【今日の一冊】ビッグデータがもたらす新しい経済 データ資本主義


データ資本主義
ビクター・マイヤー=ショーンベルガー,トーマス・ランジ,斎藤栄一郎(訳) (NTT出版)


レビュー

経済学は近代に誕生した比較的新しい学問であり、社会の市場経済と資本主義の仕組みについて探究してきた。しかし時代が変わり、社会の仕組みが変われば、自ずと研究対象も変わっていく。貨幣や価格の理論を提示してきた経済学は、貨幣や価格がその役目を終えたとき、何を探究することとなるのか。
データが貨幣と価格に取って代わったとき、金融資本主義はデータ資本主義へと移行する――著者はそう考える。精細なアルゴリズムやマッチングシステムの発展により、データリッチ環境が整った社会では、もはや貨幣や価格に縛られる必要はなくなる。そうなればそれぞれの嗜好や価値観に沿った選択にもとづき、より自由な生き方ができるようになるかもしれない。著者が思い描くデータ資本主義とは、データやシステムに人間が服従する未来ではなく、より人間的に生きられるようになる未来だ。そしてそこに新たな希望を見るのである。
いろいろな意味で常識を覆される本書だが、議論は理解しやすく説得力がある。これからの経済のあり方について、思考を深めたい方にぜひ読んでいただきたい。本書を読んでいるか読んでいないかで、現代社会に対する見方は大きく変わるはずだ。


本書の要点

・人間の調整能力を発揮するための分権的な仕組みが「市場」であり、集権的な仕組みが「企業」である。市場では貨幣と価格が情報伝達の役割を果たしてきたが、現代では大量のデータが取って代わりつつある。
・データリッチの環境において、集権的な企業も変化を迫られている。考えられるひとつのやり方は、分権的な市場の仕組みを企業組織に取り込むことだ。
・長期的に見ればデータが貨幣に取って代わり、金融資本主義はデータ資本主義へと移行するだろう。それは人間を貨幣・資本から解き放ち、より人間的な生き方を追求できるようになる好機である。


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