【今日の一冊】現金消滅で金融はどう変わるか 決定版 銀行デジタル革命


決定版 銀行デジタル革命
木内登英 (東洋経済新報社)


レビュー

現金大国であると同時に、仮想通貨大国でもある日本。日常の支払いや商取引、貯蓄などで現金の比率が大きい一方、仮想通貨取引のおよそ6割が日本円で行われているという。この状況をつくり出したのは、金融行政を司る金融庁と、通貨の番人である日本銀行だ。護送船団方式という言葉に象徴されるように、かつての日本の金融行政は、最も収益体質が弱い金融機関でも生き残れるよう統制してきた。また日本銀行は、国民が求めるままに現金を発行し流通させるため、多額のコストを費やしている。このような金融政策と通貨政策により、金融機関の支店やATMが街中にあふれている。スマートフォン決済はおろか、クレジットカード決済の比率も、他国に大きく遅れを取ってしまった。このままではフィンテックが普及するはずもない。
焦った金融当局は現在、矢継ぎ早に規制を緩和し、改革案を打ち出している。仮想通貨取引を認める制度整備もこのような動きのひとつであり、話題となったメガバンクのリストラも同様だ。迅速である反面、やや拙速にも見える金融政策と通貨政策の帰結はどうなるのだろうか。
著者がひとつのゴールとしてとらえているのは、中央銀行が通貨を電子化することである。荒唐無稽な発想に思えるかもしれない。だが、通貨の製造や輸送にかかるコストが削減でき、脱税やマネーロンダリングといった、現金ならではの不正が一掃できるなど利点が多い。仮想通貨ブームから金融の未来までを見通す際に、本書は信の置ける羅針盤になってくれるだろう。


本書の要点

・米国で生まれたフィンテックは、既存の金融機関にとってまさに破壊者であった。日本ではフィンテックの普及が米国などと比べて遅れをとっていたが、現在、金融庁は規制の見直しを急ピッチで進めている。
・日本は諸外国と比較して現金志向が強く、現金の流通コストが高いという問題がある。
・いくつかの国では、デジタル通貨の発行に向けた本格的な検討や実験が始まっている。日本でも現金流通や脱税による社会的コストを削減するため、中央銀行によるデジタル通貨の発行を議論すべきである。




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