インテリアだけでも買い!「V60」のベーシックモデルはあの頃のボルボ味が濃密

インテリアだけでも買い!「V60」のベーシックモデルはあの頃のボルボ味が濃密

インテリアだけでも買い!「V60」のベーシックモデルはあの頃のボルボ味が濃密の画像

ボルボが展開するステーションワゴンの主力モデルといえば、ミドルサイズの「V60」だ。中でも、今回採り上げるグレード「モメンタム」は、最もベーシックで手の届きやすいモデル。

しかしその実力は「たかがボトムグレードでしょ」と侮れない。それどころか、むしろ積極的に選びたい理由があるのだ。今回は、V60モメンタムがいかに魅力的で、なぜ惹かれるのか、その理由を探りたい。

■ライバルよりも時代の先を行くボルボ

近年、順調に販売台数を伸ばしてきたボルボは、昨2019年も過去最高の世界販売台数を記録した。前年度と比べると9.8%のアップで、これで記録更新は6年連続となった。同様に、日本市場においても好調で、2019年の販売実績は5年続けて成長グラフを描いている。

そんなボルボのラインナップは、他社と同様、昨今はSUVが主力となっている。それでも「ボルボといえばワゴンでしょ」というユーザーは依然として多いのだろう。ボルボはV60のほかに、ラージサイズワゴンの「V90」もラインナップしている。

つまりV60は、ボルボにおける“小さい方”のワゴンだ。それでもボディサイズは、全長4760mm、全幅1850mmと決して小さくはなく、メルセデス・ベンツの「Cクラス ステーションワゴン」やBMWの「3シリーズ ツーリング」、そして、アウディ「A4 アバント」といった欧州のプレミアム・ツーリングワゴンがライバルとなる。

安定のメルセデス・ベンツに、走りのBMW、そして、モダンで先進的なアウディといった具合に、ライバルたちはそれぞれ個性を備える。もちろん、価格や実用性も大事だが、このクラスのワゴンともなると、オーナーが愛車にどんなイメージを抱けるか、そして、所有するとどんな生活を送れるかを想像させてくれるキャラクターが肝心だ。

では、ボルボのステーションワゴンはどんな魅力を備えているのだろう? V60で注目したいのは、洗練されたデザインや落ち着いた雰囲気、そして優れた安全性だ。

近年、ボルボ各車のエクステリアは、シャープで都会的なデザインを採用。対してインテリアは、まるでタブレットのような縦長の9インチ・タッチパネル式ディスプレイや、全面液晶パネルとしてメーター回りが先進性を感じさせる。多くの操作をタッチパネルに集約させることで、物理的なボタンを思い切って削減させたのだ。こうした動きは、ライバルに先駆けての決断であり、そうした点から見れば、ボルボは今、欧州プレミアムブランドの中で最も時代の先端を行っているともいえる。

また、かつては“車体が頑丈で衝突した時に強い”と評された安全性も、最近は自動ブレーキを始めとする先進安全技術の積極採用で“事故が起きた時に心強い”から“事故を起こさない”方向へと大きくシフト。今回採り上げるV60も、世界最高峰の技術を誇る衝突防止機能を全グレードに標準装備している。実はライバルの中には、先進安全装備をオプションとするモデルもあるが、V60は価格上昇に臆することなく、全グレードへの標準装備にこだわっている。
■内装の雰囲気と乗り味だけで欲しくなるモメンタム

V60には、上級の「インスクリプション」と、今回採り上げるベーシックなモメンタムというふたつのグレードが設定されている。とはいえ両グレードの装備差は、シート生地などのインテリア素材、前席のヒーター&ベンチレーションと電動調整機能、オーディオ、エアコンの制御方法(インスクリプションは4ゾーン式で、モメンタムは2ゾーン式)、タイヤサイズ(インスクリプションは1インチ大きな18インチ)、そしてエクステリアの仕上げ程度。ベーシックグレードとはいえ、モメンタムの装備内容は一般的に“フル装備”と呼べる水準にある。

そんなエントリーグレードを積極的に選びたい理由とは何か? 第一にモメンタムは、インテリアがオシャレだ。2タイプ選べる標準内装のうち、“City Weave(シティウィーブ)”と呼ばれるコーディネートで採用されるシート生地は、T-Tec/テキスタイルというコンビネーションタイプで、中央部には上質なチェック柄の生地をあしらう。その独特の暖かみは、古き良き時代のヨーロッパ車を想起させ、ドアを開けた瞬間、思わずニヤリとしそうになるほどだ。

座ってみると、レザーシートとは異なる、柔らかい表皮がカラダにしっとりと馴染む感覚が心地いい。中には「ボルボはやっぱりレザー内装でしょ」という人もいるだろうが、このコーディネートと座り心地なら、革じゃなくても十分。いやむしろ、レザーではなくCity Weaveを選びたい人は多いはずだ。ちなみにCity Weaveは、インスクリプションでは選べないモメンタム専用のコーディネート。このインテリアのためだけにモメンタムを選びたくなる、といっても過言ではない。

エントリーグレードを積極的に選びたい第二の理由は、モメンタムの乗り味。乗り心地が優しく、懐かしい雰囲気を感じられる走りなのだ。

インスクリプションの場合、クルマの挙動がしっかりしていて、しかもハンドルを切ればキビキビと向きを変える。車体の緻密な作りや機敏な動きを実感でき、いかにもイマドキの出来のいいクルマ、といった印象。その気持ちいい走りは、まるでドイツ車のようである。

対するモメンタムの走りは、穏やかでフラットライド感が強く、何より乗り心地の良さに感動する。その秘密はタイヤだ。インスクリプションのタイヤサイズは18インチだが、モメンタムのそれは17インチ。タイヤの側面が厚い分だけ、路面の凹凸をしっかりタイヤが吸収してくれるため、走りがしなやかで乗り心地が優しいのだ。

モメンタムを走らせていると「昔のボルボ車ってこうだったよね」と懐かしい気持ちになる。ハンドリングが穏やかで抜群に乗り心地が良く、ロングドライブでも疲れない…。そんな古き良き時代のボルボ車のテイストが、モメンタムからは感じられるのだ。

かつての「V70」のように、移動時のリラックスを重視し、乗員をゆったり包んでくれる乗り味も、あえてモメンタムを選びたくなる理由といえる。
■キーレスエントリーが付かないのが玉に瑕

インテリアの仕立てや乗り味に加え、もうひとつモメンタムを推したい大きなポイントが価格設定。2リッターのガソリンターボを搭載する「T5 インスクリプション」は614万円だが、同じエンジンを積む「T5 モメンタム」は514万円と100万円も安い。同様に、プラグインハイブリッド車の「T6 ツインエンジン AWD インスクリプション」は779万円なのに対し、「T6 ツインエンジン AWD モメンタム」は674万円と、こちらも100万円ほどの価格差がある。

ただひとつ残念なのは、モメンタムのCity Weave仕様には、キーに触れることなくドアロックの施錠と解錠が行える“キーレスエントリー”が装着されない。これは、イマドキ当たり前、かつ、一度使うと手放せない便利装備だけに、これまで装着車に乗っていた人なら、特に気になることだろう。

とはいえモメンタムも、オプションの“レザー・パッケージ”を選べばキーレスエントリーが付いてくる。しかしその場合、モメンタム最大の魅力といってもいい“あのシート”を選べなくなってしまう。これこそが、モメンタムのなんとも悩ましいところ。City Weave仕様にもキーレスエントリーを単体で装着できるとうれしいのだが…。

しかし、それでもなお、オシャレなコーディネートとボルボ車らしい乗り味を兼備したV60 モメンタムは、魅力的な選択肢だ。ある意味、従来のボルボ車のテイストをしっかりと受け継ぐ“ボルボらしいボルボ”といっても過言ではない。安いから選ぶのではなく、欲しいからあえてボトムグレードを選ぶ…。モメンタムは「どうせベーシックグレードでしょ」なんていわず、真っ先に検討したい1台だ。

<SPECIFICATIONS>
☆T5 モメンタム
ボディサイズ:L4760×W1850×H1435mm
車重:1700kg
駆動方式:FF
エンジン:1968cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:254馬力/5500回転
最大トルク:35.7kgf-m/1500〜4800回転
価格:514万円

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文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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