【今日の一冊】 サンデル教授、中国哲学に出会う


サンデル教授、中国哲学に出会う
マイケル・サンデル,ポール・ダンブロージョ(編著),鬼澤忍(訳) (早川書房)


レビュー

『これからの「正義」の話をしよう』などの著書で有名なマイケル・サンデルは、第一線で活躍する政治哲学者である。本書は、大学での講義や学生との討論のように、誰にでも親しみのある話題をテーマとしたものではない。中国哲学研究者たちが、サンデルがこれまで様々な著作において行ってきた議論に対して真っ向から取り組んだ論考が集められた体裁となっている。そのため、本書を正確に読み解くために必要とされる知識のレベルは高く、ジョン・ロールズ『正義論』の概要や、『正義論』を巡ってなされた「リベラル・コミュニタリアン論争」、共和主義、アリストテレスやカント、そして儒教や老荘思想などがカバーされている。世界的に一流の学者が真剣に交わした議論の中から、新たな発見を多く見いだせることだろう。
中国は歴史上の大部分において、個人の道徳、社会規範、さらには官僚による統治に至るまで、その根拠を儒教思想の教えにおいてきた。家族や人間関係における道徳を論じる儒教思想は、同じく共同体における善や市民的美徳といった道徳的価値を重視するサンデルの主張と共鳴する点が多い。サンデルの主張は主に、功利主義やリベラリズムにおける過度の合理主義、個人主義を見直すものである。急速な経済発展を成し遂げた現代中国も、改めて伝統に立ち返り、道徳の観点から社会や国家の在り方を考える公共哲学を必要としているのだろう。伝統的に中国哲学から多くを取り入れてきた日本社会も、本書の議論から学ぶことは多いのではないだろうか。


本書の要点

・サンデルの思想は共同体における善や道徳を重視する点で儒教思想と共通する点が多い。西洋ではサンデルの主張は道徳的要求が「厚い」と見なされるが、儒教から見ると不十分でさえあり、より多くの善を公共に対して求めるべきだという。
・中国哲学はジェンダーに相互依存や補完という概念を示す。西洋の伝統が当たり前とみなす構造に対して、中国哲学は新たな観点を提示する。
・中国はいま、経済発展とは異なる、市場では得られない幸福の源として、公共哲学を探し求めている。


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