【今日の一冊】音楽とポップ・カルチャーが果たした役割 「湘南」の誕生


「湘南」の誕生
増淵敏之 (リットーミュージック)


レビュー

「湘南」はどこからどこまでか。改めて考えてみると、その範囲は極めて曖昧であることがわかる。行政区域上の「湘南」と自動車ナンバーが示す「湘南」とでは範囲が異なるし、気象庁のいう「湘南」もまた異なる。
このように不思議なエリアであるにもかかわらず、「湘南」が日本でも屈指のブランド力を持っていることは興味深い。「湘南」といって思い浮かべるのは、お洒落な海沿いや高級な住宅、そしてヤンキーだろう。複数のイメージがあり、範囲もはっきりしないエリアなのに、なぜ人びとを強く惹きつけるのだろうか? 
本書の目的は、この不思議なエリアを徹底分析することにある。地理的な考察に加えて、「湘南」をあつかった音楽、文学、映像、マンガ、アニメなどから、「湘南」というイメージがどのような経緯で形成されたのかを考えていく。本書で取り上げられる作品の数は多岐にわたり、その数の多さに、「湘南」の凄さを再認識することになる。懐かしさを覚えるものもあり、もう一度作品を確認したくなってしまう危険性もはらんでいる。
本書は、「湘南」に興味がある読者にとって、湘南のブランドが形成されてきたストーリーとプロセスを楽しめるものだ。また、特定のエリアのブランディングを考えるうえでも大いに参考になるだろう。「湘南」論を楽しみつつ、いかに「湘南」ブランドが形成されてきたかの記録としてもお読みいただける一冊だ。


本書の要点

・「湘南」という言葉は、地理的な範囲を厳密に定義したものではない。
・「湘南」のイメージが複数あるのは、小説、音楽、映画、マンガ、アニメなどのコンテンツ作品による影響が大きい。別荘文化からは「高級、富裕層」イメージが、海やサザンオールスターズからは「若者」イメージが、そして『スラムダンク』などからはヤンキーイメージが形成されているはずだ。この3つの層が重ねあわさって、「湘南」のイメージが形成されている。


この本の要約をflier(フライヤー)で読む


フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に1,500タイトル以上の要約を公開中です。@niftyニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。