【今日の一冊】評伝 小嶋千鶴子 イオンを創った女


イオンを創った女
東海友和 (プレジデント社)


レビュー

第二次世界大戦後、三重県四日市の呉服屋を日本一の巨大流通グループ、イオンへ成長させた岡田卓也名誉会長。本書は、親代わりとして、姉として、そして最高人事責任者として彼を支えた実姉・小嶋千鶴子の評伝だ。
千鶴子は、父と母と姉を早くに亡くし、若干23歳で岡田呉服店の代表取締役とならざるを得なくなる。予定していた結婚も延期し、10歳年下の長男・卓也を含め、家族と会社の双方を切り盛りしていたというから驚きである。戦前・戦時中の激動の中で、何を改革すべきか、障害となるものは何かを見極め、次々と施策をうつことができたのは、彼女の負けん気の強さと向学心の高さによるものに違いない。
卓也を大学まで卒業させ、岡田屋の代表取締役とした後、千鶴子は一旦岡田屋の経営から身を引く。その後復帰し、卓也の描くさまざまなビジョンを実現するため、矢継ぎ早に人事施策を実行した。当時の岡田屋・ジャスコがおかれた状況を踏まえて読むと、大卒者の定期採用、女性社員の戦力化、企業内大学の発足、ジャスコ大学・大学院の設立など、これらの人事施策がなぜ必要だったのか、そしてそれらの施策がいかに効果を発揮したかがよく理解できるはずだ。
「いかなる優れた企業も、社会の変化に適応しなければやがて衰退する」――標語のようによく言われることだ。だが、それを現実的な危機として実感し、変革を推進するリーダーの育成は、現代においてますます重要であるに違いない。今こそ読まれるべき一冊であるといえよう。


本書の要点

・千鶴子は最高人事責任者として、四日市市の岡田屋をジャスコへ、そしてジャスコをイオングループへと育て上げる基盤を築いた。
・千鶴子はしばしば、社員に「問題あらへんか?」と問いかける。このひと言によって、仕事で困っていることはないか、お客様からの苦情や商品の品切れ、上司・部下の関係、そしてプライベートに問題はないかを尋ね、手を差し伸べようとしているのだ。
・千鶴子の人事政策の要諦は、変革を許容し、積極的に対応する人材を育成することである。


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