大学入試不正の背景にある学歴至上主義…Z世代が激しく議論

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月〜金曜7:00〜)。「フラトピ!」のコーナーでは、相次ぐ“大学入試不正”について深掘りしました。



◆大学入試のカンニングは当事者だけの問題ではない!?

一橋大学の留学生を対象とした入試で不正が行われた疑いがあり、偽計業務妨害容疑で2人が逮捕されました。これは今年1月の入試の際、受験者の中国人男性が問題を動画撮影し、SNSで外部に送信。これを受けた男の元家庭教師が「宿題を手伝って」とSNSで依頼し、解答を入手。受験者は装着していたワイヤレスイヤホンでその解答を受け取り、入試に合格していました。

このニュースに、日本大学文理学部 助教の大澤正彦さんは「入試はみんなの人生が懸かっていて、みんなの思いが詰まっている場所。一番ズルをしてほしくない場所」と憤りを露わに。

大学入試の不正を巡っては、今年1月の共通テストでも19歳の女性がスマホを使って解答を得たとして、偽計業務妨害の疑いで書類送検されています。

相次ぐ不正に、臨床心理士のみたらし加奈さんは学歴至上主義の風潮を指摘しつつ、「これは本当に子どもたちの問題なのか。もっと構造的な、社会など大きいところの問題ではないか、みなさんと議論したい」と課題を提起します。

一方、NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは「この問題を論ずる際、子どもたちに学歴以外の価値の大切さを教えよう、知ってもらおうと語る大人が多いが、たぶんそうではない」と否定し、「学歴偏重主義は、大人の気持ちと仕組みの問題」と主張します。

現実問題として、基本的には大卒のほうが給料が高く、生涯年収も高い学歴至上主義社会が蔓延るなかで、今の子どもにだけ「それはやめよう・もっと違う価値観がある」というのは筋違いと大空さん。「学歴・偏差値だけを重視する教育の仕組みをまずは変えないといけないし、そのなかにいる評価者たる大人たちの考え方が変わらないといけない」と指摘し、「当然カンニングをすることは悪いが、全体的な問題として責任は子どもにはないと思う」と持論を述べます。

◆重要なのは不正の取り締まりではない…試験監督の大事な役割

大学入試における不正発覚件数を見ると、近年では2017年が最多の12件。また、スマホによる不正は、初めて発覚した2016年以降、合計8件発覚しています。

試験を監督し、不正を取り締まるのは大学教員ですが、共通テストの試験監督経験のある大澤さんは、その大変さを慮りつつ「大前提として、僕らは真面目にやっている受験者の足を引っ張るような、疑ってかかる態度を取ってはいけない。真剣にやっている子が全力を尽くせるようサポートするのが第一の役目」と力を込めます。そして、その前提のもとに監視するため、なかには見逃してしまうことも考えられ、現状の発覚件数も氷山の一角である可能性を懸念。

こうしたなか、6月10日には大学入試センターが不正防止策を発表。試験監督の巡視強化や机上でスマホの電源を一斉にオフにすること、不正が発覚した場合、被害届を出すことを周知するとしています。しかし、電波遮断機の導入は費用が約100億円かかるということで見送りに。専門家は、カメラ付きの時計やメガネなど高性能の端末が次々に発表されており、試験会場の対策も"いたちごっこ”との見解を示しています。

ここでキャスターの堀潤からはテクノロジーで不正を回避できないのかとの質問が。すると大澤さんは「テクノロジーでカバーする問題というよりは、テクノロジーとの向き合い方の問題を突きつけられていると思う」と回答。技術発展のスピードが日々加速するなか、そこで生じる問題をその都度話し合い、対処を考えていたら対応は間に合わない時期が来るからで、「どういうスピードで、どういう展開になっていくのかできるだけ先読みし、今から新しいことを作っていかないと(人間は技術の進化に)追いつけなくなる。そこは真剣にやらないといけない」と警鐘を鳴らします。

みたらしさんは「不正して入ったからといって、その後の授業についていけるのか」、「結局は受験して合格することがゴールになってしまうこともある」と新たな問題を提示しつつ、臨床心理士として不正をする人の心理について言及。入試に対する親からの圧や合格へのプレッシャーはメンタル的にも大変と言い、「カンニングを取り締まる、不正行為をなくすという観点と同時にカンニングをした子の心のケアも必要」と訴えます。

この意見に、大澤さんも「まさにそこは普段から思っているところ」と大きく頷き、「本当はみんな良い子たちばかりで苦しみの末で不正してしまうという話を聞き、カンニングは悪いことだが、当事者を悪人呼ばわりしてはいけない。やってしまった行動は悪いが、その人の人格とは切り離して接していきたい」と話します。

◆子どもを変えるのではなく、大人たちが変わるべきか?

河合塾によると、大学志願者数は1992年度には約92万人いましたが、少子化も影響し、年々減少。2021年度は約65.8万人となるなか、入学定員数は増加傾向に。そのため、現在は希望者全員が入学できる「全入時代」に突入。

大阪大学の吉川教授は「少しでも高偏差値の大学に入れば、より多くの幸せを手に入れられる大卒学歴至上主義の風潮が続いている」とし、親や学校に対し「受験の勝ち負けで全ては決まらないという声掛けが必要」と指摘しています。

大澤さんも「大卒学歴至上主義 断固反対」と声を大にします。さらに偏差値が高いことは素晴らしいが既存のわかりやすい価値軸だけで人を測るべきではない」、「偏差値で優劣が決まるわけではないと認識すべきだし、一人ひとりにいろいろな素晴らしい軸がある。そこを育てるようにならないといけない」とも。

大澤さん自身、この問題に対処すべく大学の先生になったと思いを語り、「僕は日本大学に行きたいと思ったからそれ以外の大学は受けずに日大に入った。偏差値が高いと認識されている学校を目指すのではなく、世間がいろいろな価値軸があることを認め、世の中に役に立つエコシステムを作らないと発展していかない」と今後を案じます。

吉川教授、そして大澤さんの意見に対し、大空さんは「ベクトルが子どもたちに向いているのがおかしい」と持論をぶつけ、「声掛けしなければいけないと言うが、大学の先生に言われても説得力はない。上の立場から言われている感じがする」と異論を唱えます。

学歴至上主義反対には同意するものの、「それを変えるのは大人たちであり、子どもたちに偏差値ばかり追い求めてはいけない、大学行くのが全てじゃないと、大人から子どもに言うのは違う」と大空さん。

大澤さんとしては「大人たちも変わってほしい」という思いがあり、さらに言えば大学や学生も含め、社会全体の変化を希望。そのためにムーブメントを作るべく活動していると説明。また、「大学が大事なのではなく、偏差値にとらわれているのが良くない。大学がこの価値軸を学びましょう、これが正解だとトップダウンになるのが良くない」と改めて主張するも、大空さんは「大卒の人に大卒の学歴はいらないと言われても説得力がないと思ってしまう」と言い、見解の相違は続きます。

大空さんは「学歴至上主義反対も大学に行っていない人が言うなら説得力がある。高等教育を受け、学歴がある教育者のような人が『学歴は大事ではない』と言うのは納得がいかない」と言い、「そういう人たちが子どもではなく、親や学校を含め自分たちの横にいる人たちのために変えていこうと努力することで、子どももそうした価値観になっていくと思う」と話していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月〜金曜 7:00〜8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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