【今日の一冊】20億人の未来銀行


20億人の未来銀行
合田真 (日経BP社)


レビュー

アフリカ南東部の国モザンビーク。電気も通っていない村で電子マネーを使った「新しい仕組みの銀行」を構想している起業家がいる。彼の名は合田真氏。その壮大な起業ストーリーとともに、フィンテックの新たな可能性を提示したのが本書だ。これだけ聞くと、「ぶっ飛びすぎ」と思う読者もいるかもしれない。しかし、読み進めるにつれ、「地に足がついている」という感想を抱くようになるだろう。
合田氏は現状の金融システムに疑問を呈する。「分配できる資源が頭打ちの今、富の偏りを加速させる複利を是とする金融システムは社会の不安定を招く」というのだ。そんな問題意識のもと、彼が率いる日本植物燃料がモザンビークで実現をめざすのが、「収益分配型モバイルバンク」構想である。この構想は合田氏がバイオ燃料の原料栽培に関わる中で、現地の農民のニーズに応えようとして生まれた。「収益分配型モバイルバンク」では、預金者への金利を約束せず、一方で融資を受ける人から複利の貸出金利を取らない。メインの収入源は、電子マネーを使って買い物をする際の決済手数料。この決済手数料から得られる収益の20%を、預金者に還元する。還元先は個人1%で残り19%は村単位に還元され、学校の建設や通信インフラ整備などに充てる。まさに「新しい仕組みの銀行」といえよう。
合田氏の起業ストーリーを一言で表すと「積小為大」ではないか。理想を大きく描くことも大事だ。しかし、目の前にある課題を着実に解決することではじめて、理想が現実化する。それを体現する著者の構想力、行動力から学べるものは計り知れない。

本書の要点

・著者はモザンビークで、お金の「ものがたり」を変えようとしている。資源制約期の現在、自由競争のルールに則った金融システムに従っていると、社会が不安定化する恐れがある。
・現在のお金の「ものがたり」の問題点は、「お金でお金を稼ぐ」すなわち「複利」で稼ぐことを是とする点にある。お金を貸している側に富が積み上がり、富の偏りを生み出してしまう。
・著者がめざすのは、電子マネーを使って買い物をする際の決済手数料を収入源とする、「収益分配型モバイルバンク」の構想だ。

flier(フライヤー)で続きを読む<AD>

フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に1,500タイトル以上の要約を公開中です。@niftyニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。