「笑い」の起源は「威嚇」だった!? 笑顔のウラに秘められた感情まで読み取れる人類の能力、その源泉に迫る!

「笑い」の起源は「威嚇」だった!? 笑顔のウラに秘められた感情まで読み取れる人類の能力、その源泉に迫る!

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 一般に「笑う門には福来る」「笑顔は人間関係の潤滑油」と言われる。しかし、一口に笑いと言っても、幸福に満ちた歓喜の笑いのみならず、嘲笑・失笑・苦笑などさまざまな種類があることは誰もが知っている。これだけ多種多様な笑いをもっている人間が、地球上で最も感情表現豊かな生物であることは自明の理である。しかし、そもそもなぜ我々は「笑う」ことになったのだろうか? まったく笑わない人に対して私たちが潜在的に距離を感じ、よく笑う人に親近感を感じるのはなぜなのか? 冷静に考えてみると不思議な話である。

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■サルの「笑い」から垣間見える人類の「笑い」の本質

 オランダの動物行動学者ヤン・ファン・ホーフ氏によると、「笑い」には大きく分けて2つの種類があるという。

・ Laugh(発声を伴う笑い)
・ Smile(発声を伴わず、歯を見せて微笑む笑い)

 そして、これら2種の笑いの起源は異なる。もともとLaughは、霊長類が仲間同士で遊ぶ際に口を丸く開ける和みの表情(プレイ・フェイス)と、その時に発する声が進化したものだという。一方、Smileの起源はなんとGrimaceという歯茎むき出しで相手を威嚇する歪んだ表情にあるというのだ。

 たとえば霊長類が草むらなどで突然物音を聞き取った時、「自分より強い敵ではないか」と警戒と恐怖を感じ、牙を見せて笑っているように見える表情になることがあるが、これがGrimaceである。そして、草むらから出てきたのが群れのボスだったり仲間だった場合、すぐに表情を変えることはできないのだが「あなたに敵意はありません。仲良くしましょう」という意味でGrimaceはより柔らかな表情に変わる。この、恭順の意を示すサインが長い年月をかけて進化し、人類にSmileとして受け継がれたのだという。つまり、人類のSmileの起源は「威嚇」にあったということだ。

 ニホンザルは群れの中で自分より強い者が近づくと、顔はそむけたまま、「キャッ」と叫ぶように歯茎を出す。これも、悲鳴の表情を見せることで「あなたに敵意はありません。従います」と、恭順の意を示しているのだろう。

 米カリフォルニア大学の心理学者で神経科学者、ヴィラヤヌル・S・ラマチャンドラン氏も、「笑いの表情は、威嚇の表情を緩めた形に一致している」との研究結果を発表している。恐怖をもたらす者がいないことが判明した後の、安堵に満ちた和みの表情こそがSmileなのである。

 哲学者のニーチェは「笑いとは、地球上で一番苦しんでいる動物が発明したものである」という名言を残しているが、まさにこれは的を射た指摘なのだ。人間も知能さえなければ、草むらにいるサル同様、常に自分よりも強力な存在に怯えながら生きる弱い動物だ。補食される側にとって「笑い」とは、和平をもたらす強力な防御手段、生存戦略でもあったのだ。そしてこれは、太古の昔から私たちのDNAに深く刻まれている記憶――笑いと威嚇は対称的なようでありながら表裏一体の関係、であるからこそ人間は他者の笑顔の奥に秘められた多種多様な感情まで読み取ることができるのかもしれない。

(深月ユリア)

イメージ画像:「Getty Images」より