【今日の一冊】小売再生

レビュー

毎年11月11日の「独身の日」に中国で行われる大規模セール。中国のネット通販大手アリババがこの日に売り上げる数字が、大きな電光掲示板のうえで踊り狂っている。それはもの凄い勢いではね上がり、一向にとどまる気配を見せない。小売業者たちの心中を察して余りある。
またネット通販の代名詞アマゾンの快進撃に、撤退を余儀なくされた店舗も1つや2つではない。アマゾンは消費者がかつて店頭でしていた判断プロセスを、完全に消滅させてしまう勢いだ。しかも彼らは「ダッシュボタン」という小さなWi-Fi接続端末を通して、わたしたちの家庭にすら侵入しはじめている。このように圧倒的成長を見せつけるネット通販に、小売業者が立ち向かう術はないのだろうか。
もしあなたが小売の未来を思って青息吐息の状態なら、本書が天の助けとなるだろう。著者のいうように、残念ながら従来のかたちの小売が破滅への道をたどっているのは間違いない。しかし小売そのものが死ぬことは決してない。
いま小売の世界で起こっているのは未曾有の大転換だ。これまで実店舗の目的は物を売ることだったが、そのような時代は過ぎ去ろうとしている。時代の変化に対応できなければ、レッドオーシャンの藻屑となって消えてしまうだけだ。小売がこれから生き残る道を知りたければ、まずもって読むべき一冊である。

本書の要点

・破滅への道を進んでいる小売業界は、これから歴史的大転換期を迎えようとしている。
・小売の世界ではいま、商品購入プロセスの入り口で情報伝達を担っていた「メディア」が、商品配給の場になり変わっている。
・ショッピングには人間性が反映される。求める商品との出会いだけでなく、思わぬ商品と出会える偶発性や、買いそびれるかもしれないという不安感の絶妙なバランスが肝要だ。
・ミレニアル世代は体験志向である。もはや実店舗の目的は、商品販売ではない可能性がある。



小売再生
ダグ・スティーブンス,斎藤栄一郎(訳) (プレジデント社)

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