写真多数掲載:神尾晋一郎×間宮丈裕による純文学×音楽ユニット「KATARI」の1周年記念独奏会「聖域-sanctuary-」レポート

 声優・神尾晋一郎氏と作曲家・間宮丈裕氏(DJ’TEKINA//SOMETHING a.k.a ゆよゆっぺ)による純文学×音楽ユニット「KATARI」の1周年記念独奏会「聖域-sanctuary-」が、2022年4月2日(土)神奈川芸術劇場ホールで行われました。

 朗読・音楽を融合させた新たな純文学作品を届ける樂団「KATARI」。過去には芥川龍之介、坂口安吾、宮沢賢治、与謝野晶子など著名な文豪をテーマとした楽曲を制作し、YouTubeなどのSNSを中心に公開しています。

 本記事では、「聖域-sanctuary-」当日の様子を多数の写真と共にレポートしていきます。

音と光、そして語りが織りなす唯一無二の世界観

 日本の名だたる純文学者たちが生み出した作品の詩を題材に、「純文学×朗読×Lo-fi Music」を融合させたスタイルで楽曲を提供している「KATARI」。詠手・編纂を神尾晋一郎氏、紡手・楽曲制作を間宮丈裕氏が担当し、詩のイメージに合わせた音と光、表現豊かな楽曲を展開されています。

 1周年記念という節目を迎えたKATARIが、今回はどのような舞台を作り出すのか。そんな期待を胸に、会場では多くの観客が集まっていました。

 ステージ上には蔦のようなものが置かれ、いくつか天井にまで伸びています。辺りには白い球体と一際大きな繭。そして多くの音を奏で、作り上げてきた演奏機器が置かれていました。

 そこにあるのは、日常から切り離された幻想的な空間。これから始まるであろう非日常を感じられる作りに、思わず見入ってしまいました。

 そして、いよいよ開幕。まず現れたのは白い衣装をまとった間宮氏。神妙な面持ちで舞台の中央に移動したかと思うと、大きな繭へ手を差し入れ、何かを引っ張り出しました。そう、語り人となる神尾氏です。

 まるで繭から生まれてきたかのような演出に一気に引き込まれ、会場全体が驚きと没入感に包まれました。

 始まりの曲は重低音が特徴的な「女 相聞 詩集 / 芥川龍之介」。脳に直接語りかけてくるような神尾氏の声に惹きつけられ、間宮氏のソロ歌唱により世界観がさらに広がりを見せます。「夢みつつ、夢見つつ」と繰り返す言葉がどこか神秘的な印象を受けました。

 続く楽曲は「HUMAN LOST・かくめい / 太宰治」。感情を込めた神尾氏の叫びに自分自身が揺さぶられ、不安定になっていきます。そんな中で二人の声が重なると、ハッと目が覚めるような不思議な感覚を得られました。

 心や感情が掌握された頃合いに、楽曲は「冬であった。あるいは、冬になろうとするところであった。」という特徴的なフレーズから始まる「三十歳 / 坂口安吾」へ。愛情と苛立ちを吐露するような詞を、神尾氏は見事に表現。間宮氏が生み出すリズムが、まるで淡々と血が巡るような、如何ともし難い気持ちにさせてくれました。

 楽曲の世界観を広げる光と演出も素晴らしい。変幻自在に色を変えながら、ときに眩く、ときに暗闇に、曲のイメージに合わせた演出、そしてふたりが作り上げる空間に惹き付けられました。

 畳み掛けるかのように、楽曲は次々に展開していきます。「こころの影を恐るなと / 宮沢賢治」「雨ニモマケズ / 宮澤賢治」「秋の瞳 / 八木重吉」「星、夢 / 寺田寅彦」……。筆者が特に印象深かったのが「星、夢」です。会場全体に星の陰影が映し出され、それらが流れるように見せていく。綺麗、まさにその一言でした。

 その感情を保ったまま、楽曲はKATARIオリジナルの「波紋」へ。優しく奏でる間宮氏の静かな水面に、ぽつんぽつんと神尾氏の声を投げかけ、波紋を作っていくような、心穏やかな気持ちに包まれました。

 しかし、心、感情を揺さぶるのがKATARIの真骨頂。このままでは終わりません。不気味な革靴の音が鳴り響き、どこかへ誘い込まれるように始まったのが「死の淵より / 高見順」です。淡々と進むように見えるも、途中から感情をむき出しになる語りと曲調に、なぜか胸を締め付けられる思いでした。

 公演は折り返し、次々と音と詩を紡がれていきます。「邪宗門 / 北原白秋」「夢と現実 / 与謝野晶子」「はるかぜ / 与謝野晶子」「ゆづり葉、山の歓喜/河井酔茗」「眠りのほとりに / 立原道造」「暁と夕の詩 / 立原道造」「黄昏 / 中原中也」「臨終 / 中原中也」「山羊の歌 / 中原中也」「閑天地 / 石川啄木」――……。

 ときに激しく、ときに優しく。詩と曲が体に染み込んでいくかのように、不思議な浮遊感が得られました。

 最後を飾ったのはオリジナル楽曲「崖端歩き」「朔に」。もう終わってしまうのかという一抹の寂しさを覚えながらも、すべての始まりの曲「朔に」の終盤にある「さあ、明日はなにを語ろうか、未来になにを語ろうか」という詞が、観客の心に優しく寄り添ってくれました。

 これからふたりが新たな未来に向かって語っていく。そんな希望に満ちた終わり方に、心が満たされたまま、全楽曲を語り終えるのでした。

 これからも続いていくであろうKATARI。1周年の公演を終えたばかりだが、次の展開がもう待ち遠しいです。

■作品情報
音楽×純文学樂団 KATARI

声優:神尾晋一郎 / サウンドプロデューサー:間宮丈裕(DJ’TEKINA//SOMETHING a.k.a ゆよゆっぺ)による音楽×純文学樂団

編纂:神尾晋一郎
作曲:間宮丈裕/DJ’TEKINA//SOMETHING a.k.a ゆよゆっぺ
朗読及び歌唱:神尾晋一郎、間宮丈裕

詠手
神尾晋一郎(SHINICHIRO KAMIO)
https://twitter.com/s_kamio113

紡手
間宮丈裕/DJ’TEKINA//SOMETHING a.k.a ゆよゆっぺ
https://twitter.com/yupeyupe

KATARI【神尾晋一郎/間宮丈裕】Twitterアカウント
https://twitter.com/KATARI0803

KATARI神尾晋一郎・間宮丈裕 YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCPMEwGRBvZ5euobzws8U9Fg

KATARI FANBOX
https://katari.fanbox.cc/

(執筆者: sasuke_in)

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