漫画家・日野日出志&人間椅子・ノブ 特別対談! 「73歳の新人絵本作家」「アーティストとネットの関係」「名作の知られざる秘話」

現在、バンド30周年記念アルバム『新青年』を提げた全国ツアーを展開中の3ピースバンド「人間椅子」。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」への出演決定など活躍の幅をますます広げています。

人間椅子のドラム・ナカジマノブさんは大の日野日出志ファンとして知られており、貴重なコレクションも多数保有。アルバム『新青年』の中では、日野日出志作品へのオマージュとなる作詞曲「地獄小僧」を発表しています。そんな日野日出志マニアのノブさんと日野先生ご本人との対談が実現!

先日発表した日野日出志初の絵本『ようかい、でるでるばあ!』の制作秘話から、先生が駆使しているMacやTwitterについて、貴重なお話たっぷりです!

――ナカジマノブさんは日野日出志先生の大ファンとして知られていますが、先生の作品を読んだきっかけはどんな事だったのですか?

ナカジマノブ:忘れもしない1976年に歯医者さんで『蔵六の奇病』を読んでそこからですね!

日野日出志:歯医者でそれ読むの嫌だよね(笑)。当時は、(版元の)ひばり書房って4人くらいしかいない会社なのに、営業さんが本屋さんにまわって、地道に本を売っていたんだよね。72年から20年くらいずっと。

ナカジマノブ:そうですよね、本屋に行って、ひばり書房のコーナーを見つけると本当にワクワクしていました!

日野日出志:「子供の集まる場所に置こう」ってなって、歯医者とか床屋とか色んな場所にあった。床屋で俺の本読むのも嫌だなあ(笑)。

ナカジマノブ:歯医者さんで初めて読んでからずーっと先生のファンで、好きすぎて、先生の関係しているものは全部知りたくて、今ではコレクターとなって、作品、本はもちろん、原画とかグッズとか、たくさん持っています。

▲ノブさんの日野日出志先生コレクション!

――すごいですね!私もそんな歯医者さん行きたいです(笑)。ノブさんは今はこうして大ファンの先生と交流をもたれていますけど、それは何がきっかけで?

ナカジマノブ:2004年に先生の漫画6作品が、実写映画になって、その公開記念トークイベントに先生が御茶漬海苔先生と出ていて、それを見に行ったんです。そうしたら、もともと面識のあった会場の店長が「ノブくん、日野先生の大ファンだよね!」と言って楽屋に通してくれて。先生が優しく握手してくれたのですが、30年間ずーっと好きだったから涙がこぼれてしまって。そしたら先生が「落ち着いて」って励ましてくれて。

日野日出志:そっかあ、イベントのことは覚えているけどそんな事あったかあ。

ナカジマノブ:本当に優しく声をかけていただいて、一生の思い出です!

Macで作業、LINEもバリバリ! 日野日出志先生と”ガジェット”のお話

――先生は『ようかい、でるでるばあ!』で商業作品として20年ぶりに新作を発表したわけですが、久しぶりの創作はいかがでしたか?

日野日出志:15年ぶりに机にむかったんだけど、意外と大丈夫でした。15年前は児童図書の『妖怪の大常識』という本に絵を載せて。

ナカジマノブ:その15年間は自主的に書くのをやめたんですか? それとも自然に15年間経っていたんですか?

日野日出志:自然に、かな。とにかく手がね、しんどくなってしまって。あと、昔使っていたMacがあったんだけど、壊れてそのまま放置していたのもあるかもしれません。

ナカジマノブ:今も立派なMacがありますけど、先生は、漫画家さんの中でもMacを作業に取り入れた最初のほうですよね。

日野日出志:そうかもしれないね。昔、モンキーパンチさんが小手指にいて、既にMacを取り入れていたんです。それでモンキーパンチさんが「これからはこの(PC)時代だよ」って言って現物を見せてくれて。ベタ一発でトーンもいらないし、エアブラシも出来るし、確かに良いなと。『毒虫小僧』の大判が出た時、ブラシで仕上げたら、テーブルも青くなっちゃうし、鼻かんだら青いし(笑)、Macって非常に便利だなあと思ったんです。家電量販店に買いに行って、当時の初期設定は760MBしか容量無かったのでメモリ増強して。Macで作業すると原寸大で大きく絵が見えるので良いんですよ。目が大変だから。ハヅキルーペも使っているし。

▲「Macで作業すると絵が実寸大で見れるのが良い」と日野日出志先生。

ナカジマノブ:モンキーパンチ先生がきっかけなんて本当にすごいお話ですね。先生はスマホも使いこなしていて、LINEも絵文字を駆使されていて!

日野日出志:スマホにしてちょうど1年です。海外の方とやりとりはメールしていたので、メールは使っていたのですが、東村山に芸大の卒業生がいて(先生の元教え子)、スマホに乗り換えるのを教えてくれました。絵文字があると感情が伝わりやすいし、便利だなあって使ってます。

ナカジマノブ:先生がTwitterをはじめられた時もすごく嬉しくて。

日野日出志:Twitterって最初よく分かっていなくて「トランプが使ってるやつだろ?」ってだけだったの。でも使い始めたら、色々な方から連絡が来る様になって。過去の作品の総集編の出版とかね。お話が増えました。

ナカジマノブ:Twitterをきっかけに先生の作品を知る若い方も多いかもしれませんね。

日野日出志:確かに、俺みたいなタイプの作品はデジタルサイトにむいているのかもしれないなと思います。サイトだと、昔の作品、今の作品全部並列で読むから、「あ、これなんだろうって」若い人が読んでくれるんですよね。だから無料配信でも全然気にならない。井上雄彦(『バガボンド』など)がそれやられたらたまったもんじゃないと思うけど(笑)

ナカジマノブ:人間椅子の曲も、YouTubeやサブスクリプション(Apple music、Spotifyなど)でも配信されています。どんなきっかけでも人間椅子の音楽を知ってくれて、興味を持ってくれて、CDを買ってくれたりライブに来てくれるから、大切だなあと思っています。

初の絵本『ようかい、でるでるばあ!』制作秘話

ナカジマノブ:いちファンとしての意見ですが先生が絵本を描かれるって、すごく自然だなと思ったんです。先生の作品は絵がすごく印象的だし、お話も不気味であっても必ず優しさもあって、絵本にしたらきっと素敵だろうなっていう作品がいっぱいありますから!

日野日出志:童話や民話がすごく好きだったので、昔からそういった作品を描きたいと思っていました。でも、商業誌ではそれは成立しないので、怖い世界観を入れたんです。最初は人間をどう描くのかもわかっていなかったんですが、当時『ガロ』の担当さんが「いつかは小学館や集英社で描くんだ」と言ってくださって、その後そういう機会に恵まれたわけですが、『蔵六の奇病』で物語の作り方を描きながら覚えていきました。例えば、黒澤明の映画って長尺だけどすごくシンプル。最初の頃は、どう描けば物語が伝わるのかを常に研究していました。

ナカジマノブ:先生はすごく描き直しをされるんですよね。

日野日出志:そうそう、だって最初、蔵六には妹がいたんですよ。

ナカジマノブ:ええっ、そうなんですか! はじめて知りました!

日野日出志:妹がいるとお兄ちゃんの気持ちを代弁してしまう、それはうるさいなと思って削ってね。一つ一つのキャラクターに思いを馳せて、蔵六から感じ取れるお母さんの気持ちとか、そういうのを大切にしようと思った。「蔵六を絵本にしたら?」とも言われたけど、その時の(創作していた頃の)気持ちにはもうなれないから、新しく描くことになったんです。

ナカジマノブ作曲の人間椅子『地獄小僧』について

――人間椅子の新アルバム『新青年』に収録されている、『地獄小僧』はノブさん作曲ですが、日野日出志先生へのオマージュですよね。

ナカジマノブ:そうです! 俺が曲を書いて、和嶋くんが歌詞を書いてくれたんですが、「ノブくんが歌うんだから、日野日出志先生のタイトルにしよう」って言ってくれて。ライブでやるとすごく盛り上がります!

日野日出志:それは良かった。「タクシーにのったら地獄小僧の演奏が聞こえてきた」とTwitterで連絡ももらったり。人間椅子の音楽は俺が(CDを)持っているロックやパンクと趣が違うんだけど、すごく良いよね。

ナカジマノブ:うわあ、ありがとうございます! これからも俺が作曲をする時は日野日出志先生シリーズを作っていきたいなと思っているんです。日野日出志ファンにとっては、絵本も出ましたし、ドキュメンタリー映画も、展覧会もあって、Twitterで発言も読めますし、最近本当にたまらないです。嬉しい限りです。

日野日出志:「まずい棒」もあるし(笑)。

ナカジマノブ:そうです、そうです!まずい棒、最高ですよね。

日野日出志:あれ、孫から連絡きたんですよ。「じいじの絵に似てる」って(笑)。

ナカジマノブ:すごい、お孫さんも直接ではなくてニュース等で知ったんですね(笑)。
いつか人間椅子ともコラボしてください!

日野日出志:ぜひやりましょう。僕も楽しみにしていますね!

ナカジマノブ:本当ですか!ありがとうございます! 楽しみにしています!!

▲ノブさんコレクション、日野日出志先生によるノブさんの似顔絵。似てます!

▲何度も印刷して色を見たという『ようかい、でるでるばあ!』先生の作品が生まれる過程を見学して、ノブさんも興奮。

▲日野日出志ワールドな素晴らしすぎる仕事場。

▲リクガメさんもこんにちは!

発売情報

絵本『ようかい でるでるばあ!!』発売中/寺井広樹 (著), 日野日出志 (イラスト)

「あれ…!? なにかあやしいけはいがするぞ!?」
「ようかい でるでる…」

ページをめくると、現れる大迫力のようかいたち。
『蔵六の奇病』『地獄変』などで知られる伝説の怪奇漫画家・日野日出志が描く、
怖いけれども、どこかユーモラスなようかいワールド。

子どもが夢中になる、この夏、一番怖いトラウマ絵本の誕生です!

〈2~5歳におすすめです〉

人間椅子30周年記念アルバム『新青年』発売中

『無情のスキャット』MV
https://www.youtube.com/watch?v=CbI79e5iZKs

―― 面白い未来、探求メディア 『ガジェット通信(GetNews)』

関連記事(外部サイト)