「主人公の恐怖や焦りで観客は手に汗握る」北欧ミステリ『THE INFORMER 三秒間の死角』:映画レビュー

日本で翻訳されるミステリ小説の中でも、今や大きな割合を占める北欧ミステリ。中でも人気なのが、アンデシュ・ルースルンドとベリエ・ヘルストレムのコンビが作り上げたエーヴェルト・グレーンス警部シリーズです。現在公開中の映画『THE INFORMER 三秒間の死角』の原作はそのシリーズの5作目にあたります。英語以外の言語で書かれた最も優れた作品に贈る英国推理作家協会インターナショナル・ダガーを受賞し、日本でも2013年に『三秒間の死角』(ヘレンハルメ美穂訳/角川文庫)として刊行され、その大胆でスリリングな展開はミステリ読者の間で大きな話題となりました。初の映像化は製作を『ジョン・ウィック』全シリーズを担当したベイジル・イヴァニク、相手役の刑事を『ジョン・ウィック:チャプター2』のコモンが演じており、舞台をスウェーデンのストックホルムからニューヨークへと移しました。

主人公のピート・コズロウ(ジョエル・キナマン)は犯罪者。妻(アナ・デ・アルマス)と娘と幸せに暮らすため、減刑と引き換えにFBIの情報提供者―informer―となります。捜査官ウィルコックス(ロザムンド・パイク)はピートをポーランド系マフィアの組織に潜入させ、麻薬取引を押さえて一網打尽にする計画でしたが、取引場所で予想外のトラブルが発生します。なんとその場にはニューヨーク市警がおとり捜査で潜入させた刑事がいたのです。計画が失敗したことで、ウィルコックスはピートを刑務所に送り込み、さらに危険な任務を命じます。ニューヨーク市警の刑事グレンズ(コモン)からも執拗に探りを入れられ、絶体絶命の危機に陥ったピートは、たった一度きりの大胆な計画を立てるのでしたが…。

映画は追いつめられたピートの心情を前面に打ち出し、その恐怖や焦りで観客が手に汗を握るようなサスペンスに仕上げ、かなりスピーディな展開に脚色してあります。一方原作ではグレーンス(映画ではグレンズ)警部の辛い心境や、絶対にあきらめない捜査への信念、そしてピートの驚くべき緻密な計画が描かれており、読者をまったく飽きさせることなく驚愕のクライマックスへと引っ張っていきます。

映画オリジナルの場面も多く追加され、特にアクションは大変見ごたえがあります。原作と映画ではいくつか大きな違いがありますが、どちらのラストにも驚きが待っています。この映画でルースルンド&ヘルストレムのグレーンス警部シリーズに興味を持った方は、デビュー作の『制裁』から、『ボックス21』『死刑囚』『地下道の少女』がハヤカワ文庫から出ていますので、ぜひ読んでみてください。中でも『死刑囚』は猛烈にオススメです!

最後に、上記シリーズ全てを訳されたスウェーデン在住の翻訳家ヘレンハルメ美穂さんに現地でのジョエル・キナマンの立ち位置をお聞きしてみたところ、10年前に大ブレイクして以来、本国では大スターなのだそうです。『スーサイド・スクワッド』続編も楽しみに待ちたいと思います!

【書いた人】♪akira
翻訳ミステリー・映画ライター。ウェブマガジン「柳下毅一郎の皆殺し映画通信」、翻訳ミステリー大賞シンジケートHP、「映画秘宝」等で執筆しています。

『THE INFORMER 三秒間の死角』現在公開中!
https://informer-movie.jp

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