【今日の一冊】自然実験が解き明かす人類史 歴史は実験できるのか


歴史は実験できるのか
ジャレド・ダイアモンド(編著),ジェイムズ・A・ロビンソン(編著),小坂恵理(訳) (慶應義塾大学出版会)


レビュー

「あの時これが起きたら/起こらなかったら、歴史はどう変わっていたか」。誰しも一度はそう考えたことがあるだろう。歴史はいまにいたるまでの長い道のりであり、私たちの目の前にある現状は過去の産物である。
液体をフラスコに入れて過熱するように歴史を「実験」して、「未来のオプション」を見ることができたらどんなにおもしろいことか。しかしそれはいわずもがな不可能だ。過去を操作することはできない。
代わりに本書が試みるのは、歴史を「自然実験」「比較研究法」という手法で探り、特定の事象の原因と結果を導き出すことである。スポット的に歴史の流れを読むのではなく、自然環境や国の制度、イデオロギーなど、さまざまな社会的条件を考慮しながら、複合的な角度で読み解くのだ。
本書に掲載されている8つの研究テーマはいずれも興味深い。執筆陣の専門分野も歴史学だけでなく、考古学、経営学、経済史、地理学など多岐にわたる。そのなかから要約では、歴史学者ジェイムズ・ベリッチによる19世紀の開拓地での爆発的な移民増加についての考察、進化生物学者ジャレド・ダイアモンドによるハイチとドミニカ共和国の比較論、経済学者アビジット・バナジーとラクシュミ・アイヤーによるインドの制度の比較分析を取り上げた。
いま当たり前の事実として横たわる事象も、元を辿れば「原因」がある――それもひとつではなく。まさに歴史のおもしろさを存分に味あわせてくれる一冊であり、読み進めるほどに「そうだったのか!」と膝を打つこと請け合いだ。


本書の要点

・19世紀に入ってからの開拓地の爆発的成長は、ブーム(にわか景気)、バスト(恐慌)、移出救済という3つのサイクルが繰り返された結果である。
・ひとつの島を分けるハイチとドミニカ共和国だが、自然環境や植民地時代の宗主国の方針、独立後の支配者などが、両国の貧富の差につながっている。
・インドにおいて、かつて地主支配下だった地域の学校やインフラの普及率はいまも低い。このことからも国の成長を促すうえで、「制度」はきわめて強い影響力をもっているといえる。


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