【今日の一冊】 日本の国益


日本の国益
小原雅博 (講談社)


レビュー

日本のように他国を圧倒するような軍事力がなく、平和を志向する国にとっては、国際情勢の安定こそが国益に適うといえる。その実現のために著者が提唱するのが、国際協調によって国益を追求する「開かれた国益」という概念だ。
国際法の観点における国家とは、「国民」「領土」「政府(主権)」の三要素からなる国際社会の主体と定義される。したがってこれらの要素は、どの国にとっても普遍的な「死活的国益」だ。一方で具体的になにが国益なのかは、それぞれの国が置かれた状況によって異なる。それが2国間の国益が衝突するゆえんであり、同時にWin-Winの協力関係を築くことのできる理由でもある。また日本のような民主主義国家の場合、国益がときとして個人や地方の利益と対立することもありうることも忘れてはならない。
米中の貿易摩擦の勃発、安倍総理の訪中、EUとの経済連携協定、TPPの発効、そしてアメリカの中間選挙など、最近はほとんど週単位で大きな国際情勢のニュースが耳に届いてくる。そうした出来事が、わたしたちの日常にどのような関わりをもつのか。
本書が取り上げる「国益」という視座は、現実を読み解くうえで適切な座標軸を私たちに提供してくれる。現役の外交官からアカデミズムに転じたという著者の筆致は、終始穏やかでバランスがよい。しかしながらその行間からは、日本の未来に対する熱い想いが伝わってくる。これぞ良書だ。


本書の要点

・2013年の「国家安全保障戦略」により、日本の国益は「国家・国民の安全」「国家の繁栄」「普遍的価値観にもとづく国際秩序(リベラル秩序)の擁護」と定められている。
・日本の国益は、いま「北朝鮮の核・ミサイル」「東シナ海の尖閣諸島を巡る対立」「南シナ海における法の支配の問題」という3つの脅威にさらされている。
・日本はアメリカと中国という2つの大国に挟まれた「境界国家」である。現実主義と理想主義を包摂した「開かれた国益」によって、戦略的に生き残るとともに、国際社会へ貢献していかなければならない。




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