【今日の一冊】 日本型組織の病を考える


日本型組織の病を考える
村木 厚子 (KADOKAWA)


レビュー

2009年に起こった「郵便不正事件」を覚えておられるだろうか。当時、雇用均等・児童家庭局長を務めていた村木厚子さんが、偽の証明書を発行し、障害者団体をかたる団体と、ある政治家の便宜を図った疑いで逮捕された冤罪事件である。
のちに、捜査の過程において、主任検事が証拠を改竄していたことが発覚する。現職検事やその元上司の逮捕という、日本の検察史上前代未聞の事態が起こった。これを機に検察のあり方が根本的に見直され、その後の刑事司法制度改革につながっていった。本書は事件の当事者だった村木さんによる手記であり、その後も公務員として「静かな改革」を続けてきた彼女の課題提起の書でもある。
地方大学出身で、かつ女性でありながら、中央官僚のトップである事務次官までのぼりつめた村木さん。本書にも詳しく綴られている彼女のキャリアは、多くの人の共感や関心を呼ぶものであろう。また、彼女の仕事や生活に対する信条は、驚くほど「りきみ」のないものである。自分の使命、そして家族や同僚に対する誠実さが際立っている。
村木さんが感じた日本の検察制度への疑問、硬直化した官僚組織の病理についての考察は説得力に富む。信頼できる司法の仕組みを維持し、不祥事が続く日本型組織の根本原因に冷静に対処していこう――。そんな想いが込められた本書は、不祥事の本質をあぶり出し、一市民としての責任にも気づかせてくれる稀有な一冊だ。


本書の要点

・著者は自分自身が巻き込まれた冤罪事件や昨今の不祥事から、日本の硬直した組織に共通する「病」があると考えるようになった。
・その病とは、自浄作用の不全、軌道修正の難しさ、建前と本音の乖離などである。とりわけ「失敗や間違いは許されない」と考える組織が危ない。組織の同質性が強く、世間の物差しとのずれが生じていることも多い。
・組織の形は、時代の変化に応じて、もっと柔軟に、迅速に変化していくべきである。




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