真価は2022年に分かる!?マツダ「MX-30EVモデル」はEVらしくない乗り味が個性

真価は2022年に分かる!?マツダ「MX-30EVモデル」はEVらしくない乗り味が個性

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ついに、といっていいだろう。マツダ「MX-30」のEV(電気自動車)モデルが日本でもデビューした。

このクルマはマツダにとって大きな意味を持つ1台だ。同社にとって初となる“量産EV”にして、初めて“一般の人々に市販するEV”だからである。

■欧州規制クリアの有効手段はEVの販売増!?

マツダはかつて、3代目「デミオ」をベースにした「デミオEV」を量産し、販売した経験を持つ。しかし、その生産台数は100台程度に過ぎず、供給も広島周辺の自治体や企業に向けたリース販売に限られていた。いうなれば、一般ユーザーには縁のなかったクルマだったのだ。

しかし、今度のMX-30は違う。あくまでフツーのマツダ車という扱いで量産され、一般の人々に向けて販売される。仮に、この記事を読んで欲しくなったら、マツダのディーラーへ行けば「マツダ2」や「CX-5」と同じ感覚で購入できるのだ。日本での年間販売計画は500台とはいえ、ごくごくフツーの量産車という扱いなのである。

昨今、EV関連のニュースが各種メディアをにぎわせているが、ここへ来て多くの自動車メーカーがEVの開発や販売に注力し始めたのには、ふたつの理由がある。

ひとつは企業イメージだ。昨今は「EVはクリーンで地球環境に優しく、商品ラインナップに加えているメーカーは環境に配慮していて、発売していないメーカーは後れを取っている」というイメージが強まりつつある。これは必ずしも正確な認識とはいえないが、人々がEVに対してそういった印象を抱いていることもまた否定できない。自動車メーカーにとってイメージ戦略はやはり重要なため、今ではEVを避けて通れない状況になっている。

もうひとつの理由は、燃費規制への対応だ。正確には、燃費規制ではなく“地球温暖化を防ぐべく、走行中の二酸化炭素排出量を抑制する”ということなのだが、結果的には同じこと。特にヨーロッパでは厳しい目標が定められていて、EU(欧州連合)が2020年から2021年にかけて段階的に導入した二酸化炭素排出量規制をクリアできないメーカーには、信じられないほど高額な罰金が科せられる(2020年に規制を達成できなかったフォルクスワーゲングループは、200億円弱の罰金を科せられるという)。

この規制をクリアするにはメーカー全体の平均燃費を高める必要があるが、その対策として効果的なのが、EVの販売台数増。ここへ来て、欧州の自動車メーカーからEVの発表・発売が相次いでいるのには、そうした背景があるのだ。

ただし、地球温暖化と二酸化炭素の関連は科学的に解明されているわけではなく、現状では“その可能性もある”といった程度に過ぎない。また余談だが、トヨタは欧州でEVを販売していないものの、ハイブリッド車のラインナップが多いおかげで、現時点ですでに同基準をクリア。罰金は科せられていない。
■マイルドハイブリッド仕様との差別化が希薄なEV版

こうした流れの中、しばらくはエンジンにこだわる姿勢を見せていたマツダも、EV販売を避けて通れなかったようだ。日本では、ガソリンエンジンを軸とするマイルドハイブリッド車として販売がスタートしたMX-30だが、実はヨーロッパではEV専用車種と位置づけられている。つまり車両開発も、EV前提で行われているのだ。

MX-30 EVモデルは、「マツダ3」や「CX-30」と同じタイプのプラットフォームを使っているが、EVモデルは床下にバッテリーを搭載するため、フロアなどの構造が変更されている。しかし、見た目におけるマイルドハイブリッド仕様との違いは、驚くほど少ない。外観では、運転席側のリアフェンダーに充電口(のリッド)が設けられていることと、後席脇のウインドウに「ELECTRIC」という小さなステッカーが張られていること、そして、リアゲートの端に「e-SKYACTIV(イー・スカイアクティブ)」という、これまた小さくさり気ないエンブレムが貼付されている程度だ。

クルマにはちょっと詳しいと自負する筆者も、10m離れた場所から見て、瞬時にEVモデルとマイルドハイブリッド仕様とを見分けられる自信がないほどだ。

車内に乗り込んでも、メーターパネルがEV専用となっているため、ドライバーならマイルドハイブリッド仕様との違いに気づくだろう。しかし、そのほかの操作系は特に大きな違いがないため(マイルドハイブリッド仕様に備わるシフトレバー脇の走行モード切り替えスイッチがないのと、エアコンが左右独立温度調整式ではない程度)、同乗者は違いに気づかないかもしれない。

パッケージング面におけるマイルドハイブリッド仕様との違いは、走行用バッテリーを搭載すべくリアシート足下の床が少し高くなり、後席に乗る乗員の乗車姿勢が変化しているのと、EVに関わる補機類を配置するため、荷室がわずかに狭くなった程度。とはいえそれらの違いも、試乗後にエンジニアから聞いて知ったほどで、実車に触れた時点では全く意識させられることはなかった。つまり気になるレベルではない。

ただし、マイルドハイブリッドモデル仕様のエアコンが左右独立温度調整式だと知っていたこともあり、EVでは左右共通となっているのが少々残念に感じた。EVモデルのエアコンユニット自体が専用構造だから、という事情があったようだが、そこだけは今後の進化を望みたいところだ。
■ロータリーエンジン車とEVの真ん中くらいの加速感

MX-30 EVモデルで走ってみての感想は「EVなのに、なんだかEVっぽくないなぁ」というものに尽きる。

EVなのにEVらしくない、なんて変な話だが、EVのドライブフィールといえば、アクセルペダルを踏み込むと間髪入れずにモーターが反応して急激に駆動力が立ち上がり、鋭い加速Gが発生させながらシャープに速度が高まっていく、というのが定番。それが、EVの気持ち良さに直結している。

しかし、MX-30のEVモデルは違う。アクセルペダルを踏み込んでも急激に加速力が立ち上がることなく、一瞬のタメがあった後、エンジンが高回転域まで回っていく時のように加速力が盛り上がっていく感じなのだ。もちろん、単純にパワーが足りないという話ではない。しかし、キレキレのシャープさこそEVの加速だと思っていたら、それとは違う味つけだったことに驚いた。

なんだかエンジン車っぽい感覚。これがマツダ流EVの演出なのか?…と思っていたら、どうもそうではないらしい。乗り味のチューニングを行った開発担当者はこう語る。「実はEVは、トルクがゼロの付近が苦手なんです。エンジンのようにファジーな部分が少なく、ちょっとアクセルペダルを踏んだだけでグッと加速してしまい、逆にアクセルペダルを離すと急激に減速するので、その切り替えの制御が難しいんです。なので、その辺の滑らかさを徹底的に追求しました。EVだから、というよりも、内燃機関のモデルを含め、マツダ車が求める走りの理想に近づけたのです」

いずれにせよ、マツダ製EVの加速フィールは、世間一般的なEVのそれとはちょっと違う。独特の乗り味だ。開発者は「目指したのはそこではない」とはいうものの、やはりエンジン車っぽさを感じられるし、感覚的には、ロータリーエンジン車とEVの真ん中くらいと思える加速感だ。ある意味、ロータリーエンジン好きにこそ味わって欲しいEVだと思う。分かりやすいシャープさこそないけれど、普通のEVより味わい深い加速フィールであることは断言できる。
■発電用ロータリーを積んだモーター駆動車が出る

ところで、EVといえば避けて通れないのが航続距離だ。この話題になると、MX-30のEVモデルはちょっと分が悪い。1充電当たりの走行可能距離が、カタログ記載のWLTCモード計測で256qと、決して長いとはいえないからだ。これは「ホンダe」の上級グレードとほぼ同じだが、量産EVのパイオニアといえる日産「リーフ」が通常モデルで322q、大容量バッテリー仕様で458kmをマークするのと比べると、心もとない。

すなわちMX-30のEVモデルは、ロングドライブは得意ではなく、都市内や近距離の移動を中心に考えたモデルといえる。とはいえ、ホンダeや三菱「アイミーヴ」のようなコンパクトEVや軽自動車EVならともかく、MX-30ほどの車格で“シティコミューター”といわれても、ピンとこないというのが正直な気持ちだ。

一方、マツダの考え方も理解できなくはない。バッテリーの製造から廃棄までを考えると、大容量バッテリーを使うのは環境に優しくない、という考えだ。その計算は正しく、まさに正論だろう。しかし、正論をベースにEVの理想を追求したモデルと、その商品力の高さがイコールになるかといえば、そうとはいえないのもまた現実。「多くの人が、日常的に1日200kmも走らない」とはいえ、年に何度か遠出することを考えた場合、航続距離が短いEVを購入するハードルは、必然的に高くなることは否定できない。逆にいえば、ロングドライブに使える別のクルマを所有しているか、レンタカーを利用する心つもりがあれば全く気にする必要はないことだが…。

ただし、こうした航続距離に関する課題も、今後のMX-30のラインナップ展開を知ると評価が一変する。MX-30 EVモデルのボンネットフードを開けると、そこに大きな空間が存在することに驚かされるが、何を隠そう、ここにロータリーエンジンを積んだモデルが2022年に登場予定なのだ。

それがハイブリッド車となるのか、それとも、プラグインハイブリッド車になるのか、はたまた、発電用エンジンによって航続距離を伸ばすレンジエクステンダーEVになるかは不明だが、発電専用のロータリーエンジンを組み合わせ、モーターで駆動するモデルとされている。

エンジンを搭載することでピュアEVではなくなるものの、航続距離が伸び、ロングドライブも可能になる。つまり「長い航続距離を求めるなら、そちらを選んで」というのがマツダの考え方なのだ。

そのクルマが世に出た時に初めて、MX-30 EVモデルの正しい評価ができるかもしれない…。ロータリーエンジンのような息吹を感じさせるEVをドライブしながら、そんなことを考えた。

<SPECIFICATIONS>
☆ハイエスト セット
ボディサイズ:L4395×W1795×H1565mm
車重:1650kg
駆動方式:FWD
最高出力:145馬力/4500〜1万1000回転
最大トルク:27.5kgf-m/0〜3243回転
価格:495万円

>>マツダ「MX-30 EVモデル」

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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