【今日の一冊】 ソクラテスの弁明・クリトン


ソクラテスの弁明・クリトン
プラトン,久保勉(訳) (岩波書店)


レビュー

ここでまず、本書の概要と時代背景を記しておこう。
本書の舞台は、紀元前399年、アテネの民衆裁判所である。70歳のソクラテスが、3人のアテネ市民から訴えられた。職人で民主派の政治家でもあったアニュトス、本書の登場人物でもある詩人のメレトス、演説家として名を馳せたリュコンである。
当時、アテネには「民主派」「寡頭派」と呼ばれる2大政党があった。民主派はアテネ伝統の民主制を、寡頭派は都市スパルタをモデルとする、少数エリートによる支配体制を主張した。
本書に描かれた裁判の数年前、アテネとスパルタの対立からペロポネソス戦争が起きる。結果はスパルタの勝利に終わり、敗戦を機にアテネの政権は民主派から寡頭派に移った。これを「三十人政権」という。この政府の中心となったのが、著者プラトンの母親のいとこ、クリティアスだった。
名門の血筋クリティアスは、当初は歓迎されたが、やがて反対勢力を不当に弾圧する「恐怖政治」を実施し、半年足らずで政府を崩壊させてしまう。このクリティアスの教育者といわれるのがソクラテスである。告訴人の中でもアニュトスは、三十人政権に深い恨みがある人物だった。何の責任も問われず、今までと同様、アテネの広場で問答を続けるソクラテスを見過ごせなかった。
500人の市民陪審員を前に弁明を行い、途中、無罪か有罪かの決定、量刑確定の2回の投票を経て、死刑が確定したソクラテス。最後に聴衆に向けて演説をする場面は胸を打つ。時を経てなお古びることのない思想を堪能していただければと思う。


本書の要点

・ソクラテスは、自身の無知を自覚しているぶん、自分は他の人たちよりも賢明だと考えた。
・死が最上の福ではないとは誰も言い切れない。ソクラテスは、悪か福かわからないことを恐れたり避けたりしない。
・賢者と評される人々と対話し、彼らの無知を暴くことになってしまったソクラテスは、市民に嫌われ、死刑を宣告されることとなった。
・死刑になるソクラテスと裁判の列席者たち、どちらに良い運命が待っているのかは、神にしかわからないことだ。


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