なぜ米国は史上最悪カルト殺人鬼、チャールズ・マンソンに今も怯えているのか? ディカプリオとブラピも発狂した新作映画2本の新考察がヤバすぎる!

なぜ米国は史上最悪カルト殺人鬼、チャールズ・マンソンに今も怯えているのか? ディカプリオとブラピも発狂した新作映画2本の新考察がヤバすぎる!

なぜ米国は史上最悪カルト殺人鬼、チャールズ・マンソンに今も怯えているのか? ディカプリオとブラピも発狂した新作映画2本の新考察がヤバすぎる!の画像

 史上最悪のカルト指導者ことチャールズ・マンソン(1934〜2017)。ヒッピー文化が花開いた1960年代の米国で、自らを「キリストの生まれ変わり」と主張する身長157cmの小男が、独自の終末論と音楽、カリスマ性、そしてドラッグなどを利用して若者たちを洗脳。疑似共同体(コミューン)を形成するとともに少しずつ“悪魔のファミリー”へと変貌させ……と、現代社会におけるカルトのイメージは、まさにマンソンによって決定づけられたといっても過言ではないほど、その存在が世界の犯罪史に与えたインパクトは大きい。

 そんなチャールズ・マンソンが犯した最も重大な犯罪が、シャロン・テート殺人事件だ。実は今日、8月9日はこの犯罪史上未曽有の猟奇残虐殺人が起きてからちょうど50年の節目に当たる。そして奇しくも今月、シャロン・テート殺人事件を題材とした映画2作品『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』と『チャーリー・セズ/マンソンの女たち』が日本公開を迎えるというではないか。2017年にマンソン自身は獄中死を遂げているが、その後も関連映像作品が次々登場したり、遺灰をめぐる関係者の争奪戦、さらにはその遺灰で描いた絵画で怪奇現象が起きることが大ニュースとして報じられるなど、今でも人々はマンソンの威光に震え、振り回され続けている

 とはいえ、これまで本人や関係者たちは数々のインタビューに応じてきた。古今東西のカルトやシリアルキラーの実像を追い続けてきたトカナ編集部としては、これ以上マンソンの話で驚愕するようなことなどない……と考えていたが、その態度は間違っていた。そう、マンソンについて私たちが知るべきことはまだあったのだ!

■変貌、狂信、そして殺人

 まずは、シャロン・テート殺人事件の概要を簡単に記しておこう。1960年代後半、カリフォルニア州ロサンゼルス郊外の牧場で共同生活を送るマンソン・ファミリーは約20人の大所帯となっていた。大物音楽プロデューサーのテリー・メルチャーと知り合ったマンソンは、自身の教えを世界に広めるとともに賛同者を増やそうとレコード・デビューを目論むも、計画は頓挫してしまう。やがてマンソンの怒りは社会へと向きはじめ、平和的なヒッピー集団だったファミリーは次第に戦闘的な地下結社のように変貌していく。

 そして1969年8月9日、「人種戦争を勃発させる」というマンソンの命を受けたファミリーのメンバー、パトリシア・クレンウィンケル、スーザン・アトキンスら4人がついにテリー・メルチャー宅襲撃を決行する。しかし、ターゲットはすでに豪邸を手放し、そこには次の入居者である映画監督ロマン・ポランスキーと新進女優のシャロン・テートが暮らしていた。それでもマンソンの言葉に突き動かされた4人は、たまたま在宅中だった妊娠8カ月のシャロン・テートらを殺害。「子供だけは助けて」と命乞いした彼女をメッタ刺し、玄関ドアには血文字で“Pig”と書いて立ち去った。そして翌日、レスリー・ヴァン・ホーテンら2人を加えた6人組でラビアンカ夫妻も殺害。その後もマンソンは複数の殺人事件を首謀し、ファミリーに指示することで自らは手を汚すことなく計9人の命を奪ったのだ(さらに被害者は多いとの指摘もある)。

■同題材でアプローチが異なる2つの映画

 この凄惨な殺人事件を扱い、タイミングも相まって注目を集めている最新映画2作品、それが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』と『チャーリー・セズ/マンソンの女たち』だ。

・ 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は、『パルプ・フィクション』(1994)や『キル・ビル』シリーズで日本でも高い人気を誇るクエンティン・タランティーノ監督の最新作。ブッ飛んだプロットや暴力描写に定評ある同監督とタッグを組んだ主演は、なんと現在のハリウッドを代表する大スター、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットという超大作だ。これはもうレオ&ブラピの初共演だけでも十分に楽しめるが、もちろん重要ポイントはシャロン・テート殺人事件をモチーフに取り入れたストーリー展開の面白さだ。

 ある日、落ちぶれたハリウッド俳優(レオナルド・ディカプリオ)の隣に夫婦が引っ越して来るのだが、彼らこそポランスキー監督とシャロン・テート(マーゴット・ロビー)だった。やがて、たしかに悲劇は起きてしまうのだが、そこから映画は怒涛の展開を見せる。想像を軽々と超える圧巻のラスト13分はもちろん、サスペンス要素、人物描写など、超一級のエンタメとしてあらゆる要素が“冴えて”いる。

 実際の事件をベースとしながら、実在しなかった人物を主軸に展開するストーリーは、一種のメルヘンと捉えることができるかもしれないが、それだけではない。本作からリアルに滲み出てくるのは、何よりも1960年代の全盛期ハリウッドを満たしていた“ワンダーランド”的な空気と当時のカルチャーの華やかさ、そんな中に現れたチャールズ・マンソンという男が起こしたシャロン・テート殺人事件の強烈すぎるインパクトなのだ。

 この事件によって何が変わったのか、製作のベースに時代や歴史観を総括する哲学的な問いかけがあってこそ、チャールズ・マンソンという存在の実態を炙り出すことができるはず。今作はそれを見事に成し遂げている。やっぱりタランティーノは凄い!

?


『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
2019年8月30日(金)より全国ロードショー!

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

公式サイト http://www.onceinhollywood.jp/
公式Twitter https://twitter.com/SPEeiga
公式Facebook https://www.facebook.com/SPEeiga/

 

・ 『チャーリー・セズ/マンソンの女たち』

 一方の『チャーリー・セズ/マンソンの女たち』は、より史実に則したドキュメンタリー調の仕上がりだ。それもそのはず、シャロン・テート殺人事件の実行犯レスリー・ヴァン・ホーテンの獄中生活を知る犯罪学者の記録を取り入れながら、マンソンに“洗脳された側”の新たな視点を提示しているのだ。実行犯3人の心が少しずつ思考停止し、狂信へと至り、やがて猟奇的な殺人事件を起こす――その変容過程が極めてリアルに、そして重々しく迫る。一見すると和やかで平和のうちに過ぎるマンソン・ファミリーの日々だが、えも言われぬ異様な空気と張り詰めた緊張感、そして狂気が漂っていた。

 マンソンの人物像については語り尽くされた感もあるが、本作が投げかけるのは、マンソンが決して異世界の人物などではなく、実は私たちの身近にも潜んでいるかもしれないということ。そして、気づかぬうちにカルト集団にのめり込み、いつの間にか取り返しのつかない場所に足を踏み入れてしまう可能性。そう、誰もがシャロン・テート殺人事件のような狂気を起こし得るという恐怖に直面する作品なのだ。同じ事件を扱いながらも派手な殺人描写や想像を裏切る展開がない点において『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の対極にある作品と言えそうだが、そこにはリアルな“鬱”がある。

 監督は『アメリカン・サイコ』(2000年)のメアリー・ハロン。実行犯3人には、『ゲーム・オブ・スローンズ』のハンナ・マリー、ケヴィン・ベーコンの娘ソシー・ベーコン、ミュージシャンとして活躍するマリアンヌ・レンドンが扮する。マンソン役は、12月公開の『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の出演も決まったマット・スミスが演じるなど、気鋭のキャストが勢揃いだ。

?


『チャーリー・セズ/マンソンの女たち』

2018年|アメリカ映画|110分|提供・配給:キングレコード

★詳細はコチラから★
http://qualite.musashino-k.jp/quali-colle2019/
http://kingmovies.jp/news/2019/07/12/17002

■マンソンの影響力は衰えない

 事件から半世紀を経てなお米国を震え上がらせ、数多の話題を振りまき文化的影響力さえ保持するチャールズ・マンソンとマンソン・ファミリー。彼らの罪は到底許されるものではないが、これら2つの最新映画から感じ取れるのは、まだまだ世界はマンソンの実像を把握し切れていないという事実。性質の異なる両作だが、ともにマンソンに対する新たな視点とアプローチを提示することに成功している。カルト指導者と信奉者による猟奇殺人は、同時に「ハリウッド史に刻まれる凄惨な事件」であり、「60年代に終わりを告げた事件」でもある――マンソンに対する考察は、彼の生い立ちや言動についての細かな分析を経て、時代や文化的な背景とともに語られるべき段階へと本格的に突入したようだ。考えてみれば、日本社会もカルト集団と無縁だったわけではない。米国社会の姿勢の変化は、日本人にとっても示唆に富むものだ。

 余談だが、この2作品を鑑賞した読者にとって気になるのは、現実にシャロン・テート殺人事件を起こした実行犯のその後だろう。レスリー・ヴァン・ホーテンは22回の仮釈放申請却下、リシア・クレンウィンケルは14回の仮釈放申請却下を経て現在も刑務所に収監中。スーザン・アトキンスは2009年に獄中で死亡している。周辺人物も含め、衝撃エピソードが満載であることもまたマンソン事件の興味深い点なのだが、それについては後日改めてお伝えしよう。

 また、前述の通りマンソン・ファミリーを題材にした映画作品は過去に数多く世に出たが、その第1作目となった『マンソン/悪魔の家族』(1972)のローレンス・メリック監督は何者かに射殺され死亡。『ヘルター・スケルター』(1976)のトム・グリース監督は、作品完成の翌年に心臓発作で死亡しており、悪魔であるマンソンの呪いではないかというウワサも囁かれた。ここで紹介した2作品の関係者には何の悲劇も起こらなければよいのだが……。

 いずれにしても、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』と『チャーリー・セズ/マンソンの女たち』は、読者諸賢の“チャールズ・マンソン観”を刷新する衝撃的作品に仕上がっているので、絶対見逃してはいけないとトカナは断言する。