【今日の一冊】二極化する政治が招く独裁への道 民主主義の死に方


民主主義の死に方
スティーブン・レビツキー,ダニエル・ジブラット,濱野大道(訳) (新潮社)


レビュー

要約者は、日本に生まれ育った者として民主主義は正しいものだと教えられ、またそれが存続すると信じてきた。しかし本書を読むと、そうではないことがわかってくる。しかも、私たちが当たり前だと思っていたことが、実は民主主義を破壊しようとしているというのだ。
その一例が選挙である。民主主義の根幹のように思われてきた選挙が、恣意的に操作・実施されれば、逆の結果を生むというのである。現にアメリカでは、独裁者主義的傾向のあるドナルド・トランプ大統領が選ばれ、世界全体が大混乱に陥っている。本書を読めば、現代アメリカ政治の混沌が民主主義の危機を象徴していることが、ありありとわかるだろう。
政治的な対立軸が先鋭化して、どうにも譲れない状態が起こっている。著者はこれを、「ガードレールがなくなってしまった状態」と表現する。相互的寛容と自制心の規範を指す「ガードレール」という言葉が、言い得て妙だ。この機能が失われたことで、過激な動きの歯止めがかからなくなってしまった。
民主主義はシステムとして意義あるものだが、運用次第で薬にも毒にもなる。著者は、アメリカ、欧州、南米の様々な具体例をまじえて、危機をどう克服してゆくべきかを提示する。そして、民主的なルールや規範を破るのではなく、むしろそれを護る努力をすべきだと説く。
民主主義の危機には、民主主義の制度を通じて対抗していくしかない。1人1人が護っていくべきだという指摘は、私たち日本人の心にも重くのしかかる。


本書の要点

・現役の指導者たちが政治的な責任を放棄したとき、アウトサイダーの大衆扇動家が権力を握り、その国は独裁政治への一歩を踏み出すことになる。
・アメリカでは、極端な人物の進出を抑制するメカニズム、つまり「門番」が効果的に機能しなかった。そのため、ドナルド・トランプが大統領に就任するという道が開かれてしまった。
・民主主義の死を防ぐには、平等主義、礼節、自由の感覚といった民主主義の規範を取り戻すだけでなく、ますます多様化する社会にそうした規範を行き渡らせなくてはならない。


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