【今日の一冊】ウェルカム! ビートルズ

レビュー

ビートルズは、1970年4月10日に事実上解散した。ビートルズ初の来日公演は1966年のことであり、これが最初で最後のチャンスだったといえる。この奇跡の一大イベントには、数多くのビジネスパーソンが携わっていた。その中でも、著者が中心人物として取り上げたのが、東芝音楽工業の石坂範一郎である。当時、東芝は、日本の経済復興の象徴だった。そこから独立した東芝音楽工業の運営を一手に担ったのが、石坂範一郎だ。彼はイギリスで大ヒットを次々に生み出すビートルズの日本発売を決定した。そして見事に、国内でのビートルズ・ブームを巻き起こした。いよいよ彼は、ビートルズ来日の実現に向けて動き出すこととなる。
日本の音楽史に大きなインパクトを与えたビートルズの来日公演。だが、それがどのような経緯を経て実現したのかを知る人は、意外にも少ない。著者はビジネスという視点から、その実現過程を改めて見直す。華やかな舞台の裏で多くのビジネスパーソンが奔走し、数々のドラマが生まれた。
東芝電気の小さな事業部であった東芝レコードがどのように発展し、奇跡の武道館ライブを実現したのか。本書は、その道筋を丁寧に描き出している。明治という時代に生まれ、目立つことを嫌った「サムライ」のような紳士たち。彼らの連携によって、日本の音楽史にビックバンが起こるまでの、壮大なドキュメンタリーをお楽しみいただきたい。

本書の要点

・ビートルズ武道館公演の立役者、石坂範一郎は、東芝音楽工業の実質的経営責任者を務め、坂本九の「上を向いて歩こう」の世界的大ヒットを導いた人物である。彼はビートルズの曲を日本で販売し、日本のビートルズ・ブームに深く関与していた。
・1960年代中盤、日本では空前のエレキブームが巻き起こった。これは若者の非行を助長するものと思われ、ビートルズ武道館公演への反対の声が相次いだ。
・石坂範一郎の親戚にあたり、戦後に東芝を再建した「財界総理」石坂泰三の手助けもあり、ビートルズは事実上の解散間近である1966年に、来日公演を実現させた。



ウェルカム! ビートルズ
佐藤剛 (リットーミュージック)

flier(フライヤー)で続きを読む<AD>