【今日の一冊】イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語 THE LAST GIRL


THE LAST GIRL
ナディア・ムラド,ジェナ・クラジェスキ,吉井智津(訳) (東洋館出版社)


レビュー

ヤズィディ教を信仰する貧しくも平和な村で育った著者ナディア・ムラドは、家族を大切にし、おしゃれを楽しむ、私たちと時を同じくして生きている女性であった。その生活は、ある時を境にすべて失われてしまう。2014年、ISISによって住んでいたイラクの村を襲撃されたことで、彼女の生活は崩壊した。
正直なところ、要約者は、本書を読むまで、ヤズィディ教についてもISISが行った行為の詳細も、ほとんど知らなかった。しかし著者の言葉によって、戦争による大量虐殺も性奴隷の売買も、遠い昔の物語ではなく今この瞬間に起こっている事実なのだということがはっきりと示され、改めてその事実に衝撃を受けた。
性奴隷となった女性たちにも、大勢の家族があり、生活があり、好きなことや大切にしている価値観があったが、愛おしく思えた時間のすべてが夢のように消え去ってしまった。二度と手に入らない生活への悲しみを抱え、生き残った者として罪悪感を抱えながらこの後の人生を生きていくのは、どんなに苦しいことであろうか。著者はその体験を語ることによって、ISISやそれに加担した人々を大量虐殺の罪で告発することに人生を投じていく。
本書は、戦争体験記であるとともに、戦争によって暴力性を増した世界にはびこるすべての悪を告発している。著者は「戦下における武器としての性暴力の根絶に尽力」したとして、2018年にノーベル平和賞を受賞した。著者の勇気と覚悟へ敬意をもって、本書をぜひとも一読いただきたい。


本書の要点

・ヤズィディ教を信仰する村人たちは、たびたび大虐殺の対象にされてきた。
・村人たちが改宗を拒否すると、男性たちは殺されてしまった。若い女性たちはバスに乗せられ、ISISの性奴隷として運ばれた。
・ヤズィディ教徒の未婚女性にとって、改宗させられることと処女でなくなることは、大きな打撃となる。ISISが女性たちを性奴隷として利用したのは、そのことを知っていたからだ。


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