YouTuberがMCバトルで活躍、レジェンドの晋平太が逆にYouTuberに。MCバトルシーンの今<ダメリーマン成り上がり道 #42>

YouTuberがMCバトルで活躍、レジェンドの晋平太が逆にYouTuberに。MCバトルシーンの今<ダメリーマン成り上がり道 #42>

MC正社員氏(左)とアスベスト氏(右)<撮影/古澤誠一郎>

 戦極MCBATTLE主宰・MC正社員が、MCバトルのシーンやヒップホップをビジネスやカルチャー面から語る本連載。今回は、MC正社員の古くからの盟友である元ラッパーのアスベスト氏との対談の最終回。2人で現在のMCバトルの世界や、YouTubeに活動の場を移したラッパーの現在を話し合う。

◆MCバトルの王者・晋平太はYou Tubeで活躍中

 MC正社員(以下、正社員):「アスベストはラップから離れたけど、同世代のラッパーにはまだまだ活躍を続けてる人も多いよね。アスベストのライバル的な存在だった狐火さんとかは今でも頑張ってるし、バトラーだったら晋平太さんはYouTuberとして大活躍しているし」

 アスベスト:「晋平太さんは人間としてのバイタリティも活動のアイデアも本当にすごいと思う。ラッパーとしてもバトラーとしてもスゴい人だけど、その活動をやるところまでやったうえで、YouTubeに横展して成功したんだから。今は『MCバトル界のお父さん』的な立ち位置になったよね」

 正社員:「MCバトルを見てる若いコたちをターゲットにして、自分の立ち位置をかなり振り切ったよね。今の若いMCたちは、バトルで人気になったあとで、バトルを離れて音源製作に向かう人が多いけど、そっちで通用しなくてファンが離れちゃうケースはよくある。それでバトルにも戻れなくて、中途半端に活動が終わっちゃってる人もいる。

 晋平太さんはそうじゃなくて、MCバトル方向に活動を絞ったことで、逆にバトル以外でもまた注目を集める存在になったんだよね」

 アスベスト:「『自分のリソースで何かできるのか』というのをちゃんと考えた結果だよね。あれだけラッパーとして名を上げた人だと、普通はプライドが邪魔をして、YouTuberの活動なんかできないはずなんですよ。でもそれを始めて、あの人は今もラップで食べている。すごいと思いますね」

 正社員:「晋平太さんはMCバトルで日本一を2回獲った人なのに、最近は若いコにナメてかかってる人もいるから逆に心配になるね(笑)。

 あと晋平太さんはYouTubeを始める前に戦略もしっかり練ってて、裏方にもいろんなYouTuberを当てた人が入ってたりするし、しっかり狙って成功したんだよ。そういえば晋平太さん、YouTubeでアスベストのことも紹介してたよ?(下記の動画内で言及)」

 アスベスト:「ああ、見た見た。うれしかったよ。晋平太さん、いい人になったなと思った(笑)」

◆人気YouTuberはもともとMCバトルの常連だった

 アスベスト:「あと最近のMCバトルって、出ている人がみんなエンターテイナーになったよね。これまでのMCバトルって、大きくわけると『MCバトルに特化していないラッパーが手探りでやっていた段階』『ノウハウが体系化されてスポーツ競技化された段階』の2つがあったと思うんだけど、今は『エンターテイナーが集まってショーを見せる段階』になったと思う。もちろん競技としての勝ち負けも大事なんだけど、何が何でも勝てばいいかというと決してそうじゃないというか」

 正社員:「むしろ『優勝するよりインパクトを残して負けたほうがオイシイ』みたいなケースも最近はあるからね。1試合目で負けても、それが大会のベストバウトに選ばれて、YouTubeで映像が拡散されたら、そのほうが勝ったときよりも知名度が上がったりするから」

 アスベスト:「『存在感示したほうが勝ち』みたいな世界だよね」

 正社員:「特に戦極はそういう大会になったと思う。もちろん全員が優勝を狙ってるんだけど、結果的には目立った人が得をするし、他大会よりそういう人がピックされる。俺もそういう面白さがある大会にしたいと常に心がけてるし。

 あと今のMCバトルの世界には、もともとバトルに出ていて、そのあとでYouTuberとしても有名になった人が結構いるんだよね。がーどまんは知ってる?」

 アスベスト:「いや、知らない、恥ずかしながら……」

 正社員:「知らないの? 超人気YouTuberじゃん。ラフェエルやヒカルと同じくらいのレベルで10代には人気があるし、戦極の動画でもがーどまんが出ると伸びが全然違うんだよね。彼は尊敬する人が晋平太で、師匠がじょうだから」

◆MCバトルの壁を破ったラッパーたち

 ――最初はどうやって戦極に誘ったんですか?

 正社員:「誘ったというか、もともと戦極とかUMBとかKING OF KINGSとかにバンバン出てたヤツなんですよ。最初は変わったことしてるなぁって感じだったんだけど、一時期からすごい人気になっちゃって。

 でも人気だけじゃなくて実力もあるからKOKの西日本予選で優勝したりもしてますからね。がーどまんは今でも大会に出てるけど、お金とか人気獲得とか関係なく好きでやってるんじゃないかな。一番ピュアなのかもしれない。アスベスト的に最近のバトルで気になったMCとかいる?」

 アスベスト:「ミステリオかな。『便が立つ話屋』っていう感じで印象に残った。あと彼に限らず、乗り方が音楽的な人とかめっちゃ増えてるよね。MU-TONとか」

 正社員:「昔のMCバトルには『韻を踏もうとしてネタの羅列になっちゃうタイプ』か、『ちゃんと会話をしようとしたら韻が踏めないタイプ』のどちらかばかりで、韻と会話を高いレベルで同時にこなせるのは晋平太とR-指定しかいなかったと思うんだよね。それが今は両方を高いレベルでできる人が何人もいる。全体のレベルが上がったんだよ」

 アスベスト:「僕としては、MCバトルがスポーツ化したところで頭打ちかなと思ってたんですけど、その先の進化があったんだなと驚いてますね」

◆戦極MCバトルでの活動復帰はあるか?

 ――対談の最後ということで伺いたいんですが、アスベストさんはこの先のMCバトルにどんなことを期待したいですか?

 アスベスト:「ヒップホップファンとしてはレコ大やミュージックステーション、紅白がヒップホップ、R&Bのアーティストで埋め尽くされてほしいので、そのスターを生み出す場としてMCバトルにはもっと発展してほしいですね。

 あとはラップやっている人たちは、『自分は何のためにラップをしているのか』という軸をブラさずに活動を続けてほしいし、それで幸せになってほしい。僕はラップをしているあいだ、それが何度かブレちゃって、ラップから離れることになっちゃったので」

 ――正社員さんにとってアスベストさんは、今でも仕事の愚痴や悩みを相談できる存在なんですよね。

 正社員:「きれいな言葉で言ったら、本当に恩人ですよね。アスベストがいなかったら、MCバトルの主催者として今みたいな活動をは絶対できなかったから。戦極の前身の戦慄をメチャクチャに変えていくとき、よく付き合ってくれたなと思うし。だからさ、どう? また戦極のバトルに出てみる(笑)?」

 アスベスト:「出るわけないでしょ! 顔出すとかは全然いいんだけど」

 正社員:「どこかで一回だけ復活してほしいけどね。『アスベスト戦慄MCBATTLE杯』とかやりたいな。ペニスキャラになる前のゆうまにも出場してもらう(笑)」

 アスベスト:「そういう昔の関係者のお祭りとかならいいよ、じゃあ」

 正社員:「本当に? ギャラは払わずにエントリー2000円取るけど(笑)」

 アスベスト:「それなら家で子供と遊ぶかNetflixでも観てたほうが全然いいよ!」

<構成・撮影/古澤誠一郎>

【MC正社員】

戦極MCBATTLE主催。自らもラッパーとしてバトルに参戦していたが、運営を中心に活動するようになり、現在のフリースタイルブームの土台を築く

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