【今日の一冊】一発屋芸人列伝

レビュー

過去に一度栄光を掴んだものの、現在ではテレビであまり目にすることがない「一発屋」と呼ばれる芸人たち。そんな彼らを取材するテレビ番組はこれまで数多く目にしたことがあり、「相変わらずだな」と思うこともあれば、「いまはこんなことしてるのか」と思うこともある。そして、それで終わりである。
だがこの本の場合は違った。登場人物たちと同じ「一発屋」という境遇の著者が放つ鋭いツッコミに笑いつつも、最終的には前を向く彼らの姿に、不覚にも心温まってしまったのだ。
一発屋芸人としてはレジェンド級のテツandトモから、少々小粒なジョイマン、コウメ太夫など、本書には計11組の一発屋芸人たちの過去と現在が収録されている。とくにネタについて記述されている部分では、「誰々のネタは〇〇だからすごい」など、同じ芸人目線で見た解説が興味深く、お笑い好きとしても新たな発見があるだろう。
一発屋と呼ばれる彼らの芸は、かつて多くの人に愛され、真似された。おとぎ話であればここで「めでたしめでたし」である。しかし現実の人生はその後も容赦なく続いていく。本書で描かれるのは、一発屋芸人たちのその後の姿だ。
一発屋たちの数だけドラマがある。笑い・苦笑い・悲哀・感動のすべてが詰まったこの列伝が、彼らへの“ゲティスバーグ演説”となることを、著者同様、私も願ってやまない。

本書の要点

・かつて「面白い」と言われた一発屋芸人達のネタは、つまらなくなったわけではない。ただ世間が彼らのネタについて、多くを知りすぎてしまっただけだ。
・「テレビ出演が多い=売れっ子芸人」というわけではない。お客さんの近くで笑いを届けつづけるお笑い芸人もいる。
・かつてのネタで売れなくなったからといって、一発屋芸人たち自身が終わったわけではない。ネタを変え、スタイルを変え、仕事を変え、場所を変え、彼らはいまもお笑い界のどこかでたしかに生きつづけている。



一発屋芸人列伝
山田ルイ53世 (新潮社)

flier(フライヤー)で続きを読む<AD>