日本が報じない“安田純平さん解放の裏”をシリア人ジャーナリストが暴露! カタールは資金出さず「解放命令」のみ!?(インタビュー)

安田純平さん解放の真相にシリア人記者が言及 カタールが資金を出さず『解放命令』か

記事まとめ

  • 安田純平さん解放について、シリア人記者が日本の報道は間違いばかりと指摘している
  • カタールは身代金を支払っておらず、命令を出すだけで解放させることができたらしい
  • サウジアラビア記者の殺害事件に乗じ、カタールが人道的だとPRした可能性があるという

日本が報じない“安田純平さん解放の裏”をシリア人ジャーナリストが暴露! カタールは資金出さず「解放命令」のみ!?(インタビュー)

日本が報じない“安田純平さん解放の裏”をシリア人ジャーナリストが暴露! カタールは資金出さず「解放命令」のみ!?(インタビュー)

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 2018年10月、シリアのヌスラ戦線に拘束されていたフリージャーナリスト安田純平さんが3年4カ月ぶりに解放された。連日さまざまな報道が飛び交っているが、現在のシリア情勢に精通し、冷静かつ中立的な観点から深層に迫る報道は少なく、まるで鬼の首を取ったかのような「自己責任論」や、憶測に基づくさまざまな陰謀論まで浮上する有様だ。

【その他の画像はコチラ→https://tocana.jp/2018/12/post_19114_entry.html】

 そこで筆者は、東京都内で先日行われたFMラジオ局の公開収録トークイベントにて、シリア人ジャーナリストであり「リサーラ・メディアプロダクション」の代表として日本や北東アジアのニュースをアラブ諸国のメディアに届け続けるナジーブ・エルカシュ氏にインタビューを敢行した。ナジーブ氏のニュース配信先は、アルアラビーヤ、クウェート国営TV、オマーン国営TV、ドバイTV、アシャルク・アルアウサト新聞など、実に多岐にわたる。また、『news zero』(日本テレビ系)をはじめ、日本のTV番組にもに積極的に出演するほか、映画祭などの教育・文化交流分野でも活躍している。

 母国のみならず世界各国の事情に通じ、かつて東京大学大学院や名古屋大学大学院に留学していたこともあるナジーブ氏は、非常に流暢な日本語で真摯にインタビューに応えてくれた。シリアの今、そして安田純平さん解放の真相とは!?


■日本のシリア報道は間違いばかり!

――よろしくお願いいたします。安田純平さんの解放について、日本メディアの報道と現地の実情に違いはありますか?

ナジーブ氏(以下、ナジーブ)  メディアによる報道は事実誤認ばかりで、違和感を覚える毎日です。日本のメディアは、右派・左派のどちらであれ中東情勢に関する固定観念があるようです。まず右派には、“イスラム恐怖症”のようなものを感じますね。イスラムといえば途端にテロリストを連想するなど、偏見があるのです。一方、左派は反米かつ親露です。現在のシリアに大きな影響を与えているのはロシアであるにもかかわらず、アメリカの空爆や干渉ばかりを報じるなど、根拠のないアメリカ陰謀論が並んでいます。たしかにアメリカもシリアを空爆していますが、それよりも酷いのはロシアなのです(※)。

※ 12月19日、米トランプ大統領はツイッターでシリアから米軍を撤退させる意向を表明している。

――安田純平さん解放に関して、彼を拘束したヌスラ戦線とアサド政権につながりはありますか?

ナジーブ  アサド政権は、以前収監されていたイスラム過激派のテロリスト約700人を解放しましたが、その中にはヌスラ戦線の指導的役割を担う人物もいたことがわかっていますので、アサド政権と一部の武装勢力はつながっているでしょう。

 2012年、シリア取材中に殺害されたジャーナリストの山本美香さん(享年45)は、おそらくアサド政権にとって都合の悪い情報を握ったことで、政権側とつながりのある武装勢力に殺害されたのだと思います。しかし、今回の安田純平さんはアサド政権寄りではなくカタール寄りの武装勢力に拘束されていたようです。

――安田さん解放の一報はカタール政府からもたらされており、カタールが身代金を支払ったことで解放された可能性が高いと報じられています。では、その理由やタイミングについて何かご存知ですか?


■カタールは救世主、だったのか!?

ナジーブ  これも日本のメディアの事実誤認です。ほとんどのメディアでカタールが身代金を支払ったことを前提に報じられていますが、そのような証拠はありません。そもそも、先程申し上げましたように、拘束したのはカタール寄りの武装勢力です。カタールの命令によって安田純平さんを拘束することも、解放させることもできたのです。

 10月2日、サウジアラビアの反体制ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏がトルコのサウジアラビア領事館内で殺害されましたよね。現在、サウジアラビアは世界中から非難を浴びています。このタイミングに乗じて、カタールは自国がサウジアラビアに比べて人道的なのだというPRをしたかった可能性はあるでしょう。

――ところで、安田さんは拘束されていた武装集団に「24時間動いてはいけない、缶詰を渡されても缶切りを使ってはいけない、水浴びをしてはいけない、足を伸ばして寝てはいけない」などの拷問は受けたものの、殴る・蹴るといった直接的暴力は受けなかったそうですね。痩せ細って白髪で帰国しても、健康状態はそれほど悪くないように見えた安田さんに対して、インターネット上では「本当に拉致されていたのか?」と疑う声まで浮上しているようです。その点についてはどう思われますか?

ナジーブ  大切な取引材料ですから、命にかかわるような暴力はふるわないのです。

 ナジーブ氏が明かしてくれた話が真実ならば、日本の報道は固定観念によって大きく歪められてしまっていると言えそうだ。無事に帰国した安田純平さんに対してバッシングが巻き起こっているが、(本人の注意力に問題はあったとしても)身を挺して取材するジャーナリストたちの存在がないと、現地の実情は理解できない部分もあるはずだ。

 同イベントを主催した映画監督・芸術家の増山れな氏も、「夫が戦場ジャーナリストなのですが、フリーのジャーナリストって取材資金も自腹で本当に大変です。それなのに批判ばかりされていて、次代を担う者がいなくなってしまうことが心配です。もっとフリーのジャーリストを応援するシステムがあってもいいのではないか」と心の内を明かした。

(取材・文=深月ユリア)


※イメージ画像は、「gettyimages」より