パチンコの新台入替自粛が、業界に与える影響とは?

パチンコの新台入替自粛が、業界に与える影響とは?

charly / PIXTA(ピクスタ)

◆G20サミットの大阪で新台入替自粛の動き

 パチンコ業界内において、大阪で6月に開催される「G20大阪サミット」(28日〜29日)に関連して、新台入替を自粛しようという動きが出始めた。

 全国でも一番初めに「入替自粛」を決議したのは高知県。5月1日から6月30日までの2カ月間、一切の入替を行わない。それに続いたのが愛媛県。こちらは5月27日〜6月29日の34日間の自粛。G20サミットの開催地である大阪でも入替自粛が決議され、5月下旬から7月中旬までの約50日間が自粛期間となる。

 ちなみに高知県に限っては、入替自粛の理由は「G20大阪サミット」ではなく、5月14日から20日までの「ギャンブル等依存症問題啓発週間」制定に沿ってのもの。

 この入替自粛については、各都道府県にある遊技業協同組合が、地元の警察署と相談をした上で決めるものである。昨年9月21日に開催された全日本遊技事業協同組合連合会(全日遊連)では、G20大阪サミットについて「入替自粛は行わない」としたが、「(各都道府県警察より)要請があれば協力する」ともしていた。

 G20大阪サミットに関連する入替自粛が今後、他の都道府県に波及するのかその推移を見守る必要があるが、6月のG20大阪サミットだけではなく、秋にはラグビーW杯が開催され、来年には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、パチンコ業界は今後、入替自粛の議論を度々繰り返す事になる。

 本稿では、業界外の人には分かりにくい、この「入替自粛」について解説するとともに、入替自粛によって、業界やユーザーにどのような影響があるのかを考えてみる。

◆パチンコ業界の「入替自粛」とは?

 入替自粛期間は、パチンコホールは一切の入替をしない。これは新台入替だけではなく、チェーン店移動を含むすべての入替をしないという事。今回の入替自粛、G20大阪サミットに関わる自粛で、開催地の大阪は理解できるが、なぜ愛媛県まで自粛しなくてはならないのかという疑問を持つ方もいるだろう。

 G20大阪サミットのような国際的な政治イベント等が開かれる場合、相当な警備体制が敷かれるという事は言うまでもない。国際的なVIPがこぞって来日する訳である。開催の何日も前から二重三重の警備監視体制が敷かれる。これを大阪府警だけではとうていまかなえない。全国の警察からは、この警備応援に駆け付ける事になる。

 そうなれば地方の警察署の業務をこなす人員が手薄になる。パチンコ店が新台であれ中古台であれ、何らかの入替を行う場合は、所轄警察署に「変更承認申請」という書類を提出せねばならず、所轄警察署の担当官は、その内容を確認するため、現地ホールに赴き確認をする。「新台入替」は警察署にとってもかなり手間の掛かる業務。そこで各都道府県の遊技業協同組合は、警察署の要請に応じて業務負担を軽減するために、入替の自粛をするのである。

 パチンコ業界が初めて「入替自粛」を実施したのは、2000年の九州・沖縄サミット時である。その後、2002年の日韓W杯、2008年洞爺湖サミット、2010年APEC、2016年伊勢志摩サミット時にも入替自粛を実施してきた。

◆入替自粛によるホールとユーザーへの影響

 昨今の依存問題対策の一環として、パチンコホールの広告宣伝が厳しく規制されている現状で、唯一といっても過言ではない行政公認の集客イベントである新台入替が出来なくなれば、パチンコホールにとっては痛手ではないのか?

 新台を大量に購入し、集客を図り、売上を上げるというパワー営業を信条とする、資金力がある大手ホールにとってこの「入替自粛」は望むものではない。

 一方で、資金力や競争力が乏しく新台購入もままならない中小ホールにとっては、「入替自粛」は願ったり叶ったりの施策でもある。

 遊技機1台の価格が40万〜50万もする時代。新台購入費ばかりではない。前述の申請を行うためにも諸々の費用も掛かれば、新台入替を告知するための販促費だってばかにならない。

 競合店が新台入替を行えば客は流動する。その客を囲い込んだり、呼び戻したりするためには、多少無理しても新台入替を行わなくてはならない。入替自粛が決議された地域の、そんなジリ貧営業の中小ホールのオーナー達はホッと一息ついているのではないか。

 新しいものを好み、新台ばかり遊技しているユーザーにとってはつまらない期間かも知れないが、そんなユーザーはほぼいない。勿論、「新台特需」なるものを期待しているユーザーは多少いるかも知れないが、最近ではホールも減価償却を優先的に考えるので、よほど初期稼働の良い遊技機でなければ、ユーザーは特需も見込めない。

 結論を言えば、ユーザーにとって「入替自粛」は、プラスに作用する事はあっても、マイナスに作用する事はないだろう。

 全国にまだ1万店舗もある業界である。すべての店舗がそうだとは言い難いが、少なくとも良心的な店舗においては、浮いた新台購入費用や販促費を或る程度はユーザーに還元しようと考えるものである。もちろん、浮いた金額はすべてプールしようとするホールもあるだろうが、それでもプラスに作用しないという話であって、わざわざ通常営業時以上にユーザーに負担を強いる事はないだろう。

「入替自粛」期間は、ユーザーの流動性が著しく落ち込む時期でもある。この期間に少しでも自店の固定客(常連客)を作ろうとするのが、パチンコホールとて商売、その機微を知らぬはずはない。

◆入替自粛はパチンコ業界が抱える問題の先送り?

 G20大阪サミットの開催にあたり、今までの国際イベントの際には全面的に協力をしていた全日遊連が、今回に限り「入替自粛はしない」と明言したのには、それなりの理由があると思っている。

 その理由とは、一昨年より全日遊連が推し進めている、高射幸性パチスロ機の段階的撤去の問題があるから。

 これは、パチスロメーカーが射幸性が高いと判断した遊技機を段階的に撤去していこうとするパチンコ業界の自主規制であり、本来であれば、2019年1月末までに設置比率を15%以下にまで引き下げるとしていたが、遊技機規則改正に伴う新規則機の市場投入が遅々として進まない中で、当面この目標値の達成期限は延期された状態にある。

 その上で、本来の撤去期限に沿うのであれば、2020年1月末までには5%にまで引き下げなくてはならない。昨今の依存問題に対する世間の関心度の高さと、パチンコ業界に対する風当たりの強さを鑑みれば、この2020年1月末5%の必達は業界の至上命題であるはず。

 しかし、今回のように国際イベント毎に入替自粛をしていたのでは、ホールは、高射幸性パチスロ機の計画的な撤去も出来ないばかりか、期限が迫ってきたタイミングで、多台数の入替を行わざる得ない状況に陥る可能性もある。

 しかも今年の年末には、ハーデスやバジリスク絆、まどマギ、モンスターハンター月下雷鳴などの、ホール営業の主力機でもある、高射幸性パチスロ機の、そもそもの設置期限も迎えてしまうのだ。その事を十分に知っているから、パチンコホールの全国組織でもある全日遊連は「全国一斉号令」を掛けなかった。筆者はそう思っている。

 パチンコ業界における「入替自粛」が、業界自らが取り決めた撤去期限を更に引き延ばすための口実や、閉店廃業覚悟の無用な延命措置にならなければ良いのだが……。

<文・安達 夕 @yuu_adachi>

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