【今日の一冊】彼らはこうして富と権力を独占する エスタブリッシュメント


エスタブリッシュメント
オーウェン・ジョーンズ,依田卓巳(訳) (海と月社)


レビュー

国民投票におけるイギリスのEU離脱賛成派の勝利、およびアメリカ大統領選挙におけるトランプの勝利。これらは「エスタブリッシュメント」に対する大衆の反抗という意味合いがあると言われている。
エスタブリッシュメントといえば、社会や政権の中枢にいる人々のことであるが、その正体や実情を詳しく理解するのは困難だ。だが本書は現代イギリスにおけるエスタブリッシュメントの内実を分析し、今日のエスタブリッシュメントがなぜ影響力を握ることができたのか、どのように権力を行使しているのかを鮮やかに分析している。
著者は34歳の青年だが、勧善懲悪の反権力的思考に陥ることなく、膨大な数のエスタブリッシュメント当人にもインタビューを重ね、歴史や経済的要因も分析したうえで、冷静に怒りを向ける。論及の対象は20世紀後半から21世紀初頭にかけてのイギリス社会であるが、グローバル化が進む現代において、エスタブリッシュメントによって生み出される問題は、もはやイギリス固有のものではない。著者が提示する対策は、右派ポピュリズムが蔓延する世界全体にも通用するものだろう。
現代のエスタブリッシュメントについて理解し、社会変革の必要性を考えるうえで、必読の書といえる。


本書の要点

・エスタブリッシュメントとは、具体的な個人ではなく「体制」であり、ひとまとまりの「メンタリティ」を指している。
・エスタブリッシュメントの間では「国家は悪であり、自由市場こそが成長と進歩の原動力である」とする新自由主義のコンセンサスが形成されている。だが貧困者が厳しい現実にさらされている一方で、銀行や大企業は国家によって救済されている。
・いま求められているのは、エスタブリッシュメントが私物化している民主的な権利と権力を平和的な方法で取り戻すこと、すなわち「民主革命」である。


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