本当にあった「バイトテロ勧誘」の怖い話がゾッとする! 深夜のファミレスで騒ぐ暴走族…しかしそれだけではなかった!

本当にあった「バイトテロ勧誘」の怖い話がゾッとする!  深夜のファミレスで騒ぐ暴走族…しかしそれだけではなかった!

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 まだバイトテロがそれほど頻繁には起きていなかった頃の「怖い話」。そう、四国のコンビニか何かでバイトが冷蔵庫に寝そべった動画が出回って問題になったのと、ほぼ同じ頃に起きた話らしい。

 その日、アキラは4つ歳上のマサル先輩に呼び出された。場所は北関東の某県庁所在地にある繁華街。マサル先輩はこのあたりのいわゆる目立つ遊び人のひとりで、アキラにとっては少年時代に入っていた暴走族のOB。先輩は直接同じ代で走ったわけではない上の世代だが、地元の私大に通うアキラにとっては面倒くさいOBのひとりだ。

「アキラ、おまえユーチューバーって知ってる?」

 金のネックレスをじゃらじゃらさせてケバいアロハシャツを着たマサル先輩が、いつもの上から目線で話を始める。こういうときには昔からの上下のルールがあって、「あまりよく知りません」と答えなければいけないことになっている。「知ってますよそんなの」とか気配に出しただけで「あーん?」と返されるのがオチである。

「俺の知り合いがユーチューバーやってるんだけど、あの仕事も大変らしくてさ。なんていうの、常に新しい話題を提供していかなきゃいけないんだって」

 とマサル先輩はさも、自分事のようにつらそうな顔をした。

「それでさ、アキラ、お前のバイト先でそいつが動画を撮りたいんだって。協力してやってくれよ」

 それで深夜を過ぎた頃、「LUI」と名乗るユーチューバーが、アキラのバイト先のファミレスの厨房にやってきた。

 “なんで全国チェーンの店の中に部外者が?”と思うかもしれないが、この辺りで深夜営業しているような店で働いているのは、だいたいが元不良のバイトばかり。この日のシフトリーダーもアキラより2歳年長のフリーターで、マサル先輩からもあらかじめ言い含められていたらしい。

「オレは何も見てないから、ふたりで勝手にやってくれ」

 と言ったきり、こっちには注意も払わない。

 LUIは30代後半ぐらいの小柄だが筋肉質の男で、左腕には変わった模様のタトゥーが入っている。なんていうのかこの辺りのヤクザが彫っているようなデザインではなくて、もっと外国人みたいなカッコいい西洋的な模様のやつだ。LUIはにやにやしながらアキラを眺め、時折iPhoneでアキラの仕事ぶりを撮影していた。午前2時を過ぎて、客の数もまばらになってきて手がすいてきたころ合いを見計らって、LUIが声をかけてくる。

「聞いていると思うが、イカれた動画を撮りたいんだ」

「そんなこと言ってもここでは変なことは禁止されてますよ」

「だよな。でもついこの間までは、この辺りでは無敵のアキラくんだったんだろう? これでその気持ちを盛り上げてくれないかな」

 そういうとLUIはちょっと分厚い茶封筒をつきだしてきた。

「これは迷惑料。ユーチューバーって儲かるんだぜ」

 封筒を開けると、目測で1万円札が10枚ほど入っている。アキラは一瞬とまどったがすぐに覚悟を決めた。

「わかりました。何やればいいか指示してください。その通りに演りますから」

 それからゆうに二カ月がたった頃、アキラが撮影のことなどすっかり忘れていたそんなころ合いに、突然ツイッターにその時の動画が公開され、瞬く間に拡散した。

 深夜のファミレスで騒ぐ暴走族たち。そういえばあの日も隣町の高校生たちが騒いでいた。店内をわがもの顔でわめきちらしている。そこに「天誅」という文字がインサートされて、場面は厨房に移る。有名なそのファミレスのユニフォームを身につけたアキラの後ろ姿。料理中のピラフをくちゃくちゃ食べると、その横のドリアにぺっと吐き出して、スプーンでかき混ぜる。

「はい完成っ」

 と言ってドリアをカウンターに乗せたところで動画は終わり。

 そのときは一瞬心配になったが、名札と横顔の目線にはモザイクが入っていたので、まあ大丈夫かなとアキラは思った。

 ところがそうではなかった。翌日に東京の本部から社員が4人やってきて、アキラはすぐに特定されて、バイトリーダーともども強く叱責されたうえでクビになった。ふたりともシラは切ったが、「動画を分析すると、あの日、この店で、あの動画が撮られたことが写り込んでいるものから全部わかるんだよ!」と若い社員がツバを飛ばしながらアキラをどなりつけた。

 後から聞いた話だが、アキラが勤めていたファミレスは、この事件で全国的に客足が低迷したらしく、赤字転落とやらで大変なことになっていたそうだ。まあ吐物の混じったドリアなど誰も食べたくはないだろう。他人事ながら客の気持ちもわかるとアキラは思った。

 しばらくしてマサル先輩が車をレクサスに買い換えたという噂が流れてきた。株の空売りで数千万円儲けたらしい。

「俺には業績が悪くなる株が、手に取るようにわかるんだぜ」

 マサル先輩がそう豪語して仲間に投資を勧めるのを別の後輩が見かけたそうだ。先輩だけでなくこの辺りの不良集団は、皆、金回りがよくなったと評判だ。

 LUIというユーチューバーにはそれ以来一度も会っていない。検索してもそんな奴出てこないし、そもそも動画が拡散したのもアキラともLUIともマサル先輩とも関係のない、聞いたことのないツイッターアカウントからだ。

 アキラは10万円を使いきってまた新しいバイト先を探しはじめた。そんなある日、アキラのアパートに、かつてのバイト先のファミレスと弁護士事務所を名乗る内容証明郵便が届いた。

(注:一部、事件の設定を変更してフィクション化しています)

(文=王山覚)