【今日の一冊】 あなたの人生の意味 上


あなたの人生の意味 上
デイヴィッド・ブルックス,夏目大(訳) (早川書房)


レビュー

人間の美徳には二種類ある。「履歴書向きの美徳」と「追悼文向きの美徳」だ。本書ではアイゼンハワーからモンテーニュまで10人の先人たちの生涯を追い、彼らが体現した「追悼文向きの美徳」を探っていく。著者はベストセラー『あなたの人生の科学』を著した気鋭のコラムニスト。本書はビル・ゲイツらがこぞって絶賛する「人生の書」だ。
二つの美徳のどちらが大事かと問われれば、「追悼文向きの美徳」を選ぶ人も多いだろう。にもかかわらず、とかく現代は「履歴書向きの美徳」が重視される。こうした矛盾が起こるのはなぜか。それは、人間の本性には対立する二つの側面があるためだ。本書では、天地創造の物語になぞらえて、履歴書志向の本性を「アダムT」、追悼文志向のそれを「アダムU」と呼ぶ。両者を「大きい私」と「小さい私」と言い換えたほうが、ピンとくるかもしれない。自己顕示を良しとするのが「大きい私」で、謙虚を良しとするのが「小さい私」だ。
ソーシャル・メディアが隆盛を極める昨今、多くの人が幸せで成功している「外向きの私」を作り上げている。「いいね!」獲得競争は過熱する一方だ。こうした「大きい私」の文化を一概に否定はできないが、少々行き過ぎではないか、と著者は警鐘を鳴らす。「アダムT」と「アダムU」の失われたバランスを取り戻し、「追悼文向きの美徳」を身につけることが重要ではないか。そんな想いのもと、新たな道徳体系の構築を呼びかける。そうして初めて、「あなたの人生の意味は?」という問いに対する答えが浮かび上がってくるだろう。気高き人格者へと向かう旅の一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。


本書の要点

・人間の美徳には「履歴書向きの美徳」と「追悼文向きの美徳」の二種類がある。いずれも大事だが、現在は前者ばかりが重視されている。
・「人生の手本」たる先人たちの生き様には、自分との闘いに正面から取り組むという共通点がある。彼らはいったん「謙虚の谷」へと下り、長い努力を経て高い人間性を持つに至っている。
・人間には、謙虚さと自己顕示という矛盾する二つの本性があり、両者のバランスが大切だ。「人生の意味」を見出すには、新たな道徳体系が必要となる。


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