【今日の一冊】ニューロンを支配する陰の主役「グリア細胞」 もうひとつの脳


もうひとつの脳
R・ダグラス・フィールズ,小西史郎(監訳),小松佳代子(訳) (講談社)


レビュー

「シンギュラリティは、永遠に達成できないのではないか」。本書を読了したとき、要約者である私はそう感じた。現在のAIブームはディープラーニング技術の発展により、コンピューターがあたかも人間と同様にモノを見分けたり、音声を聞き取ったりという、目覚ましい成果を挙げていることが背景にある。
しかしディープラーニングとは、もともとニューラルネットワークと呼ばれていた技術を高度化したものだ。この技術はその名のとおり、脳内にある多数のニューロンが結びついた回路の再現をめざしている。当然グリアの働きは一顧だにされていない。
グリアは長年、ニューロンや軸索を守るだけと思われていた。なにしろニューロンのように神経伝達物質をやりとりすることも、軸索のように電気的インパルスを電動することもない。ところが最近、グリアには多くの役割があることがわかってきている。
グリアの働きを知り、またこれらの働きを人工的につくるのがいかに難しいかを想像すると、冒頭に記した感想に至らざるをえない。記憶を助け、健康を支え、さらに無意識の働きもつかさどるグリア。この「もうひとつの脳」の機能がもう少し明らかになったとき、AIブームならぬグリアブームが起こるかもしれない。人間とはなにか、その神秘と謎に少しでも迫りたい方には、ぜひ一読をおすすめしたい。


本書の要点

・脳内にはニューロンや軸索だけでなく、グリアも存在している。グリアは「もうひとつの脳」というべき特徴をもつ。
・グリアの役割はニューロンや軸索を守ることだと長年考えられており、ほとんど研究の対象になっていなかった。しかしグリアの機能不全がさまざまな病気を引き起こしていることから、近年その重要性に注目が集まっている。
・グリアは無意識をつかさどり、脳を再構成している。また人間の生命維持や身体機能や、学習や訓練による能力向上にも、グリアは大きく関わっている。


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