【今日の一冊】不毛な議論は終わった。 丹羽宇一郎 習近平の大問題


丹羽宇一郎 習近平の大問題
丹羽宇一郎 (東洋経済新報社)


レビュー

自分が暮らしたり、仕事をしたり、旅行にすら行ったことのない国について考えるとき、そのほとんどは「どこかで聞いたことがある」程度の情報でしかイメージできないだろう。その程度の情報をもとに自分の主張を述べても、根拠は薄弱で、説得力は持ちえない。
それは中国であっても同じことだろう。しかし難しいのは、日本にとって中国はまさに隣近所の国で、欧米諸国などと比べると似ているところも多いから、イメージだけはしやすいことである(正しいか、間違っているかは別にして)。だからたとえ行ったことはなくても、巷に流れる情報だけで、なんとなく「知っている」と錯覚する国ではないだろうか。
本書をお読みいただくと、自分がまさにそんな錯覚をしていることに気づかされるだろう。共産党独裁、海洋進出、一帯一路構想など、中国はよく、日本にとって対峙すべき脅威の文脈で語られる。もちろんそれを完全には否定できないが、脅威だけが増幅すると、実態からかけ離れたイメージだけが膨らんでいく。そしていつの間にか、相手を敵としてしか見られなくなる。これは、かつての日本が戦時中に経験したことではないか。
それを避けるには、イメージではなく、実際に見て、聞いて、感じて、中国を深く理解することだろう。もちろんそれでも人によって見方は異なるかもしれないし、誰にでもできることではない。だが著者は実際に、習近平氏と何度も会ったことがある数少ない人物である。実物大の中国を少しでも知ろうとするならば、きっと参考になる一冊だ。


本書の要点

・習近平が掲げるテーマは「中華民族の夢」だ。また国内的には、反腐敗運動を進めるとともに、八大元老による長老支配を一掃しようとしている。
・習近平の対外政策は、より広い地域を手中に収めることが狙いだと受け止められていることが多い。しかしその見方は正しくない。目指しているのはアジア諸国との共存共栄である。
・中国の大問題として挙げられるのは、信用のおけない国内の統計数字および金融市場の自由化だ。いずれ民主化していくのは必然の流れだが、これは人類史上初の挑戦となる。


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