昭和を代表するオカルト漫画10作品を珍マンガ研究家が選定! 超常現象、SF、陰謀論、超古代文明… これが必読オカルトマンガだ!

昭和を代表するオカルト漫画10作品を珍マンガ研究家が選定! 超常現象、SF、陰謀論、超古代文明… これが必読オカルトマンガだ!

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 5月1日に新天皇が即位し、令和の世が始まった。この歴史的転換点に合わせ、昭和・平成のスピリチュアル・オカルトをASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)が総括する『昭和・平成オカルト研究読本』がサイゾーから刊行された。資料的価値の極めて高い本書の中から、トカナ編集部が厳選するいくつかのエピソードを掲載する。興味を持った方はぜひ手にとっていただきたい。

 

【1970年代以降にオカルト要素を取り入れた作品が増える】

 漫画は同時代のトピックスに敏感に反応する。それはオカルトに関しても同様で、とくにブームとなった1970年代以降は、オカルト的な要素を取り入れた作品が増えていった。また、オカルトを取り扱った児童書の中には、エピソードを紹介するために漫画を導入したものも少なくない。漫画のわかりやすさが重宝されたためだ。

 80年代半ばになると、レンタルビデオ店の増加にともなうスプラッタ・ムービー(血が大量に出る、残虐描写の多い映画)ブームと連動して「SF伝奇アクション」小説のブームが起こり、それにしたがいSF伝奇アクションの漫画も増える。これらはオカルトを設定に取り入れてはいるが、それが実在するかどうかはあまり問題としないので、今回は除外した。では、昭和・平成のオカルトに影響を与えられたり与えたりした作品を見ていく。

 なお、発行年に関する情報は、2019年4月22日に調査・確認した。


『貸本版 悪魔くん』全3巻 水木しげる(東考社、1963〜64年。復刻版は全1巻、講談社、2017年。キンドル版もあり)

 1963〜64年、貸本として全3巻、刊行された。10万年に一人の天才と言われ「悪魔くん」の異名を持つ少年・松下一郎が、魔法陣から悪魔を召喚し、新世界をつくろうとする。「隠された知識」によって社会変革をもたらそうとする行為はいかにも「オカルト」っぽい。カート・セリグマン『魔法 その歴史と正体』やゲーテ『ファウスト』をヒントにしているという。本作以後、何度かリメイクされ、ドラマ化、アニメ化もしている。

 

『幻魔大戦』全2巻、平井和正、石ノ森章太郎(秋田書店、1968年。復刻版は復刊ドットコム、2019年。キンドル版もあり)

 1967年、週刊少年マガジン連載。宇宙を破壊し続ける存在「幻魔」の地球侵攻を食い止めるため、プリンセス・ルーナ、東丈(あずまじょう)たち超能力者が結集する。物語は人類の滅亡をほのめかして中断してしまうが、その後、漫画と小説の合体作品として1971年に『新幻魔大戦』が描かれ、1979年に原作者・平井和正単独の小説作品として『幻魔大戦』『真幻魔大戦』が執筆される。これらはベストセラーとなり、1983年にアニメ映画『幻魔大戦』が公開され、こちらも大ヒット。シリーズを通し、時空を超えた戦士の出会いを描いたため、同じ前世を持つ(と認識される)者同士で集まろうとする「前世、転生ブーム」の一因となった。

『エコエコアザラク』全19巻、古賀新一(秋田書店、1975〜79年。復刻版はぶんか社、2016年。キンドル版もあり)

 週刊少年チャンピオン連載。黒魔術を使う美少女・黒井ミサが、さまざまな人たちに魔術をかけたり、超自然的な怪異に巻き込まれたりする一話完結形式の作品。タイトルの「エコエコアザラク」とは、ミサがよく使用する呪文に由来する。黒井ミサのキャラクター像は、学園漫画やアニメにありがちな「学校やクラスに一人はいる、やけに魔術にくわしい少女」の原型となった。

 

『うしろの百太郎』全8巻、つのだじろう(講談社、1974〜76年。復刻版はぶんか社、2017年。キンドル版もあり)

 1973〜76年、週刊少年マガジン連載(1975年からは『月刊少年マガジン』にも並行して連載)。主人公の少年・後一太郎(うしろいちたろう)は、心霊科学を研究する父・後健太郎のもとで、さまざまな超常現象を体験していく。ピンチの際は、守護霊である百太郎に助けられることもある。

 同じ作者の『恐怖新聞』(後述)とともに、漫画を通じて昭和のオカルトの状況に大きな影響を与えた。とくに「霊界」「守護霊」「背後霊」「地縛霊」などの概念を一般に浸透させる一翼を担ったと言える。同時代に流行していた「コックリさん」の実践について作品中で警鐘を鳴らしているが、結果的に広めるきっかけにもなってしまった。

 なお、心霊世界の秩序を説明されても、霊現象に関するモヤモヤが晴れるどころか、じんわりと不安にさせられるのが、つのだ心霊漫画の特徴。

『恐怖新聞』全9巻、つのだじろう(秋田書店、1973〜75年。復刻版はぶんか社、2017年。キンドル版もあり)

 1973年から75年まで、週刊少年チャンピオン連載。

 霊魂や超常現象の記事、あるいは未来の出来事が書かれた新聞『恐怖新聞』が家に配達されてくる男子中学生・鬼形礼(きがたれい)が、さまざまな超常現象に遭遇する。

 心霊現象だけでなく、UFOやUMAなども取り扱っている。恐怖新聞の送り主は悪霊であるため、常に作品内に不穏な空気が漂っている。

 ほぼ同時期に連載されていた、同じ作者の『うしろの百太郎』とともに、「昭和オカルトに影響を与えた漫画作品」としては欠かせない存在。「心霊の世界」や、その他の不思議現象を「実在する」という前提で進む物語は、それまでの怪奇・恐怖漫画とは違った世界観を提示した。

 また、2009年から2011年まで、西条真二氏によって『キガタガキタ!〜恐怖新聞より〜』全4巻、西条真二(秋田書店、2010〜11年)というリメイク作品も発表されている。この作品は時代に合わせたホラーアクションの要素が強い。

 つのだじろう氏は、『うしろの百太郎』『恐怖新聞』終了後も、心霊現象を扱った作品を多数執筆している。

『ダイヤ少女』『続ダイヤ少女』『続々ダイヤ少女』黒田みのる、古出幸子(笠倉出版社、1978年)

 中学生の超能力少女・岡田マヤが、「心を忘れた人々」を改心させよ、と神から命を受け、「魔神」と戦う少女向けホラー。

 黒田みのる氏は1958年にデビューした怪奇・霊漫画家であり、新宗教系の教団「ス光(びかり)」の教祖。多数の怪奇漫画を発表しており、本作はそのひとつ。作中の世界観はおそらく彼の宗教観を反映しているので、少々お説教臭い内容ではある。

 なお、本作では「空飛ぶ円盤」が飛来して心のきれいな人を救ってくれる、とあり、つのだじろう氏の『恐怖新聞』同様、かつてUFOと心霊は結びつきがあったことを記述している。

『三つ目がとおる』全6巻、手塚治虫(講談社、1975年〜77年。復刻版は復刊ドットコム、2017年。キンドル版もあり)

 1974〜78年、週刊少年マガジン連載。過去に高度な文明を持ち、「第三の目」を持っていた種族「三つ目族」の末裔である少年・写楽保介(しゃらくほうすけ)は、ふだんは幼児のようだが、額の絆創膏をはがし第三の目を露出させると、天才的な頭脳と超能力を発揮する。そんな彼が親友の少女・和登(わと)さんとともに、超古代文明の謎を解き明かしたりする。

 連載当時のオカルトブームの影響を受けているが、謎を科学的に解明することを主眼としており、神秘性は薄い。手塚治虫は、いちおうブームには乗っかるが、オカルトに関しては引いて見ていたようである。

『失われたムー大陸』全1巻、桑田次郎(大陸書房、1979年。復刻版は「失われたムー大陸+ブラックホールX」のタイトルでパンローリング、2013年。キンドル版もあり)

 長らく地球を離れていた惑星探査艇が地球に戻ってきたとき、人類は滅亡していた。それは、ムー大陸滅亡の悲劇が地球規模で起こったからであった、というお話。

 オカルト本を多数出版していた大陸書房は、漫画単行本のシリーズも出していた。それが「大陸謎シリーズ」であり、本作はその中の一冊。

 このシリーズには他に、いけうち・誠一『日本の宇宙人』、門井文雄『幻のアトランチス』、七瀬カイ『地球の大空洞』などがある。どれも、大陸書房のオカルト本を下敷きにしている。

【80年代以降、SF伝奇アクションの漫画も増える】

『サイボーグ009』13〜15巻、石ノ森章太郎(秋田書店、1980〜81年。復刻版は復刊ドットコム、2017年。キンドル版もあり)

 長期シリーズ「サイボーグ009」は、オカルト的な題材をときどき取り上げるが、ここでは月刊漫画少年(朝日ソノラマ、1977年7月号〜79年9月号)に連載された中編エピソード「海底ピラミッド編」を紹介する。

 バミューダ・トライアングルの海底に発見された「ピラミッド」をめぐり、009たちサイボーグが、悪の組織や宇宙人と戦いを繰り広げる。作中では「ブラックヘリコプター」(陰謀論にときおり登場する、国籍・所属不明の黒いヘリコプター)、月に関するオカルト本『それでも月に何かがいる』の「月には人工物がある」という説、謎の人物「サン・ジェルマン伯爵」(18世紀にヨーロッパで活躍した、ルイ15世の寵愛を受けたこともある人物。不死伝説がある)などのオカルト的な名詞が飛び交う。また、15巻には、本編を補完するかたちで「サン・ジェルマン伯爵」についての読み切りが収録されている。この短編は「、海底ピラミッド編」で「タイムマシンを駆使し、人類を操ろうとする異星人」として登場したサン・ジェルマン伯爵が、本当は何者だったのかを作者の石ノ森本人が考察するというものである。

 石ノ森章太郎は、自身が携わり後に原作者の平井和正が牽引する『幻魔大戦』とはまた別個に、オカルト系の話題をよく自作に取り入れていた。

『ドラえもん』第23巻、藤子・F・不二雄(小学館、1982年。キンドル版もあり)

 藤子・F・不二雄は、数多くオカルト・超常現象を漫画のネタにしてきた。たとえば『ドラえもん』の「ツチノコ見つけた!」(1975年)(、正確には『ドラミちゃん』の)「ネッシーが来る」(1974年)、『エスパー魔美』の「未確認飛行物体!?」(1977年)などがオカルトを題材としたエピソードの一部である。どれも、できるだけ科学的、SF的なアプローチをしている。

 そんな中、『ドラえもん』の「異説クラブメンバーズバッジ」(1980年)というエピソードは、少々変わっている。たとえば地球空洞説(地球の内部は空洞になっているという説)などの「異説」が、バッジを付けた者たちの間でだけ現実化するのだ。マイクに「地球空洞説は正しい」と吹き込みバッジをつけると、バッジを付けた者にとってだけ、地球内部が空洞になるのである(ジャイアンとスネ夫もバッジにより地底世界を見てしまったため、騒動が起こる)。

 オカルトや超常現象を題材とした漫画は数多いが、すでに間違っているとされている異説を、信じる者たちだけで共有し、「現実化」させるという話はめずらしい。正確には「、幻覚の共有化」だと見るべきだが「、異説クラブメンバーズバッジ」で具現化された世界に現実世界の物質を残してきても問題はなく、さらにはバッジを付けていない人々にもその「異説」が共有化される可能性があるという描写がある。つきつめて考えるとよくわからないのだが、まあ、ドラえもんのひみつ道具はどれもわりとザックリしているので……。

 ちなみに、2019年3月から公開された劇場用アニメ『映画ドラえもんのび太の月面探査記』では、この「異説クラブメンバーズバッジ」が、上記の矛盾点を整理し、重要なアイテムとして登場している。

 また、「E.T.大研究」「超能力大研究」などの項目を立て、さまざまな、いまだに立証されたとは言いがたいとされる異説について書いた『藤子・F・不二雄の異説クラブ』全2巻 藤子・F・不二雄(小学館、1989〜90年、復刻版は小学館、2014年)という書籍(漫画ではない)もある。この『異説クラブ』は、『映画ドラえもん のび太の月面探査記』公開に合わせ、雑誌『ムー』2019年4月号で特集が組まれている。

(続きは『昭和・平成オカルト研究読本』でお読みください)


新田五郎(にった・ごろう)

1967年生まれ。趣味で一般的評価の対象外となった漫画の捜索をしている。口裂け女や「恐怖新聞」におびえ、UFOやスプーン曲げをテレビで見まくった少年時代を過ごした。共著に『トンデモマンガの世界』(楽工社)。元・と学会会員。

※ ASIOS編著『昭和・平成オカルト研究読本』(サイゾー刊)の出版記念イベントが8月4日(日)に開催されます。詳細は下記をご覧ください。

http://www.asios.org/event_20190804