認知症の「徘徊」を「ひとり歩き」に言い換え… 言葉の“美化”は必要か

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月〜金曜7:00〜)。12月20日(木)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、慶応大学特任准教授・プロデューサーの若新雄純さんが、認知症患者の「徘徊」という言葉を言い換える動きについて考えを述べました。

認知症による行方不明者が増え続けるなか、認知症患者に使われる「徘徊」という言葉を、「ひとり歩き」「散歩」などに言い換える自治体が増えています。これは、認知症に対する誤解や偏見を避けること、本人や家族に配慮することを目的としています。

しかし、「徘徊」は、事故につながりかねないなど“急を要する”ニュアンスを含む用語として定着しているという意見も。そのため、言い換えを躊躇する自治体も少なくないそうです。

◆大事なのは“どう向き合うか”

若新さんは、「徘徊」の言い換えに関して「全然本質的じゃない」と異議を唱えます。

用語の言い換えについては、かつて厚生労働省が「痴呆」に替わる呼称として「認知症」が最適とし、各自治体で「認知症」が使用されようになったケースも。これは、「痴呆」には「あほう・ばか」に通ずる侮蔑的な意味合いがあること、「痴呆」と呼ばれることで患者や家族が苦痛や違和感を覚える場合があることなどを問題とし、変更されたものでした。


しかし、「(認知症の)医療的な名称は『痴呆』のまま」と話す若新さん。また、「僕のばあちゃんは、亡くなる前の5〜10年は痴呆状態だった」と、自身の体験を語り始めます。

小さいころは「“ばあちゃん子”だった」と言う若新さん。祖母が晩年に痴呆状態になってからは、家族内でも「ボケる」「痴呆」といった言葉をよく耳にしたのだとか。しかし、若新さんは「それでばあちゃんが侮辱されている、ばあちゃんの尊厳が傷つけられていると思ったことは1度もない」と言います。それよりも、はつらつとしていた祖母が痴呆状態になっていく姿を見て「最後はこういうふうになっていくんだ」と、認知症の実態を思い知らされたそうです。

その経験を踏まえ、「痴呆」は誰か特定の人を差別するのではなく、人間が死に向かっていくなかで起きることだと思うようになったと言う若新さん。「僕らもボケて、徘徊するかもしれない」と話し、言葉を美化するよりも重要なこととして、次のように主張しました。

「言葉の言い換えではなく、『徘徊』してしまうという人生の終盤とどう付き合っていくのかを考えなければならない」


◆ニュアンスにはやはり“違和感”?

ジャーナリストの鳥越俊太郎さんは、「徘徊」という言葉について「なんとなくイメージが良くない」としつつも、「ひとり歩き」は認知症の人に限らず誰もがするものとし、「意味がわからなくなる」と指摘。そして、より適切な用語として、明治大学の齋藤孝教授が提唱していたという「『迷道高齢者』がいいのでは」と述べました。

ジャーナリストの中野円佳さんも、「(認知症などで)ケアが必要な“ひとり歩き”と、普通の散歩の“ひとり歩き”があるはず」とし、そのニュアンスを的確に伝えるため「名称は考えたほうがいいのでは」との見解を示しました。

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時 :毎週月〜金曜 7:00〜8:00
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:http://s.mxtv.jp/morning_cross/