「アイスホッケー界の日ハム」を作ったチェアマンの「夏は野球、冬はホッケー」の総合型スポーツクラブ化構想

「アイスホッケー界の日ハム」を作ったチェアマンの「夏は野球、冬はホッケー」の総合型スポーツクラブ化構想

アジアリーグの未来を熱く語る小林チェアマン

◆釧路クレインズの廃部で、新たな受け皿となる会社を設立

 このままでは、釧路だけではなく北海道経済が沈んでしまう。アイスホッケーチームの日本製紙クレインズ(北海道釧路市)が廃部となった3月31日、札幌でスポーツ関連用品販売会社を経営する茅森健一氏がチームの受け皿となる「東北海道アイスホッケークラブ合同会社」を設立したことを明らかにした。

 日本製紙クレインズの最後のファン感謝デーでは「新しい会社にチームの存続を委ねたい。運営会社ができたといっても、まだ卵の段階。ファンの皆様の力でクレインズを再び羽ばたかせていただきたい」と安永敦美オーナー兼代表は挨拶をした。

 しかし、日本製紙クレインズの存続問題はまだまだ予断を許さない。クレインズが所属するアジアリーグの小林澄生チェアマンは史上最大の窮地の打開策として、たとえば、夏は野球、冬はホッケーという「総合型スポーツクラブ」構想をブチあげる。

 小林澄生さんは、5代目チェアマン。H.C.栃木日光アイスバックスの運営会社「栃木ユナイテッド」前会長だ。

◆クレインズの存続は、北海道民全体の問題

――北海道・釧路市の日本製紙クレインズの存続問題について、アジアリーグのチェアマンとしてどう見えていますか?

小林:釧路は約70年の歴史があり、日本代表を含めて多くの選手を輩出してきた地域であり、アイスホッケー界で重要な位置付けがある。ひいては北海道のスポーツ文化の頂点に位置すべきであり、17万人の釧路市民だけでなく北海道民全体の問題としてとらえなければいけない事柄ではないか。ファンの署名も10万人が集まった。ここからは官民一体となった釧路でのリーダーシップでこの歴史的な窮地を乗り越えなければならない。

日本製紙クレインズの存続問題はアジアリーグの存続にも直結する。一部で日本のチーム(王子、栃木日光、東北、日本製紙の4チーム)が脱退するという報道があったが、それは明確に否定したい。ただし、現在の4チームから3チームになってしまってはリーグに影響が出かねない。アジアリーグの将来にも様々な構想があるが、クレイン問題が解決することが第一。可能性がある限り、期限を切るべきではない、9月の開幕を遅らせることもありうるとクレインズ側には伝えている。

アジアリーグに関しては創設16年だが、これまでは「アジア」のリーグだということが希薄。各国チームとも関係が希薄なのが実情で、2022年の北京冬季五輪を念頭に連携を緊密にファンに向いた施策を行っていく必要がある。

◆日本のスポーツ文化をどうしていくのかの議論を

――クレインズに関しては、札幌でスポーツ関連用品販売会社を経営する茅森健一氏がチームの受け皿となる「東北海道アイスホッケークラブ合同会社」を設立したことを明らかにしました。小林チェアマンは存続の危機から再生したH.C.栃木日光アイスバックスの運営会社「栃木ユナイテッド」前会長です。

アイスバックスは、チーム成績は低迷しているものの、光と音のド迫力演出など注目を浴び、週末のホームアリーナは常に満杯。昨季の観客動員数は約3万3000人と過去最高を更新。「アイスホッケー界の日本ハムファイターズ」との異名を持つまでにいたりましたが、クレインズにアドバイスをするとしたら、何があるでしょうか?

小林:20年の歴史を作ってきたアイスバックスは7万人都市の日光市だけではなく、栃木県内、県外からの支援があり、このように広く薄く支持を集めるのが重要ではないか。ただし、1999年の前身の古河電工の廃部を受けて創設したアイスバックスと比べても、よりも苦しくなった状況があるのは事実。

アイスホッケーという競技そのものが、さまざまな要素に規定されて、ハードルがかなり高いスポーツであるという事実もあるうえに、少子化、他のスポーツの台頭の影響といった競技人口の激減がある。クレインズ問題は日本のスポーツ文化をどうしていくのかを議論するきっかけにもなる。

◆目指すひとつの形は、FCバルセロナのような「総合型スポーツクラブ」

――アイスバックスにも多くのスタッフが関わっています。運営会社の代表取締役はセルジオ越後氏。セルジオ越後氏がスポーツマーケティングのプロとして北海道日本ハムファイターズなどのファンマーケティングに関わった日置貴之氏を招聘するなど、野球やサッカーなど、さまざまな分野の知恵が集まっています。これまでの1スポーツのチームから脱却するきっかけかもしれません。

小林:日本のスポーツ文化もまだ道半ばです。欧州のような地域に根ざし、地域活性化の原動力になるようなスポーツクラブができていません。地域に根ざしたスポーツクラブの目指すひとつの形はサッカー、バスケットボール、ハンドボールのチームを持ち、住民を中心とするファン18万人をこえる会員の会費で成り立っているFCバロセロナのような「総合型スポーツクラブ」。

たとえばJリーグは「百年構想」のなかに「サッカーに限らず、あなたがやりたい競技を楽しめるスポーツクラブをつくること」「「観る」「する」「参加する」。スポーツを通じて世代を超えた触れ合いの輪を広げること」とありますが、約30年経ってもサッカーという枠組みにとらわれていて「(サッカーに限った)サッカークラブ」を脱却できていない。

「総合型スポーツクラブ」であれば季節や選手の適性によって選手は複数のスポーツに参加することができる。たとえば、サッカー選手もアイスホッケー選手との兼業ができるようになれば、ホッケーどころか、スポーツ全体の裾野も拡大するのです。少ないパイを取り合っても仕方がない、これからは柔軟な姿勢が求められるのです。

実は、H.C.栃木日光アイスバックスの運営会社「栃木ユナイテッド」という名称も「総合型スポーツクラブ」を念頭においたものなのです。ただし、現実にはそれぞれの競技がタテ割りで交流の壁があり、なかなか動き出さなかった。いまこそ、動き出す時期ではないでしょうか。

たとえば、アルビレックス新潟はJリーグのほか、プロバスケットボール、プロ野球独立リーグにもチームがある。夏はプロ野球で活躍し、冬はアイスホッケーで活躍する、二刀流の選手が出てきてもいいでしょう。

<文・写真/松井克明(八戸学院大学講師、地方財政論)>

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