ハリポタ・ファンタビの世界観を作るグラフィックデザイナー『ミナリマ』が貫くこだわり「キャスティングをするように、一番ぴったりなフォントを選ぶ」

魔法ワールド最新作『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』が現在公開中。4月8日(金)~4月10日(日)の3日間の累計成績で
観客動員68万5197人、興行収入10億5573万3460円を記録し週末動員・興行ランキングで初登場1位のメガヒットスタートとなっています。

『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』をはじめ、魔法ワールドの魅力の一つがその世界観。魔法に使用する杖、街並み、服装、持ち物、全てが見事に融合し、ストーリーをさらに盛り上げてくれます。その世界観作りの立役者であるのが、グラフィックデザイナー、ミラフォラ・ミナとエドゥアルド・リマによる「ミナリマ」。

『ハリーポッター』、『ファンタスティック・ビースト』シリーズで、街中に貼られている「日刊予言者新聞」や手配書、小道具として使われる本の表紙などを手がけています。「ミナリマ」のお2人に『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』でのこだわりのデザインや、魔法ワールドへの想いをお聞きしました。

――長年魔法ワールドのグラフィックデザインをされているお2人ですが、最新作『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』でのこだわりを教えてください。

ミナ:『ファンタスティック・ビースト』シリーズが素晴らしいのは、観客を魔法ワールドの様々な場所や国に連れて行けることです。私たちを含むデザイナー陣は、そのおかげでそれらの場所で新しいディテールや個性を表現する機会を与えられます。ニューヨーク、フランス、そして今回はヒマラヤの山奥にある、特別な場所を訪れました。私たちはそこで、その世界が現地でどう作り上げられてきたのかを想像します。私たちの手ではなく、その場所に命を吹き込んだのは、その土地や現地の人々、あるいは現地の魔法使いたちだと想像してみるわけです。そうすると、魔法ワールドの中にあるその場所にとって重要となる様式や要素が見えてきます。新しい場所という意味では、今回も新たに登場する魔法省もそれぞれにアイデンティティを持っていなければいけません。それを作り出すのもまた、グラフィック・デザインのチームの仕事です。

リマ:この映画では、私たちが制作したデザインが随所に使われています。グリンデルバルドの手配書や、ホグズミードに行く時や…ニュートのスーツケースを開ければ、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』で確立したニューヨークに関連するものや、ティナの写真、ニュートが捕獲した魔法動物たちがいます。選挙用のバナー/垂れ幕はどれも作業していて本当に楽しかったですね。この映画には、僕たちの友人たち(ファン)が楽しんでくれるようなものが、たくさんつまっていると思います。

――ミナリマさんはこれまで魔法ワールドシリーズの“紙もの”のデザインに携わられていますが、本作にはユーラリーの本の魔法が登場します。こちらにも関わられていますか?

リマ:はい。今回はスーツケースを開くとたくさんの本が飛び出すシーンがありますが、それなんか楽しかったですね。僕らは本をデザインするのが大好きなんです。『ハリー・ポッター』、『ファンタスティック・ビースト』全作品に登場する本のデザインを手掛けてきました。新しい本、特に原作で言及されている本をデザインするのは最高ですね。今回も原作に出てきたタイトルの本をいくつかデザインしています。もちろん(ニュートのセリフにある劇中の)アメリカでとても人気のあるユーラリーの本、「Advanced Charm Casting」もデザインしていますし、スーツケースに入っています。僕は本作の中でも特にユーラリーが大好きです。

ミナ:彼女も私たちも本が大好きなんです。

リマ:キャラクターのためにグラフィックをデザインし、小道具を作ることで、僕らは彼らのことをよく知ることになります。ユーラリーもそうだし、ハリー・ポッターのリータ・スキーターやアンブリッジも同じでした。これらはグラフィック要素が多いキャラクターたちですが、そうやって(対象との)関係性を築いていくんです。リータ・スキーターやアンブリッジのような悪役であってもそれは変わりません。ユーラリーは善の側なので、彼女とそういう関係性を持てるというのは、より特別なことです。そして僕らはもちろんニュートが大好きです。また、ダンブルドアのために更に多くのデザインができたことは本当に嬉しいことでした。

ミナ: だからこそ、ファンとして仕事をするのはとても難しいんです。仕事場ではキャラクター自身がどうするかを想像しながらデザインしているので、例えばニュートのスケッチだったら、もちろん私ではなく、ニュートがスケッチしたようなものでなければいけない(笑) 主観的であってはいけないんです。客観的でなければいけない。魔法薬学の本にスネイプが手書きで何かを書いていたら、彼がどう書いたかを考えなければいけない。私たちは常にキャラクターの世界にどっぷり浸かってデザインをしていますからね。

リマ:でも仕事場で混乱することもあります。最初はニュート関係の制作をして、その2時間後にはダンブルドア、その日の終わりはユーラリー(笑)混乱しますよね(笑)

――デザインをつくるうえで、大切にしていることは何ですか。J.K.ローリングさんの原作や脚本以外での発想の源は何でしょうか。

ミナ:苦労することと大切にしていることは多くの場合、同じだったりします。私たちの場合は、ミナリマの作品ではなく、(物語の中のある)状況から生まれてきたモノであることが大事です。例えば本だとしたら、それはある固有の性格をした、あるキャラクターの家に200年も伝わる本かもしれないし、(それが制作したものに反映されていなければいけない)。忍びの地図もそうです。あれはエドゥアルドとミラが作ったものではなく、キャラクターたちがかつて作ったものです。(キャラクターや物語の状況からデザインすること、)それが私たちが常に目指しているベンチマークです。そうすることで、どの小道具も他とは違ったものになるし、(観客も)全部が同じクリエイターから来ているという印象をあまり受けない。でも、このフランチャイズに20年も携わってこられたというのは、本当に恵まれていると思います。

リマ:22年だってば(笑)

ミナ:もうわからなくなっちゃった(笑) そうやって長年、築き上げてきた私たちの「言語」は、今では私たちにとって頼れる、安心できる存在です。それは、映画であれ、本であれ、何であれ、何か新しい素材を与えられた時に使うことのできる言語なんです。

リマ:どんなデザインをする時も、僕らにとって常にとても重要な要素のひとつが、(作っているものに)きちんと合った書体とタイポグラフィーです。その小道具に完璧に合う正しい書体/タイプフェイスを求めて、より深いリサーチを行うこともあります。僕らはよく、「僕らはフォントを選んでいるのではない。フォントをキャスティングしているんだ」と言うんですが、例えば手配書や予言者新聞だとしたら、美しく着飾った10種類の書体/タイプフェイスの中から(役者を)キャスティングをするように一番ぴったりなフォントを選んでいきます。それはもちろんヴィジュアル的にも僕らをワクワクさせてくれるものでなくてはいけないんですが。
(発想の源と言う意味では、)2016年に初めて日本に行った時のことを思い出します。ハウス・オブ・ミナリマのオープニングで大阪に行ったのですが、(何もかもが)刺激的でした。クリエイティブな人にとってインスピレーションとなるものはそういうものです。(来日中は)目を開けるや否や、(必ず)何かにインスパイアされていましたね。

ミナ:写真を撮ったり、スケッチをしたり、本を買うために常に立ち止まっていたので、どこに行くにもものすごく時間がかかっていました(笑)人は新しい環境に身を置くと、自分が持っている受容体がフル稼働するのだと思います。だから、(来日は)これ以上ないほど素晴らしい体験でした。そうやって(いろいろなところから)インスピレーションを受け、少しずつ、少しずつ、20年以上をかけて、恐らく誰も興味を持たないような変わったものを扱った本から成る、参考書のライブラリーを築き上げました。しかも、グラフィック・デザイン関連なんてほんの一握りで、殆どの本が何か具体的な(ひとつの)ものに関するものなんです。

リマ:そういう意味では引退するのが待ち遠しいですね。そうしたらやっとそれらの本を読めるから(笑) 僕らが購入する本は画像だけが目的ではないし。でも今は読む暇がないんです。(プロダクション・デザイナーの)スチュワート・クレイグともそんな話をしました。集めている本をいつか読める日が来るといいな、って言っていましたね。

ミナ:だから、インスピレーションはどこからだってやって来るものなんです。情報がいっぱい詰まっているアーカイブ(記録が集まっている場所)や図書館もそのひとつですね。

――インクや印刷技術の向上など、長年魔法ワールドシリーズに携わってきての、近年の変化はありますか?それとも変わらない手法で続けられているのでしょうか。

リマ:もちろん変化はありますよね。グラフィックのソフトウェアで行くとフォトショップとかそういったものが出てくる頃からテクノロジーを見てきました。覚えているのは、最初の2作『ハリー・ポッターと賢者の石』と『ハリー・ポッターと秘密の部屋』の制作時、コンピューターが一台でしかなかったこと。しかも、ものすごく動きが遅かったので、デザイン用の印刷作業とか、とても煩雑でした。

ミナ:おまけにフロッピーディスクとかあったし(笑)

リマ:セーブするのに鬼のように時間がかかって大変だった。なので、なるべく手を使ったり、コピー機を使ったり、レタリング作業をしたり、ハサミでカットしたり…。

ミナ:実はコピー機は私にとって最高のツールのひとつなんです。でも変化するのはテクノロジーだけではありません。ハリー・ポッターに関わり始めて20年以上経ちますが、どんなクリエイターに聞いたって、20年も時が過ぎていたら、自分も変わったと話すでしょう。私たちもチームとしても、個人としても、たくさんのことを学んできたと思いたいですね。それによって20年以上前の、今ほど経験値のなかった私たちよりも優れたデザイナーに今なれているといいなと思います。自分たちのデザイン・チーム以外にも本当に多くの優れた方々と仕事をしてきているので、いつだってお互いから学んでしますしね。だからそれが一番大きな変化かもしれません。

――『ハリー・ポッター』『ファンタスティック・ビースト』それぞれのシリーズで、特にお気に入りのアイテムをひとつずつ挙げるとしたら、どれでしょうか。

リマ:知っている人もいるかもしれませんが、僕は予言者新聞の編集長だったんです。今やニューヨーク・ゴーストやドイツの新聞も手掛けています(笑)ハリー・ポッターではシリーズを通して、予言者新聞が非常に重要な役割を果たし、その時々に起こっていることを観客に正しく伝えるために使われていましたから、それらの新聞を作り上げるのはとても楽しい作業でした。ファンタスティック・ビーストでそれを引き継ぎ、更にアメリカやフランスの新聞を制作できたのもとても嬉しいことでした。予言者新聞を1920年代風にデザインし直しするのも楽しかったですね。もうひとつ(のアイテム)はミナが言うと思うのですが(笑)、予言者新聞と(ミナが話してくれる)その小道具の二つですね。この二つはもうキャラクターと呼べる存在だと思います。

ミナ:私は忍びの地図ですね。制作物との関係性は少しずつ築かれていくものですが、デザインした時点では、それが何度も登場するかなんてわからないわけです。忍びの地図は3作目で初登場し、5作目、6作目、そして確か7作目にも再登場するのですが、その度に新しい側面が増え、視覚的に伝えなければいけないストーリーが加わりました。これらの制作物にルールはありません。こういう外見でなければいけない、などと誰かが言うわけじゃない。原作の読者にとって非常に重要な存在となった言葉たちに、どのようにして息を吹き込むべきか想像する機会を与えられるのは、これまでも、そして今も、私たちにとってとても特別なことなんです。

リマ:忍びの地図や予言者新聞がお気に入りだと言ってしまうと、他のデザインに嫉妬されて大変なことになるんですけどね(笑) なんで魔法薬学の本じゃないんだ、なんで蛙チョコレートじゃないんだって。(いろいろなものを)いっぱいデザインしてきていますからね(笑)

ミナ:グリンデルバルトの手配書はすごく人気がありますが、日本で本物を見られますよ。4/8から丸の内の丸善で、本作の他のグラフィック・アートと共に展示される予定なんです。でもあの手配書はとても人気があるんですよね。(たくさんデザインする中で)何がはねるか、私たちにもわからないのがまた、面白いところです。

――本当に素敵なデザイン、素敵なお話をありがとうございます!これからもミナリマさんの作品を楽しみにしております。

<ミナリマ展情報>
丸善 丸の内本店にて「ミナリマ」の展示を開催
「ハリー・ポッター」シリーズや「ファンタスティック・ビースト」シリーズのグラフィックアートやコンセプトアートのデザインを手掛ける「ミナリマ」のアートが公開される展示が設置される。
ニュートがスケッチしたニフラー&ピケット、マッツ・ミケルセン演じるグリンデルバルドの指名手配書、列車チケットや必要の部屋ポートキーアートなど『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』のために描かれた新アート12種類が初公開。
東京ではなかなか手に入らない貴重なミナリマ物販コーナーもあり、より詳しく魔法ワールドの世界観を楽しめること間違いなし!

・実施期間
1階エリア:3/16(水)~5/10(火)までミナリマコーナーを展開
2階エリア:4/15(金)~5/10(火)までミナリマの新アートを含む『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』コーナーを展開

・アクセス
〒100-8203
東京都千代田区丸の内1-6-4 丸の内オアゾ1階~4階
(JR東京駅丸の内北口 徒歩1分/地下鉄丸の内線 東京駅 徒歩5分)

丸善HP:https://honto.jp/store/detail_1572000_14HB310.html

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