【今日の一冊】熱海の奇跡


熱海の奇跡
市来広一郎 (東洋経済新報社)


レビュー

かつて首都圏の近郊にある温泉地として栄えた熱海。高度成長期から徐々に人気がかげり、20世紀末から2000年代には「衰退した観光地」の代名詞となっていた。1960年代には530万人だった旅館やホテルの宿泊客は、2011年には246万人と、半分以下に落ち込んでいたという。しかし2015年には308万人までその数値を伸ばし、わずか4年間で20%のV字回復を見せている。
本書で著者は、熱海再生の要因として、大型温泉ホテルの廃業後に時代のニーズに沿った低価格ホテルが次々と作られたこと、2007年頃から団塊世代の退職に伴い別荘が増えたことなどを挙げている。しかしそれと同時に、これらの外的要因だけが熱海再生を支えたわけではないとも述べている。
著者は、熱海にUターンし、熱海再生のためのNPOを立ち上げた人物だ。彼らが民間の立場からどのようなアプローチによって熱海を再生させたのか、本書にはその努力と試行錯誤の経緯がふんだんに紹介されている。
そうは言っても、「V字回復は、熱海だからこそできたことだ」と思う方もいるかもしれない。しかし著者によると、熱海が衰退したのも、その他の温泉観光地が衰退したのも、同じ理由によるものだという。それならば、本書で紹介される著者らの取り組みは、他の街にも応用が可能だといえるだろう。ビジネスの手法でまちづくりをするひとつのモデルケースとして、ヒントが満載の一冊だ。

本書の要点

・人口の減少、高齢化率の上昇、空き家率や生活保護率の高さ、出生率の低さ、未婚率の高さ、未婚率、40代の死亡率の高さなど、熱海は日本がこれから直面する問題を先取りしながら衰退した。
・熱海再生の一歩としてまず重要視されたのは、地元の人が熱海の魅力を知ることと、熱海に対するネガティブなイメージを払拭することだった。
・ゲストハウスを経営し、宿泊者が自然と熱海の街に出て行く仕組みをつくった。それによって宿泊者と住人との交流が生まれ、ファン化を促進することができた。

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