世界に胸張って「どうだ!」といいたい!!2020年の日本車は大豊作☆岡崎五朗の眼

世界に胸張って「どうだ!」といいたい!!2020年の日本車は大豊作☆岡崎五朗の眼

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2020年も間もなく終わり。改めて2020年の日本車事情を振り返ると、コロナ禍で各社の経営状況は芳しくなかったものの、プロダクト自体はいずれも力作ぞろい。輸入車に負けない魅力と実力を備えた注目モデルが多数登場しました。

そこで今回は、モータージャーナリストの岡崎五朗さんが2020年に登場した日本車の中から5台の秀作をリストアップ。それぞれの魅力と実力を分析しながら、“ビンテージイヤー”となった日本車の2020年を振り返ります。

■逆風の中でも魅力ある商品で好決算を記録するトヨタ

2020年は忘れられない年になった。4月7日から5月24日までの5週間にわたる緊急事態宣言。家からほとんど出ない日が2カ月近くも続くなんて経験はこれまでしたことがなかったし、今後もないだろう(あって欲しくない)。

その後定着したオンラインミーティングや在宅勤務など、コロナ渦は我々の生活スタイルをも一変させた。もちろん、経済も大打撃を被った。2021年は失業者がもっと増えるかもしれない。

そんな中、ひと筋の光明となったのがトヨタ自動車の好決算だ。世界中でヒト、モノ、カネの動きが滞る中、トヨタは8月の第1四半期決算発表会で「通期5000億円の黒字予測」を出した。先行きが不透明な中、強気ともいえる利益予想を出した背景には「従業員や部品メーカー、引いては日本を元気にしたい」という、豊田章男社長の思いがあったわけだが、その思いとは裏腹に翌日の新聞を飾ったのは「トヨタ利益8割減」という見出し。発表された数字を前年の数字と比較して8割減と書くなど中学生にもできるわけで…。ちなみにその後、トヨタは第2四半期決算で通年の利益見通しを1兆3000億円に上方修正している。

厳しい経営環境の中、トヨタが業績を急回復させた背景にあるのは販売台数の急回復だ。6月に発売された「ハリアー」は最初の1カ月で4万5000台という空前の受注を獲得。2月発売の「ヤリス」、8月発売の「ヤリスクロス」も好調だ。これが何を意味するかといえば、コロナ渦においても商品が魅力的なら買ってくれる人は確実に存在するということだ。

その観点でも、2020年は日本車にとって大きな意味を持つ1年だった。バブル経済末期の1989年、日本は多くの名車を輩出した。トヨタの初代「セルシオ」、ホンダの初代「NSX」、日産自動車のR32型「GT-R」、マツダの「ユーノスロードスター」、そしてスバルの初代「レガシィ」…。まさにすごい顔ぶれであり、89年を境に日本車は、ハード、ソフトの両面において世界をリードする立場になった…はずだった。しかしその勢いは長くは続かず、バブル崩壊やリーマンショックによって、日本車は“安くて燃費が良くて信頼性に優れたクルマ”という従来の居場所に戻ってしまったのだ。

しかし、2020年に登場した日本車たちは、再び日本が世界をリードする立場に戻りつつあることを強く示唆している。ここから先は、2020年に登場したモデルの中から、特に印象的な秀作5台をリストアップし、その実力や魅力について解説したい。
■スバル「レヴォーグ」

まずは、2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤーに輝いたスバルのレヴォーグから。元々評価の高かった“スバルグローバルプラットフォーム”をベースにフルインナーフレーム構造とすることで、人間でいえば“体幹”に当たるボディ剛性が大幅に向上した。さらにスバルの伝統的なクルマ作りである徹底的な走り込みによって、人間の感性に完璧に寄り添う気持ちのいい運転感覚と高い安心感を実現している。

実際にドライブしてみれば、思い通りにクルマが動くことの重要さをはっきりと体感できるだろう。さらに、条件付きハンズオフ機能を備えた先進運転支援技術“アイサイトX”を、実質12万円ほどで提供してきたことも見逃せない。
■トヨタ「ヤリス」

「ヴィッツ」からヤリスへと車名を変えたが、変わったのは名前だけじゃない。これまでのヴィッツは欧州のコンパクトカーとは似て非なるものだった。直進安定性は甘く、コーナリングは不安定で、走る楽しさも感じなかった。いわば「安くて燃費が良くて信頼性が高い(だけ)」という、典型的な日本流クルマ作りの産物だったのだ。

しかし、ヤリスになって様相は一変した。高い剛性と軽さを両立した新プラットフォームは走行性能の大幅な底上げに成功。ハイブリッドモデルの最高36km/L(カタログ記載のWLTCモード)という驚きの燃費も注目だ。

ちなみにこの燃費は、2021年に施行される欧州の厳しい燃費規制を余裕でクリアし、なんと2030年規制値にも迫る数値。ある意味、EV(電気自動車)いらずの超環境車である。
■トヨタ「GRヤリス」

WRC(世界ラリー選手権)で勝つために開発された特別なモデルがGRヤリスだ。ボディは空力性能をとことん追求した専用の3ドアタイプ。1.6リッターで272馬力/37.7kgf-mというパワースペックを生みだす強力な3気筒ターボエンジンも専用設計だ。

そのドライブフィールは、まさに正真正銘のスポーツカー。中には、車高が低くなければスポーツカーとはいえない、という意見もあるだろうが、街中を流しているだけでも明確に伝わってくる本物感は尋常ではない。鋼鉄の塊のようなボディの剛性感、ステアリングから伝わってくるリアルな手応え、3気筒特有のビート感を伴いつつトップエンドまで気持ち良く回るエンジン、そして、追い込んでいった時の強烈なトラクションとコーナリング性能は、まさにスポーツカーと称するに値する。

また、このクルマを生み出す“GRファクトリー”は、匠のワザによる高精度生産を低コストで実現する革命的な“セル生産システム”を採用している。クルマ単体としての性能だけでなく、生産方式を含めた取り組みは、今後世界の自動車産業に大きな影響を与えるだろう。
■トヨタ「ミライ」

2世代目へと進化したFCV(水素燃料電池車)、ミライの最大の注目点はデザインと走り味だ。850kmへと伸びた航続距離も重要な進化点だが、それ以上に、FCVである以前にクルマとして魅力的であることが、初代との一番の違いである。現状、FCVを量産しているのはトヨタ、ホンダ、ヒュンダイ、メルセデス・ベンツの4社だけだが、ホンダはリース販売のみだし、メルセデスは乗用FCVからの撤退を決めている。つまり、国内では実質ミライのみ。グローバルでもヒュンダイとトヨタの2社だけだ。

初代ミライは技術的には優れていたものの、奇抜なデザインは購買意欲をそそらなかったし、走らせてもそれほどの感動はなかった。しかし新型は違う。新開発の燃料電池スタックは力強い加速と素晴らしい静粛性を備え、レクサス「LS」と同じプラットフォームをおごることで、流麗なスタイルとLSをもしのぐ乗り心地、ハンドリングを実現している。

「FCVだから欲しいのではなく、たまたま欲しいクルマがFCVだったといってもらえるようなクルマを目指しました」と開発責任者はコメントしているが、新型ミライはまさにその通りのクルマに仕上がっている。日本だけでなく、世界で最も性能が高く、魅力的で、かつ販売台数の多いFCVになるのは間違いない。
■日産「ノート」

EVの「リーフ」をいち早く発売した日産自動車だが、その拡販では苦戦を強いられている。その要因が、短い航続距離と長い充電時間、そして価格の高さだ。搭載バッテリー量を徐々に増やしてきてはいるものの、バッテリー価格はさほど下がらず(バッテリーコストの3分の2は原材料費だからコスト削減は難しい)、価格は332万6000円〜499万8000円と、ガソリン車はもちろんハイブリッド車と比べてもかなり高くなってしまう。また、自宅で充電できる人ならまだしも、マンションのような集合住宅住まいの人はなかなか手を出しにくいだろう。

そんな中、リーフで培った技術を活かす道を模索していた日産のトライが“e-POWER”というシリーズハイブリッドシステムだ。先代ノートで大ヒットしたe-POWERは改良を受けつつ「セレナ」や「キックス」にも搭載されたわけだが、新型ノートが積む最新の第2世代は、より高効率に、より速く、より静かになった。加えて、ルノーと共同開発した新プラットフォームは、コンパクトカー離れした上質な乗り味を実現。内外装の仕上げも先代モデルと比べて目を見張るほど向上している。

新型ノートは、ヤリスやホンダ「フィット」を明らかにリードした、というのが僕の評価。つまり、世界に胸を張って「どうだ!」といえるモデルである。
* * *
1989年以来となる日本車のビンテージイヤーとなった2020年。トヨタの「プリウス」、「ランドクルーザー」、「アルファード」、「86」、スバルの「BRZ」、そして日産の「アリア」、「エクストレイル」、「フェアレディZ」といった大物の登場が予想される2021年も、2020年以上に楽しみな年となりそうだ。

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文/岡崎五朗

岡崎五朗|青山学院大学 理工学部に在学していた時から執筆活動を開始。鋭い分析力を活かし、多くの雑誌やWebサイトなどで活躍中。テレビ神奈川の自動車情報番組『クルマでいこう!』のMCとしてもお馴染みだ。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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