『Evil Dead The Game』レビュー:対戦メインながらソロも充実! 『死霊のはらわた』のゲーム版マルチバース作品

スプラッターホラー映画の傑作として名高い『死霊のはらわた』が『Evil Dead The Game(イービル・デッド・ザ・ゲーム)』としてゲーム化。しかも、発売後5日間で売り上げ50万本突破を記録したという。これはホラーゲームファンとして放っておけない。

というわけで、『死霊のはらわた』ゲーム版を自腹購入し、プレイしてみたのでレビューとしてお届けしたい。

日本版リリースも確定している非対称型対戦ゲーム『Evil Dead The Game』

『Evil Dead The Game』は、Saber Interactiveからリリースされた作品。

まず最初に注意してほしいのが、現在発売されている『Evil Dead The Game』は海外版だということ。PC版はEpic Games Storeで購入できるが、現時点で日本語対応をしていない。コンシューマー版もリリース済みだが、同じく日本向けではないので、もし手に入れるなら海外版を海外のストアで購入することになる。

ただ、今後日本向けのリリースを予定しているため、いずれ日本向けにローカライズしたバージョンをプレイできるだろう。ちなみに、今回筆者がプレイしたのはPC版。日本語に対応していないものの、そこさえ気にしなければ日本国内でもプレイ自体は行える。

なお、この記事内で使われているゲーム内用語(固有名詞等々)は、英語を筆者の解釈で日本語訳している。なので日本語版リリースの際に異なる用語となっている可能性があるのであらかじめご容赦願いたい。

『Evil Dead The Game』は非対称型対戦ゲームで対人対戦がメイン。サバイバー側4人と死霊側1人にわかれ、それぞれ異なる勝利条件の達成を目指す。サバイバー側は儀式をコンプリートして、死霊を倒すことが目的。一方の死霊側はサバイバーを全滅させることが目的だ。

怖いだけじゃない!? 伝説のホラー映画『死霊のはらわた』

ゲームの詳しいレビューを書く前に、原作である映画『死霊のはらわた』に触れておこう。

『死霊のはらわた』の監督は、サム・ライミ。サム・ライミといえば一般的には、2002年から2007年にかけて公開された『スパイダーマン』三部作や、最近では『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022年)などのヒーロー映画でらつ腕を振るう、人気と実力を兼ね備えたハリウッド娯楽映画の最前線にいる超一流監督。そんなサム・ライミのデビュー作が実はホラー映画『死霊のはらわた』なのだ。

いまは一般的にはサム・ライミ=「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」作品かもしれない。しかし、ホラー映画ファンからするとサム・ライミ=『死霊のはらわた』といっても過言ではない。

ホラー映画ファンからすると……なんて偉そうなことを書いたが、実は筆者、子どものころは『死霊のはらわた』を避けまくっていた。ポスターに描かれた死霊のビジュアルがあまりにも怖く、ポスターの張られているレンタルビデオ屋は避けていたほど。もちろん、ホラーコーナーになど近寄るはずもない。

スプラッターホラー映画=グロくて怖いという印象を持っていたし、スプラッターホラー映画の火付け役である『死霊のはらわた』など、もってのほかと思っていたのだ。あのころはまさか、後にホラー映画の大ファンになるとは……ましてや、ホラーゲーム専門のインディゲームクリエイターになるなど想像もつかなかった。

ただ現在、内容を知った上で映画『死霊のはらわた』を紹介すると、決してグロくて怖いだけの映画ではない。もちろんスプラッターホラー映画なので、グロイ場面も怖い場面もある。ただその一方で笑えるシーンやカッコいいと思えるシーン、爽快感をおぼえるシーンなど様々な感情を刺激するシーンが盛り込まれており、「怖さ」というより「娯楽性に振り切った作品」といったほうが正しいように思う。

つまり、サム・ライミのその後のキャリアとして、現代娯楽映画の極みともいえる「MCU」などでスーパーヒーロー映画を撮っていることが大いに頷ける、そんなデビュー作なのだ。

そんな映画『死霊のはらわた』において、ゲームをプレイする上でポイントとなる設定がある。

設定1:パラレルワールド(マルチバース)
設定2:死霊というクリーチャー

まずパラレルワールドという設定について。映画「死霊のはらわた」シリーズは、『死霊のはらわた』『死霊のはらわたII』『キャプテン・スーパーマーケット』という三部作とドラマシリーズ『死霊のはらわた リターンズ』で構成されている。これらすべての作品において、主人公はアッシュ・ウィリアムズが共通して努めている。

そして、時系列的にも基本的にはつながっている……ように見えるが、実は直接的にはつながっていない。

たとえば初代『死霊のはらわた』は、アッシュを含む若者5名が、破格の値段で購入した山小屋へレジャーとして訪れ、そこで死霊を復活させてしまうという内容。ラストはアッシュが死霊を封印して大団円……と思わせつつ、生き残っていた死霊がアッシュに襲いかかるというところで終わる。まさに、スプラッターホラー映画の典型のようなストーリーだ。

ではその続編である『死霊のはらわたII』は、アッシュが死霊に襲われたところから始まるのかというと、そうではない。改めてアッシュが山小屋を訪れるところから描かれている。ただし、若者5人ではなく恋人のリンダと2人で。

アッシュはここでも死霊を復活させてしまい、襲われる羽目に陥るのだが、そこまでのストーリーが改変されている。つまり『死霊のはらわたII』は『死霊のはらわた』と重なる部分のストーリーをマルチバース化し、並行世界でのその後のストーリーを描く作品となっているのだ。

これは『死霊のはらわたII』のラストと『キャプテン・スーパーマーケット』でも同様。結果として、映画「死霊のはらわた」シリーズは現代のヒーローものに欠かせないマルチバース的な世界観を持っている。そしてこの世界観はゲーム『Evil Dead The Game』にとっても重要なポイントなのだ。

原作を持つゲームでは、ゲーム内で原作の持つ要素を再現しようとするのは自然な行為で、これはもちろん「原作のあのシーンをゲームでも味わいたい」というファンの要望に応えてのもの。『Evil Dead The Game』でも、原作の要素を再現した部分がたっぷりと用意されている。

『Evil Dead The Game』では、映画の何作目のどのシーンをどんな風に再現しているのか?……というと、実はストレートな形での再現は行われていない。『Evil Dead The Game』はマルチバース的に存在する並行世界でのもうひとつの『死霊のはらわた』。そんな世界観でのプレイとなるのだ。

そして、ファンとしてもそれを案外自然に受け入れられる。なぜなら、前述したようにそもそもの映画「死霊のはらわた」シリーズがマルチバース的に制作されているからだ。

次に、死霊という設定について。死霊はゲーム内でのビジュアル的にはゾンビのように見えるが、それは死霊に取りつかれた人間、もしくは死霊に取りつかれた死体であって死霊そのものではない。

「霊」と名がついているとおり死霊そのものは、物理的な肉体を持たない霊体だ。このため、人間を直接攻撃することはできない。そこで、人間や人間の死体など物理的な肉体を持つ存在に憑依して、人を襲う。

憑依している体は人間の体なので、物理的に破壊されれば人を襲えなくなるが、そうなったら別の体に憑依すればいい。死霊とはそんなクリーチャーだ。『Evil Dead The Game』ではこの特性がゲームにもバッチリ反映されている。

サバイバー側でのプレイは30分で満足感を味わえるサバイバルホラー

映画「死霊のはらわた」シリーズのポイントとなる設定を押さえたところで、いよいよゲーム内容にも触れていこう。まずはサバイバー側でのプレイから。

サバイバー側は、アッシュやアニーなど映画「死霊のはらわた」シリーズに登場したキャラクターの中から、自分の使用キャラクターを選択してゲームに臨む。キャラクターは他メンバーへの支援効果を持つリーダー、近接戦闘に優れるウォリアー、銃器の取り扱いが得意なハンター、回復系のサポートの4つの職業に分かれている。

主人公アッシュについては、映画のシリーズごとに異なる職業のキャラクターへ振り分けられているのが特徴だ。参加プレイヤー全員の趣味が一致すれば、リーダーアッシュ、ウォリアーアッシュ、ハンターアッシュ、サポートアッシュの4人で参加することも可能でまさにパラレルワールド的、マルチバース的な仕様といえる。

冒頭に書いた通り、サバイバー側の目的は「儀式をコンプリートし、死霊を倒す」こと。もちろんいきなり儀式が行えるわけではない。やるべき行動は、4つの段階に分かれている。

第1段階は、「地図の破片を3つ集めて地図を完成させる」こと。次に第2段階は、地図に書かれた「カンダリアンダガーと、ネクロノミコン(死者の書)の失われたページを獲得する」こと。そして第3段階は、「この世に召喚された悪魔を封印する」こと。最後に第4段階として、「ネクロノミコンを燃やす」ことで晴れて死霊を倒し、勝利となる。

ただ実際には第1段階の前にやるべきことがある。それは武器の調達。ゲーム開始直後のキャラクターは近接武器も銃も何も持っていない素手の状態なのだ。

もっとも、死霊側にまだ発見されていない状態なら、そこまで激しい攻勢にさらされることはない。ただ、マップ上には敵がNPCとしてうろついているので、武器がないと進んでいくのは難しい。

なので、まずやるべきことは、「近くの建物に入って武器を探索、確保すること」になる。

また、プレイヤーが気をつけなければならないのは、死霊だけではない。なぜなら、暗闇によってキャラクターの恐怖ゲージが貯まってしまうのだ。

恐怖ゲージがMAXまで貯まったキャラクターは、死霊の憑依対象となる。つまり、同士討ちの危険性が出てくるということ。このため恐怖ゲージが貯まってきたら、マップ内の点火ポイントでマッチを使用してゲージを回復させる必要がある。

本作は同じホラージャンルの非対称型対戦ゲーム『Dead by Daylight(デッドバイデイライト)』と比べて、はるかにやるべきことが多い。また、やるべきことに起承転結のような順序があって、あたかも映画内の出来事を体験しているかのよう。このため対戦を通じて、サバイバルホラーゲームの短編一本をプレイしているような満足感が味わえる。

『Dead by Daylight』を引き合いに出したが、基本的に逃げることが前提の『Dead by Daylight』とは違い、本作はサバイバー側も十分な攻撃手段を持っている。斧やチェーンソーなどを使った近距離攻撃に、銃を使った遠距離攻撃。さらには、車に乗って敵をひき殺すなんて大胆なアクションもある。

その上、ゲーム中に育成を行って強化していくことが可能。つまり、ゲームシステム的にも『バイオハザード』のようなサバイバルホラーゲームに近いものになっている。

死霊もつらいよ? 死霊側でのプレイ「ハンティング」はスピードが重要

一方死霊側は、サバイバー側のようにやらなければならないことが細かく決められていない。シンプルにサバイバー4人を倒せばそれでOK……といっても、これがそんなに簡単なことではないのだ。

ゲーム的に決められているわけではないが、勝利を目指すなら、死霊側が真っ先にやるべきはサバイバーの位置の特定だ。死霊側はサバイバーが広大なマップのどこにいるのかわからない。なので、サバイバーを見つけるため、まずはマップ上を動き回ることになる。

ちなみに死霊の移動演出は映画『死霊のはらわた』に準拠している。地面スレスレを、あの効果音を出しながら飛ぶように進んでいくので、映画を観た後で本作をプレイすると、「そのまんまだ!」という感動を覚える。

探索の結果、サバイバーを発見できたら、次の段階でやることは攻撃と育成とエネルギーの収集。死霊側はプレイ開始時に、『死霊のはらわたII』のウォーロード、『キャプテン・スーパーマーケット』のネクロマンサー、『死霊のはらわた リターンズ』のパペッティアという3つの種族から使用種族を選べる。選んだ種族ごとに攻撃スタイルは異なるが、いずれの種族を選んだとしても、基本となるアクションは「召喚」か「憑依」となる。

ポータルを作ってNPCの配下を「召喚」するか、「召喚」した配下を含む何かに「憑依」してプレイヤー自体が直接サバイバーを攻撃するかだ。そう、原作の死霊というクリーチャーの特性が、そのままゲームに落とし込まれている。

ただ、「召喚」にせよ「憑依」にせよ、無制限に行えるわけではない。インファーナルエネルギー……すなわち地獄のエネルギーが必要なのだ。インファーナルエネルギーはマップ内に落ちているので、周囲を探索して補充しなければならない。

また、たとえインファーナルエネルギーがあっても、ゲームスタート直後は死霊をどこでも自由に召喚できるわけではない。最初にできることは、マップ上にあるポータルを有効化することだけ。

任意の場所にポータルを作るには、サバイバー同様、育成によってレベルを上げなければならない。ただ、レベルを上げるためにはマップ上のポータルを有効化したり、「憑依」を使ってサバイバーを直接襲ったりして経験値を得る必要がある。

なお、NPCの配下は、当然のことながらサバイバーより弱い。ゲームに慣れた中・上級プレイヤーが操作するサバイバーは、せっかくの配下ユニットなど関係なく、即座にヘッドショットで倒してしまうだろう。なのでサバイバーへ的確にダメージを与えるためには、「召喚」と「憑依」をセットで考えながら使いこなしていく必要がある。

死霊が「憑依」することで、そのユニットのパラメーターが上昇。その上で死霊側プレイヤー自らその配下ユニットを操作することができるため、「召喚」したユニットに「憑依」することで、ようやくダメージのチャンスを作り出せるのだ。

ただ、プレイヤーが4人集まっていたり、ゲームがある程度進んでそれなりに育成されていたりすると、「ボス」と呼ばれる強力ユニットでないと歯が立たなくなってしまう。「ボス」ユニットの召喚スキルは、死霊をレベル10まで育てないとアンロック可能にならない。

なので、先述した「スピード」が非常に重要になってくるというわけだ。

死霊側のプレイは、サバイバーをハンティングする楽しさが味わえる一方で、とても忙しい。スピードが求められる上、攻撃・育成・エネルギー収集の3点を常に考えなければならないからだ。

ところで、死霊側のプレイを経験した上で映画を観返すと、また違った感覚に陥る。「もったいぶってすぐ人間を襲わないのは、インファーナルエネルギーが不足してるんだろうな……」とか「憑依したのにすぐ撃退されちゃうと、悲しいよな……」なんて。

そう、死霊もなんだかんだいって大変。まさに「男はつらいよ」ならぬ「死霊もつらいよ」状態なのだ。

実はソロプレイも充実! 日本でのリリースが待ち遠しい一本

さて。ここまでマルチプレイの対戦について触れてきたが、実は本作はソロプレイも充実している。マルチプレイの非対称型対戦がメインだが、ソロプレイもバッチリ用意されている。

まず、対戦モードについては「人間プレイヤー(サバイバー)×4」 VS 「人間プレイヤー(死霊)」というマッチングのほか、「人間プレイヤー(サバイバー)×4」 VS 「AIプレイヤー(死霊)」というマッチングが可能。死霊はAIが担当するので、対戦ではなく完全な協力型プレイを楽しめる。

また、「自分(サバイバー)」+「AIプレイヤー(サバイバー)×3」 VS 「AIプレイヤー(死霊)」というマッチングも行える。このため、マルチプレイではなくソロプレイで楽しみ続けることもできるし、AI相手にプレイして慣れてきたらマルチプレイに乗り出す……なんてことも可能なのだ。

さらに、「ミッションモード」というソロプレイ専用モードまで用意されている。これはいわばストーリーモードのようなもので、敵を倒しつつ、シナリオに基づいて提示されるタスクをこなして達成を目指していくというモードだ。

映画のシナリオと同一ではないものの、近いシチュエーションが再現されているのもこのモードの特徴といえるだろう。

感想として、ソロモードがここまで充実していると、『死霊のはらわた』は好きだけど人間プレイヤーと対戦するのは気が引ける……という人でも、本作を買って後悔するということはないように思った。『死霊のはらわた』も対戦ゲームもサバイバルホラーも全部好きという人なら、確実におなかいっぱいになれるだろう。最初に書いた通り、日本向けのリリースが予定されているので、リリースされた暁には買って損のない一本となるはずだ。

文/田中一広