顔面タトゥーの“元・囚人”俳優がレッドカーペットで涙した理由とは?[ホラー通信]

汚職や暴力が蔓延し、“地獄”とも称されるタイの過酷な刑務所を舞台に、ムエタイで光を見出していく白人ボクサーを描く実話映画『暁に祈れ』が現在公開中だ。

イギリス人ボクサー、ビリー・ムーアの自伝をもとにした本作は、リアリティを追求するジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督のこだわりにより、撮影場所は本物の刑務所、劇中の囚人たちは本物の元囚人を起用。クライマックスには3000人の囚人たちが集結する。

刑務所内では様々な囚人たちが登場するが、その中でも一際印象に残るのが、全身および顔中にタトゥーのある囚人リーダー“ゲン”だろう。演じるのは強盗刑で8年服役していた元・囚人パンヤ・イムアンパイ。顔のタトゥーはその服役中に入れたものだという。

監督は、囚人たちのタトゥーについてこう語る。
「人の体には、人生において負ってきたダメージや傷、過去のトラウマが刻まれていて、それぞれのストーリーが詰まっているもの。そして、囚人達のタトゥーは彼らの歩んできた旅路でもあるのです。タトゥーは明確ながらも控えめに、彼ら自身のことを表しています」

※パンヤ・イムアンパイ キャスティング時の写真

そして、監督にとって縁もゆかりもないタイで、一年がかりの気の遠くなるようなキャスティング作業に一役買ったのが実はこのイムアンパイなのだという。

イムアンパイは、2011年に釈放された後、オンラインビデオのスター俳優となり、自分の食品ブランドを手がけるかたわら音楽活動も行い、Facebookで約200万人のフォロワーを持つソーシャルメディアのスターになった。

撮影のおよそ2年も前からタイに入り、イムアンパイと知り合うことに成功した監督は、彼の友人、そのまた友人……と人脈を辿り、毎週彼の自宅で出演候補者を集めては人選を進めていったのだ。

イムアンパイ、レッドカーペットで涙

2017年のカンヌ国際映画祭で本作が上映された際には、イムアンパイもタキシード姿でレッドカーペットに登場。

拍手喝采を浴びる中で、イムアンパイはこみ上げる感情と涙が抑えられなくなってしまう。そんな彼を監督が優しく抱きしめると、その感動的な場面は、タイをはじめ各国のメディアで取り上げられ大きな話題となった。

レッドカーペットの模様の動画(Instagram)

彼は、その涙の理由を「俺は今まで体中に入れたタトゥーのせいで、人々から怖がられ、奇異の目で見られてきた。でも、カンヌ映画祭では、皆、俺のタトゥーを表現の一部として認め、受け入れてくれている。俺は初めて、このタトゥーで人を感動させることが出来たんだ」と語っている。

[画像:Instagramより]

ちなみに現在イムアンパイは、かつての服役時における薬物使用の疑いをかけられ、残念ながら再び服役中だ。しかし、Facebookには今でも出所を待つファン達からのコメントが相次いでいる。映画が描き出す“地獄の刑務所“もタイのひとつの顔だが、かつて罪を犯した者を受け入れる土壌があるのも、タイのまたひとつの顔なのだ。

作品概要

『暁に祈れ』
ヒューマントラストシネマ渋谷&有楽町、シネマート新宿ほか全国大ヒット順次公開中

【ストーリー】
ボクサーのビリー・ムーアは、タイで自堕落な生活を過ごすうちに麻薬中毒者になってしまう。ある日、警察から家
宅捜索を受けたビリーは逮捕され、タイで最も悪名高い刑務所に収容される。そこは殺人、レイプ、汚職が横行する、この世の地獄
のような場所だった!死と隣り合わせの日々を過ごすビリーだったが、所内に設立されたムエタイ・クラブとの出会いが彼を変えて
いく。ベストセラー自伝小説をベースにした真実の物語。

監督:ジャン=ステファーヌ・ソヴェール『ジョニー・マッド・ドッグ』
原作:ビリー・ムーア「A Prayer Before Dawn: My Nightmare in Thailand’s Prisons」
出演:ジョー・コール『グリーンルーム』「ピーキー・ブラインダーズ」、ヴィタヤ・パンスリンガム『オンリー・ゴッド』、ソムラック・カムシンほか
2017年/イギリス・フランス/英語、タイ語/シネスコ/117分/原題:A Prayer Before Dawn  日本語字幕:ブレインウッズ 提供:ハピネット+トランスフォーマー  
配給:トランスフォーマー

(C) 2017 – Meridian Entertainment – Senorita Films SAS 

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