【今日の一冊】子あり、子なし、子の成長後 夫婦幻想


夫婦幻想
奥田祥子 (筑摩書房)


レビュー

「夫婦幻想」。配偶者のいる人なら誰しもドキリとさせられ、思わずページをめくりたくなる……そんなタイトルではないだろうか。
本書は、著者がさまざまな形の夫婦を最長で20年にわたって継続的に取材し、ルポルタージュとしてまとめた一冊だ。たとえばある男性は、「男は仕事、女は家庭」の古き良き時代の夫婦を理想とし、その理想を実現してくれる女性と結婚する。しかし仕事に邁進するうち、家族との溝は深まっていき、子どもから「お父さんなんて、もういなくていい」と言われてしまう。またある夫婦は、妻が夫よりも早く昇進したことをきっかけにギクシャクしていく。子どもは持たないと決めたはずなのに、夫婦関係が冷えていくにつれ、その決断を後悔するふたりもいる。いずれも、お互いに「幻想」を抱いていることが一因であるようだ。
どの夫婦のストーリーも、テレビドラマほど劇的ではなく、ありふれたものにも見える。それなのに読者は、目を離すことができない。それは、怖いもの見たさだろうか。それとも、自分たちの姿を見ているような気持ちにさせられるからか。
本書の最後で、「夫婦幻想」から抜け出す方法として提案されるのは、どんな人間関係にも共通する、ごく基本的なふるまいだ。要約者は、ドロドロしたルポルタージュを読んだ後ということもあり、少々拍子抜けしてしまった。だがその普通さが、「夫婦は家族であって、他人でもある」という事実を思い出させてくれるとともに、本書の味わいをいっそう深くしてくれたのだった。


本書の要点

・行き過ぎた承認欲求は、夫婦の関係を歪ませる。
・家族への愛情をうまく伝えられず、家庭での居場所をなくす男性は多い。一方、女性は、家事に育児にと努力しても夫に認められないと嘆くケースが多い。夫、妻ともに自分の思いを伝え、相互理解に努める必要がある。
・夫婦幻想から抜け出すには、理想を追求し過ぎず、お互いに思いやりを持つこと、世間の眼差しや社会的評価を過剰に意識しないことが効果的だ。


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