【今日の一冊】日本企業の存亡を分ける正しい外部化・内部化とは? 持たざる経営の虚実


持たざる経営の虚実
松岡真宏 (日本経済新聞出版社)


レビュー

ビジネス書を読んでいる人のなかで、「選択と集中」という言葉を一度も目にしたことがないという方は、おそらく少数派であろう。だが本書によると、一般的に知られている「選択と集中」の意味は、じつは「誤訳」なのだという。
フロンティア・マネジメント代表取締役を務める著者の松岡真宏氏は、この「誤訳」が及ぼした影響を解説するとともに、「日本企業は社外の組織や資源を社内に取り込むことを検討し、経営戦略を見直すべき時を迎えている」と唱える。それはなぜか。
1980年代のバブル経済のとき、日本企業は事業の多角化を推し進めていた。ところがバブルが崩壊すると、日本経済は低迷。そんななか、「選択と集中」という経営用語が急激に広まった。ピーター・ドラッカーによって提唱され、伝説的な経営者であるジャック・ウェルチが広めたこのキーワードは、経営不振に悩む経営者にとって福音のように思われたのだ。日本企業は「選択と集中」の旗のもとに、不採算事業を縮小あるいは撤退し、本業へ経営資源を集中することを是とする方向に大きく舵を切った。だが日本企業を大きな方針転換に至らせたこの言葉は、じつは事業分野の多角化を否定するものでも、本業への集中を促すものでもなかったのである。
取引コストが増大する現代において、企業が本業以外の機能を内部へ取り込むことは、決してマイナスではなく、むしろプラスの面が大きいと松岡氏は語る。M&Aの件数が増加していることもそのあらわれだ。新興国でも専業化の対極にあるコングロマリット(複合企業)が躍進している。自社の経営資源を何に投下すべきか、いまこそ再考すべきと思わせてくれる一冊だ。


本書の要点

・著名な経営者ジャック・ウェルチの唱えた「選択と集中」という言葉は、「誤訳」され日本に広まった。
・「選択と集中」は日本の経営者にとって、過去の拡大戦略の失策から脱却し、方針転換するためのキーワードとして利用されてきた。
・事業の多角化を否定し、本業に特化することが是とされた結果、日本では新事業・新産業の創造が行われづらくなってしまった。
・企業は「取引コスト」に着目し、内部化すべき機能、外部化すべき機能をそれぞれ判断する必要がある。


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