【今日の一冊】逆転交渉術

レビュー

本書は、FBIの主席交渉人として、多くのテロリストや立てこもり誘拐犯らと対峙してきた著者が、その交渉術のエッセンスを紹介した本である。現場で培われた独自の交渉戦術と、全米トップクラスのビジネススクールで育まれた理論。両者が合わさり、この上なく痛快な交渉術となっている。
著者は「人生は交渉である」と述べる。欲しいものを手に入れたり、要求を通したりしたい時には、必ず相手がいるからだ。有利に契約を結ぶための駆け引き、昇給のための面談、店頭での価格交渉。さらには、家庭内のしつけや問題解決なども、すべて交渉であり、結果を伴うコミュニケーションといえる。そうしたやりとりを円滑に運び、最終的に自分の望みをかなえるためのメソッド、それが本書の交渉術だ。
これまで交渉術といえば、『ハーバード流交渉術』に代表されるような、相手に「イエス」を言わせることをゴールに、論理的に問題を解決していくものだった。しかし、本書はその真逆を行く。まずは「ノー」と言わせ、相手の感情に寄り添うことで、そのゴールをめざそうというのだ。
通常嫌われる「ノー」が、どうして交渉において不可欠なのか。また、合理的な問題解決でなく感情に焦点を当てることがどうして重要なのか。知ればたちまち人生のピンチをチャンスに変えられるような新しい常識が詰まった一冊だ。最強の武器を手に、人生の主導権を取り戻していただきたい。

本書の要点

・交渉では、「アクティブ・リスニング(積極的傾聴)」と「ミラーリング」で、相手からの信頼を得ながら情報を収集することが大切である。
・相手の感情を汲み取って言語化する「ラベリング」と、相手から非難されそうな点を先に洗い出す「非難の聴取」によって、相手のネガティブな感情を発散させる。
・「そのとおりだ」を引き出すには、「要約」が有効である。よい要約とは、言い換え+ラベリングである。
・相手からの要求には、「狙いを定めた質問」を投げかけることで、こちらの思う方向へ誘導できる。



逆転交渉術
クリス・ヴォス,タール・ラズ,佐藤桂(訳) (早川書房)

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