「核廃棄物を一瞬で無害化」ノーベル賞科学者の発明はウソか、本当か!? 推進派も反対も完全に勉強不足、これを読んでから物を言え!

「核廃棄物を一瞬で無害化」ノーベル賞科学者の発明はウソか、本当か!? 推進派も反対も完全に勉強不足、これを読んでから物を言え!

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 2018年にノーベル物理学賞を受賞したフランス人のジェラール・ムールー氏が、核廃棄物の画期的な処理法を発明したというニュースが流れた。曰く「特別なレーザー装置を使用することによって、核廃棄物の放射能の半減期間を数千年から数分に短縮することを提案している」のだとか。

 ネット上では「コスモクリーナーだ!」「福島第一もこれで」等々、世紀の大発明のように思われているようだが……なにも新しい話ではない。これ、実はずいぶん前から研究されている「核変換処理」という技術で、しかも日本の大阪大学レーザー科学研究所が世界でもぶっちぎりの実績を上げている分野なのだ。

 だから、「ノーベル賞学者が」という見出しに踊らされて、今回の研究が元日本原子力研究開発機構関西光科学研究所長で現在米カリフォルニア大学アーバイン校教授の田島俊樹氏との共同研究だという点を見逃すと、話を見誤る。田島教授こそ、高出力レーザー研究の第一人者で、プラズマ物理学の最高権威であるチャンドラセガール賞を受賞しているスーパー研究者なのだ。

【その他の画像はコチラ→https://tocana.jp/2019/04/post_92253_entry.html】

■まずは高レベル放射性廃棄物のヤバさを理解せよ

 原発で出る使用済み燃料のうち、問題となるのは高レベル放射性廃棄物だ。原子力発電に使われたウランやプルトリウムといった燃料1トンにつき、再利用できない核物質は約50キロ。残り950キロは精製してまた燃料として使える。この異常な燃費の良さが原子力発電の魅力ではある。

 とはいえ、この残った50キロの高レベル放射性廃棄物が大変なのだ。放射線量は1,500,000mSv/h。値が大きすぎるので、ミリをとって1500シーベルトとする。

 放射線を浴びて具合が悪くなる境界線が1シーベルト。体にガンができて死ぬのが10シーベルト。放射線治療でがん細胞を死滅させる時の強さが100シーベルト。だから、100シーベルトをがん細胞以外、全身に浴びたら人間は即死する。しかし、高レベル放射性廃棄物の放射線はその15倍だ。

 このくらい放射線が強いと熱線になる。高レベル放射性廃棄物は熱いのだ。そもそも原子力発電は核燃料の発熱でお湯を沸かしてタービンを回しているので、当然と言えば当然。では、現状それをどう処分しているのか。

 高レベル放射性廃棄物は液体(廃液)なので、ガラスと混ぜてドロドロにして、シリンダー状に固める。これをガラス固化体といい、致死量の放射線と熱(表面温度が200度にもなる)を放射している。近づけば、死ぬ。これをキャニスターという高さ1340mm、直径430mmの金属容器に保存する。キャニスターを30〜50年間、六ヶ所村(青森県)の貯蔵管理センターに保存しておくと多少冷えるので、それから300mの地下に埋める。でもこれはただの計画で、今は30〜50年の途中で、キャニスターが集められ、冷えるのを待っている段階。しかし、未だかつて人類はキャニスターを地中に埋めたことがないから、埋めても大丈夫なんて、実のところ誰にもわからない。

 つまり、六ヶ所村の貯蔵管理センターは原発が出した排泄物を延々と溜め込む“肥溜め”なのだ。これこそ、原発が「トイレのないマンション」と揶揄される理由である。

 しかも、仮に前述のキャニスターを300mの地下に埋めたとして、日本は地震大国である。数百年後に地震でキャニスターが地上に噴き出してしまう、そんな可能性もゼロとはいえない。それに、未来の人が間違えて掘って被ばくするような事態が起きないともいえない。“想定外”が起こることは国民全員が嫌というほど思い知っている。科学者が絶対と言って、絶対じゃなかったことは山ほどある。つい200年前まで、科学者は腐った稲からウナギが生まれると真顔で言っていたのだ。

 地中に貯蔵すると「1000年間で放射能が約3,000分の1」(日本原子力文化財団)になるそうだ。つまり原発を語るときは、それくらいの長いスパンで物事を考える必要があるというわけだが、であるならば、なぜ、1000年前に起きた津波を無視したのか。そのせいで福島第一原発は吹っ飛んでしまったではないか。

■もうフクイチは手に負えない!

 現在、福島第一原発の原子炉の底には、溶けて飛び散った燃料棒やそれにまみれた部材(合わせてデブリと呼ばれている)、要するに高レベル放射性廃棄物まみれのガラクタが大量に沈んでいる。

 そんなものをどう処理するか、東電は考えている。高レベル放射性廃棄物の致死性を知れば、現状では不可能に近い話だと誰だってわかる。鉄くずやコンクリートと混ざり合った1,500,000mSv/hを分離して、ガラス化? 近づいたら即死どころか、肉まで焼けてしまうものを? そうなったとして、死体もそのまま高レベル放射性廃棄物だ。

 そう、手に負えないのだ。いまだに原発を推進してる人たちは、金で頭がおかしくなっている――と、そこで出てくるのが今回のテーマ「核変換処理」である。科学が汚したケツは科学で拭くしかない。

■実は長い歴史をもつ核変換処理の研究

 核変換処理の研究は1960年代からスタートしている。基本は粒子加速器。巨大なドーナツ形に電磁石を配置し、リニアモーターカーの要領で電気を帯びた素粒子を光速近くまで加速する装置だ。これで陽子を加速させ、陽子ビームを核物質に叩きつけると核物質が壊れてバラバラになり、別の軽い核物質に変化する。軽い核物質は無害化するまでの時間が、重い核物質よりはるかに短いので、何万年も土の中に埋めなくても、すぐにただの無害な金属に変化する。

 理屈は通っているし、このやり方で微量の核変換は成功しているが、原発の廃炉化に使えるかというと別問題。とりあえず、溜まりに溜まったガラス固化体を軽くして量を減らすというのが現実的なミッションだ。

 では、大阪大学レーザー科学研究所などが進めている核変換はというと「レーザー核変換」だという。高出力のレーザーを使って高エネルギーの光子ビームを作り、それを核物質に叩き込んで核変換を起こす。前述の粒子加速器の陽子ビームが、レーザーを使って発生させたガンマ線に代わったと思えばいい。

■乱立する研究、日本がリードして核変換システムの確立を!

 さて、国が進める次世代基盤技術の開発計画、革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)には「核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な低減・資源化」(PDF)があり、理化学研究所仁科加速器センターや各大学が、共同で核変換システムの開発を行っている。ImPACTでは先に紹介した陽子ビームを使った世界初の核変換に成功しているが、これは原子炉を使って陽子を取り出すという、システムとして非常に大掛かりなものだ。

 また、高出力レーザーを使って陽子を加速させる研究も進んでいる。すでに電子では「ギガ電子ボルト級の電子加速には、従来技術ならば 100 メートル級の加速距離が必要になるが、レーザー加速では0.1メートルに満たない長さで可能」(「大型レーザーによる高エネルギー密度科学の新展開」・ 日本学術会議)なのだ。この延長線上にあるのは、核変換システムの小型化だ。原子炉が不要で、システム的にも小型であれば、敷地の制限がずいぶんと緩くなる(原子炉を使う限り、臨海部である必要があり、この状況で新たな原子炉建設を認める自治体は皆無だろうが)。したがって、大量の高レベル放射性廃棄物を処理できる可能性も残されているのだ。

 さらに、高レベル放射性廃棄物を無害化する以外にも、レーザーの使い方によって重い核物質だけを分離させることも可能になりつつある。同じくImPACTで理化学研究所が進めている技術なのだが、今回ジェラール・ムールー氏らが行った実験はこれだろう。その成果自体は素晴らしいことだが、日本はさらに先に行く必要がある。レーザーによる核変換システムの確立だ。

 原子力発電を推進する経団連の方々に、今こそ言いたい。「電気を安く使い続けられるようにしたい」のなら、今すぐ溜め込んだ数兆円を吐き出し、高出力レーザー設備を拡充し、世界に先駆けて核変換プラントを実用化するべきだ。世界の高レベル核廃棄物を日本が無害な石ころに変えてやり、処理費用を世界中から巻き上げればいいのだ。これこそ生きた金の使い方である。こういう知的冒険のために金はある。墓場まで金は持って行けないぞ。

※イメージ画像:「Gretty Images」