【今日の一冊】 教養としてのワインの世界史


教養としてのワインの世界史
山下範久 (筑摩書房)


レビュー

本書は、歴史社会学者の著者が、とかく抽象的になりがちなグローバリゼーションの議論を、「ワイン」という切り口で展開した意欲作である。
今日、メディアにてグローバリゼーションという言葉は当たり前に目にするが、その意味を正しくとらえている人は少ないようだ。このようなグローバリゼーションという言葉の乱用が、その価値を激しく目減りさせていると著者は指摘する。グローバリゼーションの波にさらされてきたワイン。そんなワインという身近なモノに注目することで、グローバリゼーションについてリアルに考えられるよう、随所に工夫を凝らしている。
本書は大きく3部からなる。第1部「ワインのグローバル・ヒストリー」では、ワインにおける「新世界」と「旧世界」という概念から、ヨーロッパ中心主義的な世界史観を捉えなおす。第2部「ワインとグローバリゼーション」では、農業だったワインが工業化され、どのような展開をたどったのかが、「フォーディズム」と「ポスト・フォーディズム」をキーワードとして書かれている。つづいて第3部「ポスト・ワイン」では、現在のグローバリゼーションにおいて大切な、生産者と消費者を結ぶ「価値の共有の厚み」という概念をひも解いていく。
グローバリゼーションへの理解が深まり、世界の見方が変わる一冊である。ワインから見る世界史の奥深さを堪能していただきたい。


本書の要点

・19世紀以降の再帰性の高まりは、ワインにおける「旧世界」から「新世界」へのグローバリゼーションを加速させた。
・フォーディズムからポスト・フォーディズムへの転換は、ワインの産地の拡大と品種の収斂をもたらした。
・パーカーの画一性とテロワールの多様性という対比でワインのグローバリゼーションを語るのは短絡的だ。
・グローバリゼーションの恩恵に浴せるかどうかは、生産者と消費者における価値の共有の厚みがカギとなる。


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