【今日の一冊】移民の政治経済学


移民の政治経済学
ジョージ・ボージャス,岩本正明(訳) (白水社)


レビュー

本書はGeorge J. Borjas, We Wanted Workers, 2016の全訳である。著者はジョージ・ボージャス。公共政策の分野で世界をリードするハーバード・ケネディスクールで20年あまり教鞭をとる、移民経済学の世界的権威だ。
原題のWe Wanted Workersはスイスの作家であるマックス・フリッシュの言葉 ”We wanted workers, but we got people instead”(私たちが欲しかったのは労働者だが、来たのは生身の人間だった)を引用したものである。移民は単なる労働投入ではない。私たちと同じように生活を営み、経済や政治、社会、文化に影響を与える存在だ。移民の経済的な影響をきちんと理解するには、彼らを工場の中で働くロボットのように見なす、狭量な視野から抜け出さなければならない。こうした問題意識は、本書のなかで繰り返される重要なテーマのひとつである。
はたして移民を受け入れることで、受け入れ国の国民の生活は豊かになるのだろうか? 移民政策を考えるうえで、私たちがもっとも気になるのはこの点だろう。この質問に対する著者の答えは明快だ。少なくとも短期的には、移民の経済的影響は差し引きゼロ。つまり移民の受け入れによって、受け入れ国の国民全体が享受できる経済的メリットはほとんどないという。
とはいえキューバからの移民である著者は、移民受け入れの人道的役割も重視している。外国人労働者の活用が身近な問題になりつつある私たちにとって、必読の書といっていいだろう。

本書の要点

・多くの経済学者が「移民は受け入れ国の富を増やし、地球から貧困をなくす」と主張してきた。だが著者は、そうした政治的に正しいとされる考えに距離を置きながら、移民の影響について包括的な研究をおこなっている。
・移民のメリットを享受するのは移民自身と、より安価な労働力を手に入れることのできる資本家だ。そのしわ寄せをくらうのは、受け入れ国に住んでいる一部の労働者である。
・こうした不都合な事実を受け入れ、それを是正する地に足のついた議論が移民政策には求められている。

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