【今日の一冊】「人と一緒にいること」の政治学 未来をはじめる


未来をはじめる
宇野重規 (東京大学出版会)


レビュー

本書は2017年に豊島岡女子学園中学校・高等学校で行われた全5回の講義がもととなっている。ブレグジットや「アメリカ・ファースト」を唱えるトランプ大統領の政権始動、韓国での朴槿恵大統領の罷免や北朝鮮による核実験の継続。こうしたニュースが次々と舞い込み、未来への不安が日本を覆っている時期でもあった。そんな先行き不透明な時代においても、人間にとって欠かせない基本的条件は大きくは変わらないのではないか。そう著者は学生たちに提起する。基本的条件とは「人と一緒にいる」ということである。
中高生を対象にした講義のため、語り口は優しく、親しみやすい。だが、展開される内容は大人にとっても大いに示唆に富むものばかりだ。日本や世界全体の政治・経済の現状を解説しながら、現在の政治制度が抱える問題点に対し、多角的な視点を提供してくれる。
人とのつながり、格差の問題、働き方、選挙制度、民主主義の活かし方。政治の根幹について考え抜いた本書は、政治が扱う範囲がいかに広いのか、そして社会常識を疑う姿勢がいかに大事なのかを読者に教えてくれる。本書を読み終われば、人の行動が社会を変えていくという可能性が、よりリアルなものとして受け止められるにちがいない。
政治という仕組みの根本を知るための絶好の入門書として、あらゆるビジネスパーソンにおすすめしたい一冊だ。


本書の要点

・現代の民主主義は、ルソーの思想に大きく影響を受けている。ルソーは、全ての人が自由かつ平等で、しっかりと判断ができるという前提のもと、一般意志に自発的に従うことで他者とつながることが可能だと説いた。
・多数決には不完全な面があり、選挙制度自体に工夫の余地がある。また、選挙だけに頼らない熟議民主主義という形態も登場しつつある。
・人が行動を変え、習慣も変えることで、その人の人格までもが変わるように、個々の変化が社会の変化にもつながっていく。




フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に1,500タイトル以上の要約を公開中です。@niftyニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。