クラウドファンディング2日間で100万円達成! 囲碁カフェ『ひだまり』が見据える「100年企業」への未来

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による自粛が約2ヶ月間続き、飲食店の中には閉店という選択をする店舗も相次いでいます。また、各クラウドファンディングサイトが新型コロナで影響を受けた事業者を対象とした優遇措置を取っていることもあり、支援を募る店舗も増えています。

東京・大田区にある『カフェと囲碁 ひだまり』は、もともと実家が碁会所だったというMayuさんが2017年にはじめた都内でもほとんど見られない“囲碁カフェ”。2020年6月3日に『CAMPFIRE』でクラウドファンディングを始めて2日で目標金額の100万円を達成しています。

今回は、『ひだまり』の店主でトランスDJとしての活動もしていたという経歴もあるMayuさんにインタビュー。囲碁カフェを開いた経緯や、一度は閉店を決意しながらもクラウドファンディングを募った理由、ネクストゴールの300万円でどのようなことを実現したいと考えているのか、お伺いしました。

−−Mayuさんは「Pandora a.k.a.まゆりんち」名義で2008年からトランスDJとして活躍もされていました。家業の碁会所をどうして継ぐことになったのでしょう?
   
Mayuさん(以下、M):もともとOLをしながらDJもやっていて、本来であれば海外に行って音楽を作る勉強をしたかったんです。日本では私が愛しているトランスはそれほど浸透していなくて、有名なアーティストこそ日本も訪れますが、自分が好きなマイナーなアーティストは現地まで見に行かなければ会えなかった。だから「いずれは」と思っていた夢だったのですが、その矢先に母親が他界したんです。その時に自分には、家業を継ぐか廃業するか選択権がありました。けれど、「DJは自分でなくてもできるけど、囲碁屋は私がいないと消滅してしまう」という結論に達しました。

−−実家が碁会所ということは、ご自身もともと囲碁を打つのが日常だったのでしょうか?

M:それが、石すら触ったことがなくて、むしろ嫌いだったんです(笑)。「ヨーロッパの音楽の最前線が好き」と言っているような派手なものが好きの人間でしたし、継いだ碁会所はそれこそ昭和な雰囲気で、友だちに「ここ自分の家がやっているよ」と言えるような感じじゃないところがイヤでしたね。それでも、自分にしかできないと思った方を取りました。

−−碁会所でなく、囲碁カフェをはじめようと思った理由を教えてください。

M:家業を継ぐことになって、囲碁の世界を知ろうとして、例えば「囲碁 女性 教室」といった検索をしてみたのですが、自分が行きたいと思うようなところがありませんでした。まず囲碁が打てるということが前提でしたし、女性が一人で入れるような雰囲気でもない。それなら、「囲碁カフェ」という業態にすればどうだろう、と思ったのがきっかけです。あと、碁会所は一席1000〜1500円で一日いることができるという料金体系が多いのですが、それに加えてカフェでの飲食の収入があれば「やっていける」というのがありました。

−−『ひだまり』は東急池上線の長原駅から徒歩1分ほどの好立地です。この場所にしたのは? 

M:池上線沿線で物件を探していて、長原は住んでいたこともあったのでどんな建物なのかは知っていました。それで内見に行って、最初に一歩踏み入れた時点で、内装のイメージが湧いたんです。それで、「ああ自分はここにするんだな」と思ってすぐに契約しました。

−−確かに、窓が広くて明るい雰囲気の店内で、碁盤が置いてなければ「普通のカフェ」と同じような印象です。

M:それまでにある碁会所の雰囲気とは真逆にしようと、開放感がある空間になるようにしました。あとは照明のカバーを白と黒を交互に配置したり、タイルにも囲碁のモチーフを入れたり。あと、カフェスペースに行くまでに碁盤の席を通るようにして、自然と囲碁を打つところを目にするようなレイアウトにしました。あと、『ひだまり』では囲碁のラテアートをしたカフェラテや、白と黒のお餅を入れた囲碁ぜんざいといった、遊び心が伝わるメニューも用意しています。

−−カフェとして通っていたお客さんが、囲碁を目にして打ってみる、というケースもあるのでしょうか?

M:実際、カフェで来ていたお客さんで囲碁に興味を持って実際に打つという方もいらっしゃいます。自宅に碁盤がない方だと目にすることがないでしょうし、『ひだまり』ならば石を打つ音も聞こえます。それで関心を持ってもらえるのが嬉しかったですし、他ではできないことだと思っていました。

−−囲碁好きの外国人に向けたイベントをはじめた理由は?

M:実は、当初海外の囲碁ファンに関しては想像していなかったんです。Airbnbをやっている友だちが「海外向けに囲碁体験を出してみては?」と言われて、私も英語ができるので囲碁を体験する企画をやって、それがヒットしました。

−−実際に足を運ぶ外国人で、どの国籍の人が多いのでしょう?

M:アジア人よりもヨーロッパやアメリカのお客さんの方が多いです。というのも、中国などは家に囲碁があるのが普通だったりもするので。ヨーロッパでは、数年前に囲碁でAIが人に勝ったというニュースによって話題になって、関心のある人たちが碁盤を買いに行ったという出来事があったんですね。それで、ドイツやフランス、アメリカでは「GO GAME」として浸透してきています。

−−想像以上にワールドワイドなのですね。

M:私は囲碁のことを「身につけて帰れるお土産」と言っています。例えば、旅行に行って囲碁を打つ場所を探してみればありますし、そこで一緒に打つことでコミュニケーションすることができます。だから、私の中では限りなく英語に近いものだと思っています。

−−新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言により、多くの飲食店が苦境にさらされています。『ひだまり』にはどのような影響があったのでしょう?

M:まず、日中に碁を打ちにいらっしゃる年配の方々のご家族が「行くのをやめて」となって。カフェは時短営業でもテレワークをする方もいらっしゃるので売上げが増えたのですが……。そもそも囲碁は向かい合って座るので「密」になるので、リアルのイベントなどもできない状態になりました。

−−緊急事態宣言の後、どのような対策を取られたのでしょう?

M:オンラインでZoomや無料の囲碁ゲームサイトを使ったイベントを開催したり、外国人のお客さんが「大丈夫か」と聞いてくるので、YouTubeで「私は元気です」という動画を配信するということも定期的にやりました。でも、そこで100人に「リアル対局とネット碁、どっちが好き?アンケート」を取ってみたのですけれど、リアルで打つのがいいという人が80人以上だったんですね。とはいえ、自粛の打撃は常に受けていて。固定費は下げられない。家賃は払わないといけない。雇用は守らないといけない。葛藤でしたね。

−−店舗を一度閉店するという決断をされたと聞いています。どのような心境だったのでしょうか?

M:オンラインでのイベントをやってみて、「お店いらないじゃん」とも思ったんです。これだけ「密」がダメになって、いつ緊急事態が解除になるのか見えない状況でしたし、カフェに囲碁を打つ人がいないというのを見せつけられて、だんだん心がヤバくなって「これは閉めた方がいいな」と思うようになりました。でも、「店を閉める」というのもすごく大変。原状復帰にもすごくお金がかかりますし、不動産屋さんにも「時期が悪い」と言われて、新しい物件を探すにもいいところがない。追い詰められてました。『ひだまり』のYouTubeチャンネルのフォロワーの約47%が外国人なのですけれど、「コロナが終わったら行く」というメッセージをたくさん頂いて。「店舗がないと意味がない」「ごめん、私は力不足でした」とすごく複雑な気持ちでしたね。

−−その後に、お考えを変えて店舗を存続させようと思ったきっかけがあった、と?

M:そんな中、私の中学校の同級生の飲食店経営者と話す機会があって。彼が「辞めるなんてバカじゃないの」と。「今すぐに取り消した方がいいよ」とはっきりと言ってくれる人は他にいなかったので、その日は一晩考えて、「何もやっていないのにやめるのは違うんじゃないか」と傾いて、不動産屋さんに行って「解約やめます」と言いに行きました。本当に扉を開けるまでは手に汗握って「お願い!」という感じだったんですけれど、あっさりと済んで、「大家さんにとってもよかったと思います」とおっしゃって頂いて。幸運でしたね。

−−『CAMPFIRE』でのクラウドファンディングは、2日で目標金額の100万円に到達しました。

M:正直、クラウドファンディングをやる時はあまり自信がありませんでした。既に他の方がやっていらっしゃいましたし、未達に終わったら「人気ないって見えちゃうな」というのが気になったりして、「怖いな」と思っていました。だから、2日で達成できたのにはとても驚きました。

−−これからネクストゴールの300万円を目指すとのことですが、集まった支援の使い道をどうされるのか教えてください。

M:今回、支援して頂いたものを、ぜんぶ運転資金で使ってしまうということは「やりたくない」と思っています。囲碁をする人口が減っているということはよく言われますが、それを夢が見ることができる業界に変えようとするのが、私の課題であり使命なんじゃないかと。なので、ネクストゴールではECサイトとアプリ開発、海外視察という、大きく3つのことのために使いたいと考えています。

−−ECサイトは、海外の方向けのものになるのでしょうか?

M:日本で囲碁を打つ方は、礼節や打ち方の作法といったことが身についていますけれど、ネットから始めた海外の人はそもそも知らない。そういったマナーを学べるコンテンツや、碁盤テーブル、海外の方にグッズを通じて囲碁の良さを知ってもらえるようなECサイトを目指したいと考えています。また、これからはよりITが進んでいくと思うので、例えばVRを取り入れたアプリを作る、といったことにも挑戦してみたいです。

−−なるほど。海外視察というのは?

M:コロナが深刻になる前に香港に行って、現地で囲碁を打つ人と交流したのですけれど、やはり現地に行かないと分からないことがありますから。いずれは、海外のどこかに囲碁カフェを開きたい、と思っています。私は音楽の世界にもいて、人の交流がグッドバイブスを生んでいくということを目の当たりにしてきました。実際、YouTubeでプロ棋士のマイケル・レドモンド先生のインタビューを出してすごい反響がありましたし、もっと棋士にファンがつくような発信も世界に向けてしていきたいですね。

−−「100年企業を目指す」とも掲げられています。そのためにも、囲碁の裾野を広げたいということですね。

M:もともと私の祖父が開いた碁会所は1965年に開業しているので、100年まではあと45年あるのですけれど。家族が囲碁屋だったからこそ、お店を継いだ時に囲碁に対して恩返しをするんだ、と決めていました。本当に成功できるかどうか、まだわかりませんが、こういったチャレンジは私にしかできないと思っています。英語圏の人にアプローチできたり、いろいろな業界をかじってきたからこそ、囲碁業界を変えるような、新しいものを生み出せるようにしていきたいと思っています。

−−ありがとうございました!

カフェと囲碁 ひだまり(公式サイト)
https://www.cafehidamari.com

【コロナで危機】世界とつながる未来の囲碁カフェ作りにご協力をお願いします (CAMPFIRE)
https://camp-fire.jp/projects/view/283965

―― 表現する人、つくる人応援メディア 『ガジェット通信(GetNews)』

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