高回転域では性格が一変!ヤマハ「MT-07」はフレンドリーに見えて相当速い

高回転域では性格が一変!ヤマハ「MT-07」はフレンドリーに見えて相当速い

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今やヤマハのバイク・ラインナップの中核を担う存在となった「MT」シリーズ。押し出しの強いルックスとアップライトなライディングポジション、そして、見た目に違わぬ高い運動性能が人気の理由といえるでしょう。

リッタークラスの「MT-10」から、845ccの3気筒エンジンを搭載する「MT-09」、250ccクラスの「MT-25」まで幅広いラインナップをそろえるMTシリーズですが、今回紹介するのは、688ccの2気筒エンジンを搭載した「MT-07」。少し地味な存在に思えますが、実はこれが“隠れた名車”と呼びたいくらい、魅力的なモデルだったのです。

■リーズナブルな価格と軽快な乗り味が魅力

初代のMT-07が発売されたのは、2014年8月のこと。現在のMTシリーズ隆盛のきっかけとなったMT-09の発売から、わずか4カ月後のことでした。MT-09のインパクトが強かったことから、排気量の近い弟分が登場したことは、ちょっとした驚きでした。やや地味なキャラクターのMT-07は、販売面で苦戦するのでは? と思われましたが、意外なことに、MT-07も好調なセールスを記録します。高価格化が続く大型バイクの中にあって、70万円をギリギリ切る価格設定も大きな理由のひとつですが、走行性能面においても、確固たる人気を得る理由があったのです。

110馬力を発生し、後に「NIKEN」を始めとする多くのヤマハ製バイクに搭載されることになる3気筒エンジン搭載のMT-09に対し、MT-07に積まれる2気筒エンジンの最高出力は73馬力。スペック的には見劣りしますが、このエンジンには数値では測れない魅力が備わっていました。スリムな2気筒エンジンをしなやかなフレームに搭載することで、軽快な乗り味を生み出していたのです。

兄貴分ほどのインパクトはなかったものの、MT-07は堅調に人気を集め、2018年にはサスペンションなどを刷新するマイナーチェンジを受けました。

今回試乗したのは、2019年に追加された“バーミリオン”と呼ばれる色鮮やかなホイールを装備したモデル。ただし、ライトのデザインなどはMT-09ほど先鋭的ではないため、オトナが乗っても目立ちすぎない安心感があります。

またがってみると、2気筒エンジンのため車体がスリムで、サスペンションも沈み込むため足つき性は良好。身長175cmの筆者の場合、両足のカカトまで接地するくらいです。アップタイプのハンドルを採用するため、ライディングポジションは上体が起きたリラックスした姿勢となります。

MT-09との違いは着座位置で、タンクが短く前の方に座るMT-09に対し、MT-07はタンクが少し長めで、座る位置も一般的なロードスポーツに慣れた人に馴染みやすい位置となります。
■フレンドリーながらパワフルさも併せ持つ

エンジンをかけて走り出すと、MT-07が多くのユーザーに支持されている理由が垣間見えます。2気筒エンジンのクランク角は270度とされていて、低回転域から粘るようなトルクを発生。183kgと同クラスとしては軽い車体と相まって、加速は俊敏です。しかし、ドンッと車体が前へ出すぎてしまうようなことはなく、とても扱いやすいのが美点。よく動くサスペンションとの相乗効果で、走り出した直後からカラダに馴染んでくるフレンドリーさを感じます。

より排気量の大きいMT-10やMT-09はもちろん、小排気量のMT-25や「MT-03」も、今や剛性の高い倒立タイプのフロントフォークを装備していますが、MT-07のそれは41mm径の正立式。2018年のマイナーチェンジで減衰力が見直され、やや引き締まった味つけとなりましたが、それでも硬すぎることはなく、しなやかに動いてくれます。こうした足の特性が、乗りやすさにつながっている印象です。

街中の狭い交差点でも扱いやすく、気負わずに走ることができました。また、車体がスリムかつ軽量なので、ワインディングでの倒し込みは俊敏で、コーナーリングが相当楽しく感じられます。ヒラヒラと切り返しながら峠道を駆け抜けるのは、まさに至福の時間でした。

街中では、乗りやすさの面がクローズアップされがちですが、少し広い道路へ出て大きめにアクセルを開けると、MT-07のもうひとつの魅力が顔を出します。エンジンの回転数が4000回転を超えた辺りから、それまでの穏やかさがウソのような強烈な加速を味わえるのです。MTシリーズはスロットル操作に対してリニアなトルクを提供する“クロスプレーン・コンセプト”がひとつの個性となっていますが、MT-07にもそれがしっかり受け継がれています。これだけパワーに余裕があると、高速道路の巡航もラクにこなせますね。

近年のスポーツバイクでは一般的な装備となりつつある走行モードの切り替え機能などは搭載されていませんが、穏やかに走ることも、過激な加速感を味わうこともライダーのスロットル操作次第というのは、MT-07ならではの面白さ。トラクションコントロールなどの電子制御も非搭載ですが、それでも不安を感じさせる場面がないのは、ライダーが挙動をしっかり感じてコントロールできるという、基本設計の良さがあるからでしょう。コーナーリングは軽快ですが、高速コーナーではピシッと安定しているなど、そのポテンシャルの高さが伝わってきます。

スペックだけを見ると突出したところのないMT-07ですが、実際に乗ってみると、初心者からベテランライダーまで幅広い層に支持される理由がうかがえました。270度クランクのエンジンは豊かな表情を持つトルク感で、飽きのこない味わいがあるもの。軽量で素直な挙動の車体と相まって、ライダーの意思で自在に操れるのも美点です。初心者やリターンライダーにとっては扱いやすく、それでいて腕のあるライダーが乗れば相当なペースでワインディングを駆け抜けることもたやすい。MTシリーズの次男は、そんな懐の深いバイクでした。

<SPECIFICATIONS>
☆MT-07 ABS
ボディサイズ:L2085×W745×H1090mm
車両重量:183s
エンジン:688cc 水冷2気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:73馬力/9000回転
最大トルク:6.9kgf-m/6500回転
価格:79万1000円

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文&写真/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

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