加速するボルボの“電動化戦略”!電気だけでも走る「XC40」は乗り味が滑らか

加速するボルボの“電動化戦略”!電気だけでも走る「XC40」は乗り味が滑らか

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2025年までに、世界販売台数の50%をEV(電気自動車)に、残りをハイブリッドカーにすることを目標に掲げるボルボ。ここに紹介する「XC40 リチャージ プラグインハイブリッド T5」は、同社の積極的な“電動化戦略”の下に誕生したPHEV(プラグインハイブリッドカー)だ。

これまでのボルボ製PHEVとは全く異なる、新たなメカを採用した注目モデルの実力を検証する。

■日本で販売されるすべてのボルボが電動車に

ボルボといえば、“安全なクルマ”というイメージを抱く人が多いのではないか? 確かに、北欧のスウェーデンを拠点とするボルボは、古くから安全性の向上に力を入れてきた。頑丈な車体で万一の事故の際も乗員を守る、というかつての広告は多くの人にインパクトを与えたし、使いやすく効果的な3点式シートベルトを発明して自社のモデルに採用するだけでなく、その特許技術を他メーカーにも無償提供。さらには、1970年代から安全性向上に役立てるべく集めていた、実際の事故のデータを公開するなど、広い視野に立ってクルマの安全性向上に寄与してきた。

その背景にあるのは、交通事故の発生件数ゼロを目指し、事故によって命を落とす人をひとりでも減らしたいというボルボの強い願いがある。さらに昨今は、衝突被害軽減ブレーキに代表される先進安全技術の分野においても、ボルボのデバイスは世界トップクラスの性能を獲得している。

そんなボルボが、このところ力を注いでいるもうひとつのテーマが、パワーユニットのクリーン化による環境対策だ。先日、ボルボの日本法人は、日本国内で販売するSUVの全ラインナップを電動化したと発表した。ここでいう電動化とは、EVはもちろんのこと、駆動力としてモーターを活用する車両を含んでいる。つまり、EV、PHEV、そしてハイブリッドまでが対象となる。このうちPHEVは、エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドカーの一種であり、外部から充電できる大容量バッテリーを搭載し、一定の距離であればエンジンを掛けず、モーターだけでEVのように走れるのが特徴だ。

ちなみに日本は、トヨタ「プリウス」を始めとする分かりやすいハイブリッドカーはもちろん、軽自動車でも多くのモデルがエンジンにモーターを組み込んでいるなど、ハイブリッドカーが多く走っていて、世界的に見ても電動化車両の比率が高い。その狙いは、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出量を減らすことが第一だが、実はユーザーにとっても、燃費向上というメリットが得られる。

ボルボは今後も、EVやPHEVのラインナップ拡充を図るとともに、2020年中には日本で発売するエンジン車をすべて、小型モーターを組み込んだマイルドハイブリッドカーにスイッチすると宣言。同時にPHEVの名称を、これまでの「Twin Engine(ツインエンジン)」から再充電を意味する「Recharge(リチャージ)」へと改める。そんなリチャージモデルの第1弾として登場したのが、ここに紹介するXC40 リチャージ プラグインハイブリッド T5なのだ。
■日常的なシーンはモーター走行だけでカバー可能

XC40といえば、2018年春に日本での販売が始まったコンパクトSUVであり、今、日本市場で最も売れているボルボ車だ。ガチンコのライバルはメルセデス・ベンツの「GLA」やBMWの「X1」、アウディ「Q3」で、4425mmでいう全長は日本車のホンダ「ヴェゼル」よりやや大きく、マツダ「CX-30」に近い。コンパクトといっても少し大きめで、かつ大きすぎない絶妙なサイズだ。

そんなXC40のPHEVを語る上で外せないのが、そのポジショニングだ。従来ボルボは、「XC90」や「XC60」といった大きなSUVや、「V90」や「V60」といったステーションワゴン、そして「S60」というミッドサイズセダンにPHEVを設定してきたが、今回のXC40は初のコンパクトモデルとなる。

その上、PHEVの機構自体も、これまでのものとは大きく異なる。従来、ボルボのPHEVは、ターボとスーパーチャージャーというふたつの過給器を備えた、各モデルで最もパワフルなエンジンをベースとしていて、環境性能の高さはもちろんのこと、刺激的な速さもウリとしていた。

しかし、XC40のそれは、1.5リッターという小排気量の3気筒エンジンをターボチャージャーのみで過給。パワフルさよりも効率を重視したシステムで、ボルボのPHEVとしては新潮流となる。一方、効率重視とはいいながら、モーターは81.6馬力(60kW)/16.32kgf-m(160Nm)と力強く、モーターだけでの最高速度も135km/hに達する。つまり、日本の法定速度を超える領域まで、エンジンを掛けずに走れるのだ。

ちなみに、搭載されるバッテリーの容量は10.91kWhで、200Vの普通充電でも3時間ほどでフルチャージ可能。また、エンジンを掛けずにモーターだけで走れる距離はカタログ値で41kmに達する(速度域の低い街中だけでの走行ではさらに距離が伸びるはず)。これだけ走れれば、通勤など日常的な使用シーンにおいては、すべての移動距離をモーターだけでカバーできる人も多いはず。もちろんピュアEVとは異なり、充電しなくてもガソリンを給油すればどこまででも走り続けられることはいうまでもない。
■伸びやか&シャープで、しかも滑らかな加速感

そんなXC40 リチャージ プラグインハイブリッド T5に触れてみて、まずは実用性の高さに感心させられた。どの方向から衝突されてもバッテリーに被害が及ぶのを防ぐべく、走行用バッテリーをセンターコンソール部に収めるというボルボ独自のレイアウトにより、PHEVでありながら居住スペースやラゲッジスペースといったパッケージングへの影響は一切なし。強いてデメリットを挙げれば、センターコンソールボックスの容量が減っているくらいだ。

スタイリングも、普通のXC40との差異が小さい。助手席側のフロントフェンダーに走行用バッテリーの充電口が備わることと、リアピラーなどに“RECHARGE”のロゴが加わる程度となる。

乗り味については、普通のXC40と比べて“大きく異なる部分”と“変わっていない部分”とが混在しているが、結論からいえば、それぞれが素晴らしいものだと感じた。

まず、大きく異なる部分はその加速フィールだ。エンジンとモーターをバランスよく使い分ける走行モード「ハイブリッド」は、このモデルの標準状態といえるが、それでもモーターのアシスト感が強い。

アクセル操作に対する加速フィールは伸びやか、かつシャープで、モーターを組み合わせたパワーユニットならではの滑らかさも感じられる。スーッと滑走しているようで、気がつくと車速がスルスルと伸びている印象で、エンジンの存在を感じさせない。それはまるでEVのような感覚で、予想外に心地いいものだった。エコ云々は抜きにして、この加速フィールだけでもPHEV仕様を選ぶ価値がある。

一方、普通のXC40と比べて変わっていない部分は、乗り心地や操縦性の良さだ。中でも感心させられたのは、道路の段差を超えた時の衝撃のいなし方。重く乗り心地に不利な19インチタイヤを履いているにもかかわらず、直接的な衝撃を乗員に伝えることなく、まるで魔法のジュータンに乗っているのではないかと勘違いするほど、乗り心地が極上だ。

その上、モーター走行時はもちろん、エンジンが始動しても静粛性が高く、メーターを見ていないとエンジンが掛かったことに気づかないほど。パワートレーン、乗り心地、ハンドリングのすべてがスムーズな上に、ハイブリッドカーでは味つけが難しいとされるブレーキのフィーリングにも違和感がない。その完成度の高さは驚くべきレベルにある。XC40 リチャージ プラグインハイブリッド T5は、走りの滑らかさと心地良さで選びたくなるクルマだ。

このように、魅力満載のXC40 リチャージ プラグインハイブリッド T5だが、やはり気になるのはその価格だ。649万円というプライスタグは、装備レベルがほぼ同じ、かつ高出力のマイルドハイブリッドを搭載する「B5 AWD Rデザイン」と比べて60万円高い。しかし、エコカー減税や環境性能割といった税金面での負担軽減や、次世代エネルギー車向けの補助金などを活用すると、実質的な差額は約16万円にまで縮まる。そう考えれば、さほど割高には感じられないのも事実である(ちなみに、PHEVの駆動方式はFFで、B5 AWD Rデザインは4WDだが、前者には本革シートやガラスサンルーフなどが標準装備となる)。

それにしても、ボディサイズの大小こそあるものの、決して巨大企業とはいえないボルボが複数のPHEVシステムをラインナップするのはすごいことだ。その中でも、ボルボが描く未来のクルマ社会に向け、電動車両の販売数アップに大きく貢献するであろうXC40 リチャージ プラグインハイブリッド T5の果たす役割は、非常に大きいものがある。

<SPECIFICATIONS>
☆リチャージ プラグインハイブリッド T5 インスクリプション
ボディサイズ:L4425×W1875×H1660mm
車重:1810kg
駆動方式:FF
エンジン:1476cc 直列3気筒 DOHC ターボ + モーター
トランスミッション:7速AT(デュアルクラッチ式)
エンジン最高出力:180馬力/5800回転
エンジン最大トルク:27.0kgf-m/1500〜3000回転
モーター最高出力:81.6馬力/4000〜1万1500回転
モーター最大トルク:16.32kgf-m/0〜3000回転
価格:649万円

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文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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